GoToトラベルキャンペーン」の影響もあって、9月のシルバーウィークコロナ感染拡大後、激減していた旅行客がようやく戻り、観光地では久々の賑わいを見せていました。

渋滞
画像はイメージです(以下同じ)
 それ以前の自粛ムードが強かった時期は、他県ナンバーの車に対する嫌がらせなどのニュースが報じられていましたが、そんな時期であっても温かいもてなしを受けた人はいるようです。

お寺で飲み物を振舞ってくれた

「私も最初は少し警戒していたんですけど、嫌がらせとかひどい言葉を浴びせられたことは一度もなかったです。おかげですごく楽しい旅行になりました」

 そう語るのは、都内のデザイン会社に勤める角野聡一さん(仮名・24歳)。8月下旬に5日間の予定で四国を旅行。まだ旅行や帰省を自粛する人が多かったため、中止にしようか迷ったそうですが1人旅だったこともあり、悩んだ末に行くことに決めたといいます。

「ただし、周りには旅行のことをほとんど言わず、SNSにも旅のことは一切書き込みませんでした。批判的なコメントをされたくない気持ちもありましたけど、余計な波風を立てたくなかったので」

飛行機代を含めても5万円以下

寺
角野さんがもてなしを受けたお寺
 ちなみに四国を選んだのは、今まで一度も訪れたことのない地域だったから。しかも、ちょうど鉄道四国乗り放題の安いきっぷが発売していたことも大きかったようです。

「四国の特急が3日間乗り放題で料金はたったの8000円。通常の乗り放題きっぷの約半分という破格の値段でしたが、7~9月の限定販売だったのでぜひこれを利用して旅がしたいと思ったんです。

 それに私は東京都民ではなく神奈川に住んでいたので夏場も『Go To トラベルキャンペーン』を使ってホテルを安く泊まることができました。四国までの往復の飛行機代を含む旅費すべて合わせても5万円もかかってなくて、思っていた以上に安く抑えることができました」

 初四国ということもあり、定番の有名観光地をひとりで巡ったとか。また、せっかくの四国で八十八か所のお遍路のお寺も可能な範囲で訪れることにしたそうです。

「お接待」というもてなしの文化

「神社やお寺など古い建物のある場所に行くのが好きだったんです。別にお遍路が目的じゃなかったので順番はバラバラでしたが、時期が時期なので自分のことだけではなく『コロナが早く収束しますように』ってお祈りもしていました」

 すると、あるお遍路の寺を訪れた際のこと。参拝を済ませて境内を出ようとすると、お兄さん!」と角野さんを大声で呼び、手招きする女性がいたそうです

 そこで彼女のもとに近づくと、「今日は暑いからね。はい、どーぞ」とキンキンに冷えたお茶をくれたそうです。

「参拝者に飲み物などを振舞っているボランティアの方たちで、横浜から来たことを話すと『こんな時期にわざわざそんな遠いところから来てくれてありがとうね』ってお礼を言われたんです。まさかそんなふうに感謝されると思っていなかったので驚きましたが、すごくうれしかったですね」

 四国には古くからお遍路を巡る人たちに飲み物や食べ物を振舞ったり、泊まる場所や休憩所を提供する「お接待」という文化があります。彼らにとって参拝に訪れた人に対するこうした行為は、弘法大師をもてなすことにもなるため、徳を積んでご利益が得られると考えられているのです。

すっかり四国が大好きに

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「あとでネットを見てそういう文化があると知りましたが、だからといって30度を超す猛暑のなか、そうやって1日中もてなすなんて簡単にできることじゃないですよ」

 このときは飲み物だけでなくスイカまでいただいたそうで、それもボランティアの方が自分で栽培した貴重なもの。相手が話好きだったこともあり、角野さんもつい長居しておしゃべりを楽しんでしまったといいます。

すごく甘くて美味しいスイカで3切れも食べちゃいました(笑)。ほかにも穴場の観光名所や食べ物屋さんの情報も細かく教えてくれて、おかげで四国がとても大好きになりました。また機会を作ってぜひ遊びに行きたいですね」

 旅行者への嫌がらせやバッシングが起きていた中での温かいもてなし。彼にとっても忘れられない旅の思い出になったようです。

<取材・文/トシタカマサ イラスト/田山佳澄>

【トシタカマサ】

ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中