「犯人に告ぐ」「検察側の罪人」などで知られる雫井脩介のベストセラー小説を、堤幸彦監督が映画化した『望み』(10月9日公開)。原作者の雫井が、執筆時に最も苦しみ抜いたという作品で、殺人容疑をかけられた息子を巡る、ある家族の苦悩や葛藤が描かれる。MOVIE WALKER PRESSに寄せられたたくさんの感想コメントをピックアップしながら、その魅力を紹介したい。

【写真を見る】堤真一が息子の無実を信じたい父親を演じる。家族を追い詰めるマスコミへの意見、家族への共感……感想コメントを一挙に紹介

建築家として成功した一登(堤真一)、その妻でフリーの校正者として働く貴代美(石田ゆり子)、ケガでサッカーの道を諦めたばかりの息子、規士(岡田健史)、有名高校への受験を控える娘、雅(清原果耶)の4人からなる石川家が物語の中心。なに不自由なく、完璧に思えた一家の暮らしは、規士が夜に出かけたまま失踪してしまったことから一変する。同じ日に彼の同級生が遺体となって発見され、警察から規士が事件に関与している可能性があると告げられたのだ。

■子を想う親の気持ちに共感する人が続出

10~60代まで幅広い世代からコメントが寄せられており、そのなかでも特に目立ったのが、子どもを持つ親たちの、一登や貴代美に自身を重ねた声。

「どの家庭にも起こりうるお話だと思いました。2回観て母親の気持ちも父親の気持ちもどちらにも共感して胸が苦しくなりました」(40代・女性)

「私にも男の子がいますが、口数も少ないし、友人関係も全部把握しているわけではありません。この子に限ってと思う反面、家での反抗的な態度を見ていると少し疑ってしまう。最後の結末は涙が出ました」(40代・女性)

「高校生の娘と観ました。石田ゆり子さん演じる母親の気持ちが、もう痛いほどにわかり…。観ている間も、自分なら…?とずっと考えていました」(40代・女性)

「(規士と)同世代の息子がいますが、親の子どもに対する想いに共感し、涙があふれてきました」(50代・男性)

演じる堤真一、石田ゆり子の差し迫った言葉や感情の揺れ動きに共感し、感情移入している様子がうかがえる。

一方で、「もし、自分の子どもが事件を起こしたとして、純粋に加害者であっても生きていてほしいと願うのか、もう会えないとしても無実を信じ続けるのか、すごく考えました。しかし、このようなことが実際に起きたら、結果がわかる前に精神が崩壊し、家族もバラバラになっている気がします。それぐらいとてつもない映画でした」といった声も。劇中での石川家の人々が置かれる過酷な状況を物語っている。

■痛切なメッセージが若者たちの心にも訴えかける

規士や雅と歳の近い、若い世代からの感想も拾ってみたい。

「反抗期の自分と重なり、とても親の気持ちを考えてしまう作品だった。次の日まで連絡しないで帰らない、怪我して帰ってくる。たまにメッセージを返せば『心配しなくていい』と返すだけ。私はどれだけ親に心配を掛けさせていたんだろう、と。胸が苦しくなった」(20代・女性)

「被害者か加害者か、どちらが良いのか正解がわからず、途中からはただ生きて帰ってくることを願っていました。夫婦役のお二人の演技に涙が出ました」(10代・男性)

「ずっと拳を握り締めながら、なにかを祈りながら、でもどんな結末を祈ればいいのかわからず、ただ食い入るように観ていた108分でした。被害者でも加害者でもつらいなら、どちらを望めば良いのか…想像以上の結末と見えなかった真実に、涙しました」(20代・女性)

彼らの言葉からも、本作の問いかけに頭を悩ませ、物語に引き込まれていたことがわかる。

さらに、こういった真摯なコメントも数多く届いた。

「どんなに真っ当に生きようと思っても、巡り合わせで悪意を向けられること、理不尽な状況に置かれる可能性は誰にでもある。まずは自分の子どもに、あなたは私にとってとても大事な存在であること、そして他の人も誰かの大事な存在であることを、ギューってしながらよくよく伝えたい」(40代・女性)

「最近、自殺してしまう人が多いけど、“ただ生きてほしい”という言葉できっと救われる人がたくさんいると思った。大勢が毎日時間に追われて、いつの間にか考え込んでしまっているけれど、自分の気持ちを周りに吐き出すことができて、それを誰かが受け止めてくれる、そんな世界に変わってほしい」(10代・女性)

「誰の身にも起こりうる出来事で、とても考えさせられました。ラストで警察の人が言っていたように、やさしい人ほど、素直な人ほどなにかを抱え込み、一人で解決しようとしてしまう。こういう状況は現実的にあるのではないかと思います。手を差し伸べることで助けられる命はたくさんあるはずです」(10代・女性)

現代社会とリンクした“いま”を見つめ直す作品に

事件が発覚した日から、石川家には連日のように報道陣が押し寄せ、SNSには憶測や噂が飛び交い、一登たちは誹謗中傷にも苦しむことになる。このような状況についても様々な意見が寄せられている。

「家族なら生きていてほしいけど、加害者ではあってほしくない。どちらにしても悲しすぎて、頭がおかしくなりそうです。そんな時に、追い討ちをかけるマスコミや家の壁に落書きする人たちも、ある意味で加害者に見えました」(50代・女性)

「マスコミ、SNS等での憶測は、本当に関係者家族を追い詰めるものだなと感じました。ここまで追い詰めているのに罪には問われない。なぜだろうと考えるとともに、自分も簡単にそのような存在になりかねない現実をしっかりと見なければいけないと思いました」(20代・女性)

「なにか事件が起きると、SNSなどで加害者の情報がいろいろと拡散される。そして、多くの人が加害者やその家族を匿名で攻撃する。簡単に人とつながることができる時代だからこそ、憶測や誤った情報に流されず、正しい情報を見きわめなければならないと思いました」(30代・女性)

といった、怒りや悲しみを覚える人、現代社会と照らし合わせた感想も飛び交っている。改めて、その問題点や自分自身についても見つめ直さなければならないと感じているようだ。

さらに、石川邸そのものに注目した、

「光がさして明るかった家が…暗くて重い空気の家に変わっていった。玉子が投げられて家が汚れてくのが…とてもせつなかった」(40代・女性)

といった意見も寄せられた。

今回、紹介できたコメントはほんの一部に過ぎないが、ひと筋縄ではいかない本作の物語に、大勢が容易にはかみ砕けない想いを心に残しているようだ。観る者それぞれが多様な感想を抱き、これからも議論を巻き起こしていきそうな『望み』。あなたはなにを思うのか?それを確かめに、スクリーンを訪れてみてほしい。

構成/トライワーク

堤幸彦監督の最新作『望み』への感想コメントが続々と到着/[c]2020「望み」製作委員会