代替テキスト

「コロナ禍のなか、ここ1〜2カ月で『うつ』になる人が増加している傾向がみえます。私が診察していても『うつ』と診断する方は確実に増えてきていて、その7割方が女性という印象です」

こう話すのは、立教大学教授で精神科医の香山リカさん。緊急事態宣言が出された4月ごろにも「コロナうつ」の危険は指摘されていたが……。

緊急事態宣言のころは『感染したらどうしよう』という、新しい感染症への恐怖心や不安、一過性の心のパニックなどで受診する方が多かった。でも、ここ最近では、『うつ』の診断基準の当てはまる状態の方が、増えているんです」

女優の竹内結子さん(享年40)が9月27日に亡くなった。警察庁発表「月別の自殺者数」では、今年8月の女性の自殺者数は’19年8月より40%もの急激な増加となっている。自殺とうつには深い関係があるという。

「自殺された方の遺書などから。8割方はうつ病状態だったのではないかという研究報告もあります。多くの方が、もしも亡くなる前に診察できたのなら『うつ』と診断される状態だったということです」

では、どんな人がうつになりやすいというのだろうか?

「責任感が強く、人に頼れずなんでも自分で解決しようとする人、また、『自分は大丈夫、うつにならない』と思っている人こそ注意すべきです。なにかに失敗したとき、『自分のせいだ』と自分を責めやすい性格の人もそうですね。また『いまはみんなコロナで大変だから』と考えるような人は、カウンセリングや受診も遅れ、重症化してしまう恐れがあります」

竹内さんは今年1月に第2子を出産したばかりだったことから、「産後うつ」の可能性も指摘されている。初産のときは大丈夫でも、2人目以降で発症することはあるのだろうか?

「子どもの数が多くなることで、育児の負担が増えます。そして、人によっては、初産のときと比べてしまう。1人目の出産は無我夢中で必死だったけれど、2人目だとある程度、客観視する余裕が出てくるので、『ちゃんとできるはずなのに、こんなこともできない』と自己批判してしまう部分があるかもしれません」

また、2人目の出産は、初産時よりは年齢が上がるため、身体的負担も大きいうえに、更年期障害と重なる可能性も出てくる。

「出産でホルモンバランスが崩れるのに加え、40代にさしかかっての出産は、更年期障害の始まりの時期とも重なります。二重のストレスがかかってくる可能性がある」

またアルコールにも注意が必要だ。特に、主婦の場合は台所でお酒を飲んでしまう“キッチンドリンカー”が危ないという。

「キッチンでお酒を飲んでいると、家族は気付きにくく、飲んでいる頻度や酒量が把握しにくい。心のエネルギーが低下していると自制がききませんから、止める人がいなければ飲み続けてしまいます。しかし、精神的な不調をお酒で紛らわせていると、酔いが覚めたときに現実に戻り、不調がさらに悪化してしまう場合も。そんなときに自殺の危険が出てくるのです」

因果関係は不明だが、竹内さんもキッチンでお酒を楽しんでいたことを、テレビで明かしている。

『子どもが寝静まって「2〜3時間はボーッとできる」と思ったら、だいたい台所でお酒を飲んでいる。キッチンドリンカーは危ないよって言われるけど……』(’19年3月10日放送『ボクらの時代』フジテレビ系より)

そんなうつ自殺を防ぐ、10の習慣を香山さんが教えてくれた。

【1】「もっと頑張らないといけない」などと自分を責めない
【2】何にもしない日を作る
【3】ネガティブなことは「たまたま起きただけ」と片づける。原因を追求しない
【4】コロナの感染拡大や有名人の相次ぐ死去に気分が落ち込んでいる人は、ニュースをチェックする時間を朝と夕にそれぞれ一度だけに限る
【5】休みの日に資格の勉強などの自己研さんをやりすぎない
【6】問題をお酒で解決しない
【7】いま苦手な人でも「嫌いな人」と決めつけない
【8】物事の「よい」「悪い」の判断をすぐしないで、とりあえず保留する
【9】犬の飼い主同士の挨拶くらいはするなど、ちょっとした人付き合いの煩わしさは受け入れる
【10】夜は寝ること。とにかく寝て、朝起きてから考える。日曜の夜は自殺が多いので要注意

もっとも幸せそうなタイミングでも精神に不調をきたすこともあるのだという。

「夜中にひとりで悩むのを何としても避けたいのはもちろんですが、竹内結子さんはご家族と同居している状況で、一家団らんしたあとに亡くなったと報道されています。日曜の夜にもっとも自殺が多いともいわれています。家族と暮らしている方も、単身の方も、夜、特に『週末の夜』には悩まないで、寝てしまうのがいいでしょう」

「女性自身」2020年10月20日号 掲載