NetflixAmazon Prime VideoHuluDisney+……。多種多様な動画配信サービスが隆盛している昨今。どの配信サービスに加入するか、お悩みの方も多いだろう。月額料金が数百円とはいえ、複数加入すれば出費もかさむ。

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 そんななか、後続のApple TV+が気を吐いている。2019年9月11日以降にApple製品(iPhone、iPadApple TV、Mac、iPod touch等)を新規購入した場合は、月額料金600円がなんと1年間無料になるというのだ。

 画期的なキャンペーンといえるが、Apple TV+は日本国内でのプロモーションをそこまで行っておらず、そもそもどういう作品が観られるのかを把握している人が意外に少なく感じる。そこで今回は、いまのうちに楽しんでほしい、Apple TV+でしか観られないオリジナル作品を、いくつかピックアップしてご紹介する。

・そもそもApple TV+とは
 まずは、作品の具体的な話をする前に、Apple TV+の特徴について説明させていただきたい。本サービスは、「トップクリエイターを招聘したオリジナル作品」を標榜しており、映画界の重鎮スティーヴン・スピルバーグやヒットメーカーのJ・J・エイブラムス、M・ナイト・シャマラン、スパイク・ジョーンズソフィア・コッポラといったそうそうたるメンバーを招集。また、アメリカの配給・制作会社「A24」とのコラボレーションも発表した。Netflixのように膨大な数のオリジナルコンテンツが観られるわけではないが、少数精鋭の良質な作品ラインナップを目指しているといえよう。

『ザ・モーニング・ショー』
 2019年にサービスを開始したApple TV+が、目玉の作品に挙げた1本。セクハラ問題で、朝のワイドショーの顔だった男性キャスターが降板。相棒の女性キャスターも窮地に立たされる。番組の内容も変更せざるを得なくなるが、様々な試練が立ちはだかり……。非常に今日的といえるスキャンダラスなネタに切り込み、アメリカのメディアの裏側をサスペンスフルに描き出した社会派エンターテインメントだ。

 『ディープ・インパクト』(1998年)や『ビリーブ 未来への大逆転』(2018年)のミミ・レダーがメイン監督を務め、ジェニファー・アニストン、スティーヴ・カレル、リース・ウィザースプーンといった演技派が一堂に会した本作。先読みできないストーリー展開も秀逸だが、彼らの「ブチギレ演技」が強烈だ。理不尽に激高し、鬼の形相で絶叫する姿などは、同じ“お仕事ドラマ”である『半沢直樹』好きにも、ハマるかもしれない。

サーヴァント ターナー家の子守』
 『シックス・センス』(1999年)から『ミスター・ガラス』(2019年)まで、サプライズに満ちた作品を次々に生み出してきた鬼才M・ナイト・シャマラン監督が、製作総指揮とエピソード監督を務めたホラーサスペンス。

 ある裕福な夫婦のもとに、住み込みの子守として雇われた女性。家を訪れた彼女が知ったのは、雇い主の妻は精神病によって、人形を亡くなった子どもと信じているということ。夫の頼みで狂言に付き合うことになった子守の女性だったが、実は彼女にも恐るべき秘密があった……。

 設定からして相当トリッキーな作品だが、「人形だと思っていた子どもが本物にすり替わっている」など、毎度衝撃的な展開が畳みかけ、観る者をまるで飽きさせない。『ダークナイト』(2008年)のアートディレクターが手掛けた、不気味な雰囲気が漂うプロダクション・デザイン、快作ホラー『イット・フォローズ』(2014年)や『アス』(2019年)の撮影監督、マイク・ジオラキスによる意表を突いたカメラワークなど、スタッフワークにも注目だ。

ジェイコブを守るため』
 ベストセラー小説を、“キャプテン・アメリカ”でおなじみクリスエヴァンスと、『IT』シリーズのジェイデン・リーバハーが親子役を演じてドラマ化。新『猿の惑星』シリーズの脚本家、マーク・ボンバックが製作総指揮を務める。

 平和な家族に起こった、突然の悲劇。なんと、息子が同級生殺人容疑で逮捕されてしまったのだ。息子は無罪なのか、それとも殺人犯なのか。苦悩する父母の前に、さらなる“事件”が立ちはだかる。

 「息子が逮捕」というショッキングな設定でグッと観客の心をつかみ、父母の懊悩を丹念かつビビッドに描く堅実な演出と、焦燥していくさまをリアルに演じた出演陣の名演が光る逸品。骨太な展開は、日本でいうところのWOWOWオリジナルドラマにも近い。

『グレイハウンド』
 トム・ハンクスが脚本・主演を務めた海洋アクション。劇場公開予定だったが、新型コロナの影響を受け、Apple TV+が約75億円の高値で配信権を獲得したという。

 第2次世界大戦下の1942年。米軍の駆逐艦「グレイハウンド」の艦長に任命された海軍将校は、味方に救援物資を届けるため、37隻の船団を率いて出発。しかしその道中、行く手を阻むドイツ潜水艦Uボートとの死闘を余儀なくされる。

 大海原での緊迫感みなぎる戦闘シーンが見もので、姿の見えない敵の動きをソナーで予測しようとする熾烈な“読みあい”や、逃げ場のない海上で敵の艦隊に囲まれる恐怖が、まざまざと描かれていく。威厳を漂わせつつ、部下の未来のため心を砕き続ける人格者を演じきったトム・ハンクスも、見事だ。

『オン・ザ・ロック
 『ムーンライト』(2016年)や『ミッドサマー』(2019年)のA24Apple TV+が組み、『ロスト・イン・トランスレーション』(2003年)のソフィア・コッポラが監督・脚本を務めたハートフルコメディ(配信開始は10月23日)。

 出張続きの夫の動向に不信感を持った妻が、プレイボーイである父とコンビを組み、浮気調査に乗り出していく。「父娘が浮気調査をする」という奇抜な設定時点で興味をそそられるが、期待にたがわぬ良質なエンターテインメントに仕上がっている。

 父親役のビル・マーレイのトボけた演技と人間味あふれる演技が効果的で、男女のおかしさを描いた軽妙なセリフ、ニューヨークの街並みやカメラワーク、テンポ感など、コッポラ監督らしいセンスの良い映像との相性も抜群だ。気軽に笑いながら観られる構成になっているものの、根底には「父娘の和解」という奥深いテーマが内包されている点も、心憎い。

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 5作品を厳選し、ざっと紹介したが、いかがだっただろうか。Apple TV+ではその他にも、J・J・エイブラムス監督が製作総指揮を務めた青春音楽ドラマ『リトル・ヴォイス』、スティーヴン・スピルバーグ監督が製作総指揮を担当し、自作品をリブートした『アメージング・ストーリー』、幻の詩人を新解釈で描く『ディキンスン 若き女性詩人の憂鬱』、アメリカにやってきた移民の人々の心温まるエピソードを映像化した『リトル・アメリカ』など、満足度の高い作品がひしめいている。

 昨今人気のドキュメンタリーでは、人気ミュージシャンの素顔にスパイク・ジョーンズ監督が迫る『ビースティ・ボーイズ・ストーリー』、スパイク・リー監督やスティーヴィー・ワンダーら著名人に感銘を受け、人生が変化した人々がお礼の手紙を送る『親愛なる…』、10代の少年たちが疑似選挙に挑む姿を追った、サンダンス映画祭グランプリ受賞作『ボーイズ・ステイト』など、独自性の高いものが並ぶ。

 これまでApple TV+のネックだった「クオリティは高いが、作品数が少ない」という問題は、今後数を重ねていくことで解決していくもの。差し当たっていまは、無料視聴キャンペーンを利用して「まずは、体験」してみるのも、一興だ。

SYO(映画ライター))

『Apple Newsroom』より