青春の味と聞いて思い出すのは、どんな食べ物でしょうか。筆者は、大学の食堂にあった「レギュラー丼」という謎の丼物を思い出します。ご飯の上に醤油ベースで甘く煮込んだ鶏モモ肉に温泉卵紅生姜を乗せたシンプルな構成。味は照り焼きチキンとも親子丼ともいえませんが、どこかハマる味でした。

 きっと各大学にも、そこの学食にしか置いていない「名物メニュー」が存在していることでしょう。調べてみると、九州大学にも謎の麺料理ジロースパゲティ」なるものがあったそうです。

『ふくや』が復刻した「ジロー風スパゲティ」
『ふくや』が復刻した「ジロースパゲティ

 1980年代九州大学生活協同組合(通称:九大生協)が実施したアイデアメニューコンテストで誕生したという一品。箱崎や旧六本松キャンパスで提供され、学生たちに愛されるメニューとなりました。

ジロースパゲティ」は明太子、ツナ、しそ昆布と一緒にパスタを炒め、バターと醤油で味付けしてから卵を絡めたもの。「ジロー」の名は、東京にある喫茶店が名前の由来なのだそうです。

 しかしながら調理に時間がかかることや調理器具の電化により、2015年からは学食での提供をやめてしまいました。ですが、卒業生から復活を希望する熱い声があがり、明太子の製造販売を行う『ふくや』から商品化が実現。しかも売上金が「九州大学新型コロナ対策留学生支援基金」に寄付されるとのことで、早速注文してみました。

青春時代を思い出させる、他にはない未知の味

 数日後に届いたのが、こちらの「ジロースパゲティの素」です。レトロで哀愁漂うパッケージがなんともいえません。

 2食入りで927円(税込)とパスタソースにしては高級ですが、一度失いかけた味が蘇るならば安いものです。

 早速、作ってみました。材料は「ジロースパゲティの素」の他にパスタ、卵、グリンピースを用意しました。パスタを鍋で茹でながら、フライパンにソースを入れて弱火で温めておきます。

 茹で上がったパスタフライパンへ投入し、ソースとスパゲティを混ぜ合わせ、添付の昆布の佃煮と卵を1つ割り入れます。火を止めて、余熱で卵がトロっとするまでかき混ぜます。

 お皿に盛り付け、グリンピースを飾ったら出来上がり! 率直に言えば、好みのはっきり分かれる味です。明太子、ツナ、しそ昆布、バター、醤油と、一般的な食材を使っていながら、全部一緒になるとなぜか未知の味…。探求心もあり、パスタを巻くペースは落ちるどころか止まらなくなりました。

 こってりしたバターと明太子の塩気、ツナの出汁に卵のまろやかな味が混ざり合い、なんともいえないコクと酸味が感じられます。この酸味の正体は、トッピングのこんぶ佃煮。これがあるだけで断然、後引く味わいになっています。

 この「ジロースパゲティ」が青春の味としてインプットされていたら、二度と食べられなくなった時の喪失感は計り知れないですね。果たして我が思い出の「レギュラー丼」はまだ学食にあるのでしょうか……。そんな思い出を想起させ、センチな気持ちになる青春の味でした。

(文◎亀井亜衣子)

●DATA

商品名:ジロースパゲティ

価格:972円(税込)
内容量:2食入(パスタソース70g×2、こんぶ佃煮10g×2)
賞味期間:常温365

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