現在、注目されている5Gと新型コロナウイルスCOVID-19)が、世界のスマートフォン市場に、大きな影響を与えていることが改めて浮き彫りになった。

(参考:AppleのiPhone 12発表イベントが日本時間14日2時に開催 新色の「ダークブルー」「ライトオレンジ」は確定か?

・出荷が史上最も減少、しかしiPhoneは増加
 調査会社『Counterpoint』は、2020年第2四半期の世界のスマートフォン市場の調査結果を発表した(参考:https://www.counterpointresearch.com/global-smartphone-asp-10-yoy-q2-2020-even-shipments-see-highest-ever-decline/)。

 スマホは出荷台数が過去最も大幅に減少も、平均販売価格(ASP)は、前年同期比10%増加した。

 世界のスマホ市場は、出荷台数が前年同期比23%減と過去最も大幅な減少を記録したにもかかわらず、卸売の平均販売価格(ASP)は、前年同期比10%増加した。全体として、スマートフォン業界の第2四半期の収益は、前年同期比15%減少した。

 一方、ラテンアメリカを除く全ての地域のASPが上昇した。これには、いくつかの理由があるという。COVID-19パンデミックは、スマートフォン市場全体に影響を及ぼしたが、プレミアム・セグメントは非常に活力があり、史上最も大幅なスマートフォン市場の減速に際しても、前年同期比8%の緩やかな減少に留まった。

 プレミアム・セグメントのユーザーベースに対するパンデミックの経済的影響は、他のセグメントと比較して少なかった。これは、プレミアム・セグメント最大のプレイヤーであるAppleの需要でも示されている。第2四半期の出荷が軒並み減少するなか、Appleの出荷は前年比3%増加し、iPhoneの収益は前年比2%増加した。発売間もない廉価モデルiPhone SEの好調もその一因かもしれない。

 また、ロックダウン中の在宅勤務・学習、アプリ、ゲーム、エンタメ、その他コンテンツ消費でスマホへの依存度が高まった。それにより、一部の消費者は、ユーザーエクスペリエンスを向上させるためにデバイスをアップグレードしたという。

・5Gでスマホの価格が上昇、実店舗販売は大苦戦
 5G出荷の増加も、ASP10%上昇の要因だという。第2四半期の5Gデバイスの大半がプレミアム・セグメントだったため、携帯電話の総収益の20%を占めた。

 反対に低価格モデルの需要は、深刻な影響を受けた。エントリーレベルのデバイスは、通常オフラインで購入される傾向があり、世界市場の多くが第2四半期には、ロックダウンの状態にあったため、消費者の購買意欲も低く、購入を避けたという。

 全体として経済的影響と店舗閉鎖による低価格帯のデバイスの需要減少、プレミアム・セグメントの活力、5Gにより、スマホASPの上昇が起こったことが、明らかになった。

 Appleは、世界のスマホ出荷の34%を占め、Huaweiの20%、Samsungの17%がそれに続いた。Appleは第2四半期に世界のスマホの利益の約59%を得た。

 COVID-19からいち早く回復した中国市場に牽引されたHuaweiが、出荷と収益の両方で初めてSamsungを上回った。しかし、他の史上が回復すれば、Huaweiがこのリードを維持するのは困難になるという。

・必ずしもスマホが高くなっているわけではない?
 この調査結果を受けて「次回の主なスマートフォン購入は、高額になる可能性がある」と『TechRadar』は伝えている(参考:https://www.techradar.com/news/your-next-big-smartphone-purchase-could-come-with-a-hefty-price-tag)。

 しかし、これはあくまで売られたスマホの平均価格だ。以前は、高級志向だったAppleが、積極的に廉価版をリリースし、今秋のiPhone 12シリーズでは、多様な価格帯の4モデルがあると言われている。

 Appleに対抗するという値下げ圧力が、各社にかかり、また今後の技術革新で、低コスト化が進展することも考えられる。スマホは、次々と最新技術を採用するハイエンドモデルが高額であり続ける一方で、廉価モデルは、長い目で見たら低価格化するのではないだろうか。

 したがって「昨今の厳しい経済状況にもかかわらず、スマホが高額になる」と気を落とすのは、早とちりかもしれない。

(Nagata Tombo)

UnSplashより