テレビアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』の国木田花丸役やスクールアイドルグループ・Aqoursの一員として知られる高槻かなこが、10月14日にシングル「Anti world」でソロデビューを果たした。シングルの表題曲は、10月2日からスタートしたテレビアニメ『100万の命の上に俺は立っている』のオープニングテーマとして書き下ろされたもの。17歳でアニソンシンガーになることを決意した彼女がそこから10年の歳月を経て、アニメのテーマソングで満を辞してデビューを遂げることになる。

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■ 歌詞のもととなるメモのストックは10年分ある

高槻は歌のみならず、このシングルに収録された全3曲の作詞を手がけているが、作詞を始めたのはアニソンシンガーを志したのと同時期だったという。

「『アーティストといったら自分で歌詞を書くよね?』ぐらいの軽い気持ちで、携帯にメモをし始めて。自分が思ったことやふと思いついたこと、人から言われていい言葉だなと思ったことを書き残して……基本的には自分の経験や妄想ばかりですね(笑)。それをもとに、歌詞を書くようにしています。なので、ストックは10年分あるんですよ」

それだけストックがありながらも、今回のソロデビューにあたっては3曲ともゼロからの書き下ろし。しかも、すべてテーマやテイストが異なり、その振り幅の大きさからは彼女の多面性が伝わる。

「まず『100万の命の上に俺は立っている』のために「Anti world」を作ったんですけど、そこからシングルにカップリング曲を2曲入れることが決まって。ひとつ(「I wanna be a STAR」)はちょっとおしゃれな感じにしたい、もうひとつ(「アイシテルは▽グラム?」)はライブでみんなでイエーイって言えるようなかわいらしい曲にしたいと、まずテーマからざっくり決めたんです。私の中の感覚で言うと、「Anti world」は数学っぽいというか、答えが先に出ていて、そこにつながる言葉をどんどん当てはめていく作業だったんですけど、「アイシテルは〜」は読書感想文じゃないけど1行目から思いついた言葉を自由に連ねていく形でした」

※▽はハートマークが正式表記

■ かわいい愛犬のために頑張って朝早く起きてます

「答えが先に出ていて、そこにつながる言葉をどんどん当てはめて」いったという表題曲「Anti world」は疾走感あふれるハードロックサウンドに乗せて、英語のフレーズを織り交ぜた言葉数の多い歌詞を畳み掛けていくインパクトの強い1曲だ。

「「Anti world」は『100万の命の上に俺は立っている』の原作を読んでから歌詞を書いたんですが、主人公の子(四谷友助)がすごく理屈っぽい子なので、そういうひねくれ感を出すために言葉数を多くしたり、英語とか理屈っぽい言葉を入れたいなと意識したんです」

突如異世界へと転送された主人公が、命を賭けたクエストに挑む物語をドラマチックに彩る「Anti world」のサビには“明日の為に戦え”というフレーズが登場する。楽曲タイトルもそうだが、この何かに抗ったり立ち向かうという姿勢が描かれた歌詞を手がけた高槻にとって、今立ち向かっているものは何かあるのだろうか。

「そうですねえ……一番は睡眠欲かなぁ(苦笑)。あ、あと服が欲しいという購買欲とも日々戦っています(笑)。それこそ私、最近犬を飼い始めたんですが、毎朝9時には必ず起きてごはんをあげているんです。たまに夜が遅かった時とか朝起きるのが面倒だなと思うこともあるんですけど、ボロボロの状態でも頑張って起きて、朝ごはんをあげて一緒に遊んで。そういう日々とも戦っています。でも、かわいいから結局毎日できちゃうんですけどね(笑)」

「Anti world」とは正反対の話題が飛び出しなんとも微笑ましいが、それではカップリング2曲の歌詞はどのように書き進めたのかと尋ねてみると。

「「I wanna be a STAR」は本当に素直にシンプルで押し付けがましくなく、自分の心の中から出てきた言葉をストレートに書いていて。一方で、「アイシテルは〜」は完全に妄想全開(笑)。少女漫画を描いているような感覚で、そういう意味では3曲ともテーマも書き方も全然違いますね。私、本当に妄想が好きで。アニソンシンガーを目指していたこの10年の中で、自分でもアニメの主題歌を書けるようになりたいと思って、好きなアニメを観たあとに“新しい架空のテーマソング”を自分で作詞する練習をひっそりとしていたんですよ(笑)。よくアニメファンの方々がアニメの最新話を見終えたあとに、ブログやSNSに感想を書き込むじゃないですか。私も同じような感覚で、趣味として歌詞を妄想で書いていたんですが、この「アイシテルは〜」は当時夢中でやっていた遊びが活きたかなと思いました」

■ 今までの経験をフルに活かし、新しいチームとしてフレッシュにやっていきたい

これまでも作詞は一人で行ってきたが、ソロデビューに際して“チーム・高槻かなこ”として他人の意見にも耳を傾ける機会も増えたという。

「今まではワンマンタイプで即決型だったんですけど、ソロデビューが決まってからは信頼するスタッフさんたちがどう思うか意見を聞くようにしています。逆に自信がない時は『これ、どう思いますか?』とストレートに聞いちゃいますし。『信頼している人がいいと言ってくれているんだったら、間違いないはずだ』と、物事を客観的に考えられるようになりました」

これは「I wanna be a STAR」で初挑戦した作曲に関しても同様で、チームだからこそ成し得たものだと高槻は説明する。

「「I wanna be a STAR」は私が『こういう感じで歌いたいです』って考えたメロディラインを作曲家さんたちに渡して、それをおしゃれにブラッシュアップしてもらっていて。今回は『高槻かなこが作詞・作曲』と謳っていますけど、いろいろ助けられて今の私があるんです。作詞にしても、一人で全部進めようとしたら今回みたいな内容にならなかったんじゃないかな。本当にここからがデビューなので、今までの経験をフルに活かしつつ、新しいチームとしてフレッシュにやっていきたいなと思います」

そんな彼女に、この先目指す“アニソンシンガー像”を聞いてみた。

「声優アーティストだから、高槻かなこだから聴いてもらえるんじゃなくて、例えばこの「Ant world」を聴いた時に『この曲を歌っている人いいな』ぐらいの感覚で、曲先行で好きになってもらえるようなアーティストになりたくて。私自身は声優アーティストとして見られたいという欲があまりなくて、もっとシンプルに作り手として、歌い手として見られたいという気持ちが強いんですよ。だから極論ですけど、『好きなアニソンを集めてみたら高槻かなこだった』とか『最近いい曲だなと思うものが全部高槻かなこの曲だった』と思ってもらえるようになるのが最終目標です!」

(取材・文 / 西廣智一)(ザテレビジョン

シングル「Anti wolrd」でソロデビューを果たした高槻かなこ