スペイン発コラム】アラベス戦で4試合連続のベンチスタート、得意ではない左サイドで出場

 ビジャレアルは現地時間9月30日リーガ・エスパニョーラ第4節でアラベスをホームに迎えた。スペイン各紙は試合前、前節バルセロナ戦で0-4の惨敗を喫したなか、後半途中からの出場ながらチーム唯一の枠内シュートを放ってインパクトを残したこと、そしてアラベス戦がミッドウィークの試合のため、日本代表MF久保建英の先発出場を予想していた。

 しかし、ウナイ・エメリ監督はアラベス戦前日の記者会見でローテーションの可能性を問われ、「私はベストのスタメンを作ることを心がけているので、変更は欠場者やフィジカル面に問題のある選手が出た時だ。そのため我々は明日の試合に向け、できる限りベストのチームで臨むつもりだよ」と語っており、久保のスタメン入りの可能性が微妙であることを示唆した。

 エメリ監督は試合当日、バルセロナ戦の惨敗を受けて、システムを4-4-2から4-1-4-1に変更し、負傷したMFフランシス・コクランに代えてMFビセンテ・イボーラを起用したほか、MFサムエル・チェクウェゼに代え、MFマヌエル・トリゲロスを入れただけだった。中盤ではイボーラが1ボランチを務め、その前に右からFWジェラール・モレノ、トリゲロス、MFダニエル・パレホ、MFモイ・ゴメスが並び、FWパコ・アルカセルが1トップでプレーした一方、久保はリーグ開幕から4試合連続でベンチスタートとなった。

 中盤を厚くしたビジャレアルキックオフから主導権を握ってアラベスを圧倒し、アルカセルが2得点、G・モレノがPKで1得点を記録した一方、失点はGKセルヒオ・アセンホのミスによるものだけだった。ビジャレアルバルセロナ戦の悪いイメージを払拭する3-1の勝利を飾り、今季2勝目を挙げることに成功した。

 そんななか、久保にチャンスが与えられたのはチームが2点をリードしていた後半30分から。しかし得意ではない左サイドでのプレーを余儀なくされ、ドリブルは徹底的に警戒されたためファウルを用いて抑えられた。短い出場時間のなか、試合終了間際に枠内シュートを放って見せ場を作るが、バルセロナ戦のようには輝けなかった。

 エメリ監督はアラベス戦後の記者会見で、久保を左サイドハーフで起用した理由について、「試合前に彼と話し、2列目すべてのポジションでプレーしてほしいことをすでに知らせているし、それに取り組んでいる最中だ。彼のベストは右サイドだが、そこにはサム(チュクウェゼ)とジェラール(モレノ)との競争がある。彼に快適さを感じてほしいし、我々は彼がどこでフィットできるかを探しているところだ。それが右なのは明らかだが、左サイドプレーするために成長する必要がある。彼はしっかりと取り組んだが、今日は輝けなかった」と説明した。

ビジャレアル地元紙の番記者、久保が「再び控えになったのは驚き」

 試合翌日のスペイン紙「マルカ」、「AS」の久保評価はともに1点(最高3点)と高くなく、ビジャレアルの地元紙「エル・ペリオディコ・メディテラーネオ」は「プレーにあまり関与しなかったが、クオリティーの高さをいくつか示した」と評し、5点(最高10点)を付けた。この日、ビジャレアル選手の評価は全体的に高く、DFマリオ・ガスパールゴメス、G・モレノの3選手がチームトップの8点だった。

 同紙のスポーツ部チーフで、ビジャレアルを約20年追っているホセ・ルイス・リサラガ記者に試合後、久保の現状について聞くと、「弱冠19歳のタケは今、重要な瞬間を過ごしていると思う。ヨーロッパサッカーの2年目を過ごし、残留が目標だったマジョルカよりも上にいる、遥かに要求度の高いビジャレアルにいるのだからね」とポジティブに捉えていた。

 久保の理想的なポジションについては、「左利きだが両足を使えるので、どのポジションでも順応できると思う。ドリブルが非常に速く、試合の流れを読む力に優れ、1対1で試合のバランスを壊すことができるサイドアタッカーであり、また、もし中でプレーする場合でも素晴らしい視野の広さがある。そのため私は攻撃のすべてのポジションでプレーできると思っている。すでにスペイン初年度のマジョルカで示したように、4-2-3-1の2列目、さらには4-4-2のセカンドトップや両サイドハーフプレーできるはずだ」と見解を述べた。

 そして、「エメリはタケがビジャレアルに来るように説得するため、どこでプレーすべきかを個人的に説明していると思う。エメリは今、タケに守備と攻撃のコンセプトを理解させることを目指しているところだ。そのため今は出場時間が少なくなっている。しかしUEFAヨーロッパリーグが開幕したら、おそらくタケはチームにとって重要な選手になるだろう」と推測した。

 アラベス戦でベンチスタートだったことについては、「私はアラベス戦で先発出場すると予想していたので、再び控えになったのは驚きだった。でも最初は20分くらいの出場時間で始めているが、徐々にチーム内で重要な役割を担っていくと思う」と期待を寄せた。

 久保がレギュラーを取るうえでの問題については、「例えばモイ・ゴメスのような選手が非常に素晴らしいパフォーマンスを見せていることだ」と、左サイドのポジション争いのライバルが絶好調であることを強調した。

次節アトレティコ戦、久保にとって厳しい時間が続くか

 しかし、「でも今は忍耐強くなる必要がある。タケはまだ19歳、スペインだと実質的にフベニール(高校生年代)の年齢だ。それにもかかわらず、すでにヨーロッパリーグに参加するビジャレアルのようなチームのメンバーの一員になっているのだからね。素晴らしい才能を備えており、今後、ビジャレアルで重要な選手の1人になるだろうから」と、今後を楽しみにしている様子を窺わせていた。

 ビジャレアルはこの後、3日に中2日で行われる第5節で、バルセロナからウルグアイ代表FWルイス・スアレスを獲得した強豪アトレティコ・マドリードと対戦する。おそらく久保にとっては、まだ厳しい時間が続く一方、新システムで調子を上げたビジャレアルにとっては今後を占ううえでの大きな試金石となる。(高橋智行 / Tomoyuki Takahashi)

ビジャレアルMF久保建英【写真:Getty Images】