アメリカ海兵隊と同海軍が、日本周辺で大規模な共同演習を実施しました。当然ながら日本も無縁ではないこの演習、その内容は、離島などを舞台とした新しい戦略と戦術のコンセプトに基づくものでした。

アメリカ海兵隊と第7艦隊の一大演習「ノーブル・フューリー」

2020年10月6日(火)から15日(木)にかけて、日本やオーストラリアに駐留、展開しているアメリカ海兵隊第3遠征軍と、アメリカ海軍第7艦隊が、日本周辺で大規模な共同演習「ノーブル・フューリー(高潔な憤怒)」を実施しました。海兵隊の発表によれば、この演習の目的は海兵隊と海軍との連携を強化し、同じ地域で同時に作戦を行う能力を高めることにあるようですが、実は、これは日本の防衛にとっても非常に重要な内容なのです。

その理由は、もちろん中国です。

中国が進める対米戦略 アメリカはどう対抗する?

2020年10月現在、中国は、台湾への軍事侵攻や沖縄県尖閣諸島をめぐる紛争へのアメリカ軍の介入を防ぐために、東シナ海の内側にアメリカ軍の艦艇などが侵入することを防ぎ、さらにその先の西太平洋での活動を制約する態勢の構築を進めています。

具体的には、中国本土から弾道ミサイル巡航ミサイルによって日本にある在日米軍基地や自衛隊施設などを攻撃して、アメリカ軍自衛隊の活動基盤を破壊し、その隙に長射程対艦ミサイルなども使いながら制海権や制空権を獲得して、一気に台湾や尖閣諸島などを奪取する、というものです。

これまでの前提を打ち砕く「EABO」 その内容とは

いくらアメリカ軍が世界最強といえども、滑走路が破壊されれば戦闘機は発進できませんし、港湾が破壊されれば艦艇が補給を受けることも困難になります。そこで、アメリカ軍はこうした状況に対応するべく、新たなコンセプトの実現を目指しています。そのひとつが、海兵隊の進める「EABO」こと「遠征前進基地作戦」です。

冷戦が終結して以来、アメリカに軍事力で対抗できる国は事実上存在せず、そのためアメリカ軍は制海権や制空権を常に自らが有している前提で軍事力を整備してきました。

しかし、現在のように敵がアメリカ軍の活動を大幅に制約している環境下で戦うためには、まずはアメリカ軍が敵から制海権などを確保し、自らがスムーズに活動できる環境を取り戻さなければなりません。そこで重要になるのがEABOです。

「EABO」は、敵が占領している離島などを海兵隊が強襲して奪い返し、そこに長射程の対艦、対地、対空ミサイルロケット、通信システムや情報収集センサーなどを運び込んでこれを前進基地とします。そして、そこから海軍と連携して敵の艦艇や航空機などの位置を把握し、これらをミサイルで攻撃したり、あるいは逆に海兵隊が持ち込んだセンサーで捉えた目標情報を海軍に伝達し、駆逐艦航空機が攻撃を実施したりするのです。

さらに、前進基地は燃料や弾薬を味方の航空機や艦艇に補給する機能も備えています。これにより、アメリカ軍は継続して戦闘を行うことができるようになるわけです。

「ノーブル・フューリー」で実際に海兵隊がみせた「EABO」

実は冒頭で紹介したノーブル・フューリー演習では、このEABOに関する訓練が集中的に実施されました。たとえば、MV-22「オスプレイ」によって沖縄県の伊江島に展開した海兵隊の部隊が敵を駆逐し、そこに海兵隊の「高機動ロケットシステムHIMARS)」がアメリカ空軍のMC-130J輸送機によって運び込まれ、攻撃を実施したのち、再び輸送機で素早く別の島に移動するという訓練が実施されました。

このEABOポイントは、敵を探し出して攻撃する基地を各地に設け、艦艇や航空機と共にそれらをネットワークで連接することで、敵は攻撃目標を絞り込めず、逆に自らが攻撃される立場に追い込まれてしまう、というところにあります。

そして、現在自衛隊が進める離島防衛のための態勢構築も、こうしたアメリカ軍の取り組みと密接に連携して進められることが予想されます。つまり、これは日本にとっても他人事ではないのです。

ノーブル・フューリー演習にて、伊江島(沖縄県国頭郡)に「オスプレイ」で降り立ったアメリカ海兵隊(画像:アメリカ海兵隊)。