詳細画像はこちら

そもそも「自工会」とは何なのか?

恒例の月例会見だと思っていたところ、どうも様子が違う。

会見開始の8分前、記者会見の配布資料がメールで送られてきたが、その内容を見てハッとした。そこには、自工会史上初となる、大変革が記されていた。

詳細画像はこちら
自工会会長でトヨタ社長の豊田章男社長    一般社団法人 日本自動車工業会

ユーザーにとっては、あまり馴染みのない自工会。一般社団法人 日本自動車工業会の略称である。

戦後間もなく、復興期の真っ只中にあった1948年。欧米と比べると、まだまだ脆弱な企業体制だった自動車メーカー各社で作った業界団体が自動車工業会だ。

その後、経済高度成長が本格化した1967年、日本自動車工業会と日本小型自動車工業会が合併して、日本自動車工業会となった。

自工会には現在、14社が参画し、登録乗用車軽自動車二輪車、大型車など、日本の自動車産業界の強みであるフルラインナップ体制を明確にしている。

ただし、近年は自動車に限らないが「業界団体は本当に必要か?」という声も聞かれるようになった。

そもそも業界団体とは、官公庁などに対して意見や申し入れをおこなう場合、1社では力不足のところを、業界一丸となって対応することが存在意義である。

自動車業界でいえば、これまで排気ガス規制や貿易摩擦など、国際的な規制や2国間または他国間での外交交渉に関わってきた。

そうした自工会がなぜ、いま大改革なのか?

国内市場は直近で前年比9割まで回復

今回の記者会見は時節柄、オンラインでおこなわれた。

出席者は、自工会会長でトヨタ社長の豊田章男社長を筆頭に、副会長が3名。ホンダ会長の神子柴寿昭氏と、新任されたヤマハ社長の日高祥博氏と、いすゞ社長の片山正則氏である。

詳細画像はこちら
今回の記者会見は時節柄、オンラインでおこなわれた。    一般社団法人 日本自動車工業会

冒頭、豊田会長から新型コロナウイルス感染拡大による、国内自動車市場への影響の変化が報告された。

前年比では、コロナ前の1月が88%、3月が91%、その後に非常事態宣言で5月は55%と半減するも、6月以降に持ち直し、7月が86%、8月が84%となった。

自工会事務局によると、直近の9月実績については、各メーカーへの聞き取り調査の結果では、前年比で90%台まで回復しているという。

ただし、個人消費の伸びは依然として鈍化の傾向が消えておらず、自工会としては今後の市場動向を注視する姿勢を崩していない。

そのため、3月に発表を見送った今期の需要見通しについて、引き続き市場での不確定要素が多いとして、現時点でも発表は控えた。

海外市場については、英国で再び感染拡大が懸念され、経済活動のロックダウンを実施するなど、将来を見通すことが難しいが、自工会としては今後も、感染予防と経済活動の両立を実現するべく活動していくという。

自動車産業「あてにしてもらいたい」

豊田会長は、新旧政権についても意見を述べた。

安倍前総理には、約8年間に渡る安定した政権運営により、海外でも「顔が見えるトップ」として、自動車産業界の海外展開に最大限の気遣いを得たことに謝意を示した。

菅政権に対して「国民のために働く内閣」を強調しており、自動車産業としても、国からも、また国民からも「(経済の持続的な安定のために)あてにしてもらいたい」と、自工会としての総意を述べた。

その上で、10月1日から実施する、新しい組織体制を明らかにした。

旧体制では、理事会の直下に常任委員会があり、その下に交通、流通、税制、国際、労務など11の委員会があった。

これに対して新体制では、理事会の直下に、総合政策、サプライチェーン、環境技術・政策、安全技術・政策、そして次世代モビリティという5つの委員会として刷新した。

こうした組織改革は、1967年の日本自動車工業会の発足以来、初めてだ。

背景にあるのは当然、自動車産業における「100年に一度の大変革」である。

自工会では異例の二期(一期2年)連続で会長職を務める者として「(自動車産業界が世の中から)本当に頼っていただくためには、(組織変革という)具体的な提案が必要だった」(豊田会長)と、リーダーシップを強調した。

スピード感を持って、何をするのか?

今回の会見では、新体制発表に加えて、「税制改正・予算に関する要望(案)」も公表した。

要望の柱は3つある。

1つは、これまでも議論されてきた自動車税制についてだ。

その中にも3項目ある。

ウィズコロナからアフターコロナに向けて、国内での個人消費を安定的に維持するために、自動車税軽自動車税・環境性能割課税の凍結など、特段の措置。

エコカー減税は対象を限定せずに延長。

そして、CASE(コネクテッド・自動運転・シェアリングなど新サービス・電動化)という社会変化に即した税制の根本的な見直しだ。

2つ目は、予算要望として、サポカー補助金で現在の65歳以上とする年齢要件の撤廃など。

電気自動車で上限40万円などとしている、CEV補助金の金額拡大も要望する。

3つ目は、企業税制として、研究開発税制の拡充や、固定資産税の大幅な引き下げなど、コロナ後の復興けん引役を担う企業を支える税制措置を挙げた。

新体制として時代変化に挑戦する、自工会。

筆者の私見としては、菅政権が推進するデジタル化へ、政府と自工会が連携する強靭な体制作りを期待したい。

特に、モビリティを含めたデータプラットフォーム構築における、具体的な工程表の早期策定が必要不可欠だと感じる。


【あっと驚く53年ぶり大変革】トヨタ社長「もっとあてにして」 国内市場、9月は前年比9割まで回復