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「家庭での虐待は大丈夫ですか」「コロナに罹った子供たちが、いじめに遭っていませんか」

天皇皇后両陛下は心配そうなご表情で、そう問いかけられた。

10月1日、小中学校の校長会会長や東京都教育委員会教育長ら4人を赤坂御所に招き、天皇陛下と雅子さまはコロナ禍の教育現場について説明を受けられたのだ。

「皇后さまのご質問からは、コロナで生活が一変した子供たちに心から寄り添っていらっしゃることが伝わってきました。午後5時から1時間ほどの予定でしたが、終わったのは午後7時前でした」(東京都教育委員会事務局の担当者)

これまで両陛下は、さまざまな分野の専門家から新型コロナに関するご進講を受けられてきたが、約60分間もの“大幅延長”は前例がない。今回のご説明に出席した東京都公立小学校長会会長の喜名朝博さんが、両陛下のご様子を明かす。

「学校の行事が中止になり、子供たち同士の関わりやそこで育つ力を得られる機会が減っているとご説明申し上げますと、皇后さまは『運動会などが楽しかったと今でも言っています』と愛子さまのお話をしてくださり、学校行事の大切さについてよくご理解いただいていると感じました。私たちが説明しているときも、質問をされるときも、とても真剣にメモを取られている両陛下のお姿からは、ご関心の高さがうかがえました」

雅子さまは今回の懇談の中で「虐待が増えていませんか」と、前出の喜名さんに質問されている。児童虐待は、雅子さまがとくに強い関心を示されてきた問題だ。

《最近、国内では、子供の虐待や子供の貧困など、困難な状況に置かれている子供たちについてのニュースが増えているように感じており、胸が痛みます》

’18年12月、雅子さまは誕生日に際してのお言葉で児童虐待の増加を憂慮されている。さらに翌’19年にも子供の貧困や虐待の問題に《心が痛みます》と、2年連続で言及されているのだ。

厚生労働省によると、子供が親などから虐待を受けたとして児童相談所が対応する件数は年々増加の一途をたどり、今年1月からの半年間では9万8千件余りと過去最多のペース。緊急事態宣言が発令された4~5月は、昨年同期比で2%減っているが、虐待の“潜在化”という事態も危惧されている。

つまり学校の休校や外出自粛に伴い、周囲の人が子供の異変に気づく機会が少なくなっているということだ。また、感染の恐れを理由に、児童相談所の職員が家庭訪問を断られるケースもあるという。コロナ禍は、児童虐待の実態把握と対策を困難にしているのだ。

雅子さまは愛子さまがお生まれになってから、児童問題にいっそう力を注がれるようになり、児童養護施設を何度も訪れて、保護者がいない子や虐待された子らと交流されている。また聖路加国際病院にもたびたび足を運び、重病の子供たちを励ました。

だが、コロナ禍で両陛下の施設訪問は難しい状況となっている。宮内庁関係者が言う。

「陛下も雅子さまも、苦境にある子供たちに直接お会いになって激励される形がいちばん望ましいと思われているのは間違いありません。ですが新型コロナの完全な終息が見えない現状では当面、それは不可能です」

4月には天皇陛下が“お手元金”から子供の貧困対策に取り組む『子供の未来応援基金』に5千万円を寄付されましたが、法律で寄付の上限が定められているため、1年に何度も行うことはできない。

「雅子さまも、5月に日本赤十字社社長からのご進講でのお言葉が宮内庁HPに掲載されて以降、皇后としての公式なメッセージは発信されていません。5カ月に及ぶ“沈黙”には、雅子さま自身のもどかしい思いもおありでしょう。外出を伴う公務が難しい現在、両陛下は“新機軸”となる活動を模索されているのではないでしょうか。そんな中、今回の懇談にも今後の活動への“ヒント”があったように感じます」(前出・宮内庁関係者)

今回の教育関係者らとのご面会で、休校期間中に教員が電話やパソコン、タブレット端末などで生徒と関わることで、以前よりむしろ深く話せる機会も生まれたと説明があった。

天皇陛下は「コロナを経て見えてきたことをチャンスに変える発想の転換も必要ですね」と述べられたという。

実は皇室でも、少しずつではあるがリモートの活用が進み始めている。この8月には両陛下が、新型コロナ流行下での水防災をテーマとした国際オンライン会議をお住まいの赤坂御所で聴講された。

9月には、秋篠宮家の次女・佳子さまが、オンラインで開催された「全国高校生手話パフォーマンス甲子園」の開会式に動画で手話によるメッセージを寄せられた。

現場に足を運び、直接対面して思いを伝える――。天皇陛下と雅子さまが上皇ご夫妻から引き継がれた皇室のあり方も、コロナ禍の長期化でより柔軟な対応が必要となっているのだ。

「雅子さまは“困難な状況にある子供、虐待を受けている子供に希望を与えたい”という強い思いを持っていらっしゃいます。施設への直接の訪問がかなわない今、リモートで励ましの言葉を届けることはできないか――。雅子さまは前例なき試みの実現に向けて、すでに動きだされているのです」(前出・宮内庁関係者)

苦しい状況にある子供たちに希望の光を――。子供たちの笑顔を取り戻すため、雅子さまの“慈愛の決断”が揺らぐことはない。

「女性自身」2020年10月27日号 掲載