活況を呈している韓国の株式市場では最近、大型IPO(新規株式公開)が続いている。

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 韓国株の中で現在一押しのBBIG(バッテリーバイオインターネットゲーム)に該当するSKバイオファーム、カカオゲームズのIPOは成功裏に終わった。

 そして、今年最後の大型IPOといわれるのが、ビッグヒットエンタテインメント(Big Hit Entertainment:以下、ビッグヒット)である。

 10月15日鳴り物入りで韓国株市場にデビューした。ビッグヒットは、アーチストグループBTS(防弾少年団)が所属する芸能プロダクションである。

 BTSは、今年8月に発表したデジタルシングルダイナマイト」でK-POPの壁といわれていた米ビルボードメインシングル)チャート「ホット100」で初めて1位にランクされた。

 この勢いに乗じてビッグヒットは、IPOによってさらなる飛躍を目指したわけである。

 エンタメ業界らしく韓国株式取引所での上場式をユーチューブで公開したりしてかなり注目を集めた。

 ちなみに、韓国株式取引所がユーチューブライブで上場式を公開するのは初めてのことである。

 この式典にBTSが参加するか期待されたが、新型コロナウイルス感染症対策もあり、また株式公開の主役は会社ということで実現しなかった。

 株式公開日の10月15日ビッグヒットの株価は、公募価格(13万5000ウォン)の2倍から始まり、35万ウォン(約3万5000円)まで急騰した。

 ところが午後になると徐々に落ち込み、終値は25万8000ウォンだった。

 翌16日も15日の終値を下回る水準から始まり、SKバイオファームのような2日連続上限価格を記録することはなかった。

 とはいっても、ビッグヒットの代表であるバン・シヒョク氏が保有している株式、1237万7337株(持分率34.74%)は15日の終値基準で3兆1934億ウォンを記録した。

 これは、経営トップが持つ韓国の自社株評価額ランキングで8位となる。

 ちなみに、7位は大手化粧品会社のアモーレパシフィックグループ会長で、9位は現代自動車グループの会長である。

 つまり、韓国最大で世界的な自動車メーカーの会長よりも上となる。

 BTSメンバーにもバン代表から1人当たり6万8385株ずつ譲渡されている。このため、各メンバーの持株価値は176億ウォンとなった。

 彼らが得た価値は歌手や俳優としては破格で、他の韓国のエンタメ業界の経営者と比べても遜色がない。

 その水準は、JYP創業者のパク・ジニョン(NiziUのプロデューサー)、YGの創業者(BIGBANGなどの所属プロダクション)、SM創業者(少女時代東方神起など、アイドルグループ多数保有)、タレントパク・スネ、ペ・ヨンジュン(冬ソナで一世を風靡し、企業家としては前キーイーストの筆頭株主)、ハム・ヨンジ(ミュージカル俳優)、ハン・ソンホFNCエンターテインメント代表に続く。

 ビッグヒットの上場が決まった後、こうしたエンタメ関連株の株価は堅調に推移していた。ところが、ビッグヒットのIPO当日、15日一気にダウンした。

 ビッグヒットの株価が上場初日からあまり芳しくなく推移しているのは、公募価格の設定が高すぎるとみられているからだ。

 実際、証券会社のサジェスチョンは、「買い」気配は強いものの、株価に関しては22万ウォン(約2万2000円)程度が相場と見ている。

 また、BTSはもうすぐ韓国のアイドル男子たちの弱点である兵役の義務を果たす時間が近づいている。

 加えて、ビッグヒットではこれまでBTS以外のグループも育ててきたが、売れたのはBTSだけである。

 兵役に関しては、兵役法改定によりBTSメンバーの入隊延期が可能になるかもしれないとの観測も流れているが、あくまで希望的観測である。

 ただし、ビッグヒットには、これまでのエンタメ企業とは一線を画す強みもある。

 ITを生かしたコンテンツパワーである。それは各方面で立証されている。

 NaverラインBTSメンバーコラボして開発したキャラクターIP(知的財産権)「BT21」は公式SNSアカウントフォロワーおよびチャンネル登録者数が3000万人を超えた。

 公開3年目で玩具、製菓、ジュエリーなど8000余の商品として発売された。ラインフレンズによると、昨年、世界での売上高は3割増という。

 絵文字への反響も良い。カカオトークでは6月に「宇宙スターBT21テンション充満」を発売、半日で人気1位となった。

 ゲームでも力を発揮している。

 ラインフレンズ2018年に発売した「パズルスターBT21」は、グーグルプレイGoogle Play)のダウンロード件数が100万件を突破した。

 ネットマーブルの新作「BTSユニバースストーリー」は9月23日事前ダウンロード開始1日で韓国をはじめ、日本、米国、台湾など10カ国でアプリストアランキングで上位を占めた。

 サムスン電子は、新製品の折り畳み型スマートフォンギャラクシーZフォルダー2」のレビューBTSに任せたことも話題となった。

 サムスン電子初のオンライン行事で、BTSメンバーが直接製品を開封、機能などを紹介したことが世界的な注目を集めた。

 ビッグヒット子会社、beNX(ビーエヌエックス)が運営するファンコミュニティサイト「Weverse(ウィーバス)」は、ファンサイトを超えて公式グッズなどを世界的に販売するなど韓国最大のコンテンツラットフォームになりつつある。

 ちなみにこの「Weverse」は、「Weverse Japan」も展開している。

 ウィーバス加入者数は、昨年6月のスタートから1年間で3倍増となり、上半期の売上高は、1127億ウォン(約112億7000万円)と、昨年の年間売上高を軽く超えた。

 ウィーバスの売上高は、ビッグヒットの公演売上高を超え、ビッグヒットの大黒柱に成長している。

 こうした理由から、ビッグヒットは上場関連投資説明書で、同社が単純なエンタメ企業ではなくIT基盤のコンテンツ企業と位置づけている。

 そして、韓国大手ITプラットフォーム企業であるNaverカカオなどを競争会社として挙げている。

 エンタメだけに事業分野をとどめないという意志は、ビッグヒット取締役の顔ぶれをみても一目瞭然だ。

 ゲーム会社、IT会社、Eコーマス、ベンチャーキャピタル出身たちがずらりと肩を並べる。

 特に面白いのは、現代自動車でマーケティング広告を担当し、グーグルGCAS出身の人物を取締役に迎えたことである。

 取締役たちだけでなく、社員もIT企業からの引き抜きが続いている。

 すでにbeNXには40人以上のIT専門家が勤務しているようだ。業界最高レベルの年俸など掲げ、IT人材を募っているという。

 すでにNaverカカオからもビッグヒットに鞍替えした人たちがいるという。来年まで100人を超える規模の人材を採用するという。

 また、新技術に素早く対応するためR&Dセンターまで設立した。

 トラフィックの安定的な対応はもちろん人工知能および多様な先行技術を基盤にマシンラーニング技術、デジタルアイテムなど、様々な課題を研究、開発していくという。

 こうした期待から、韓国の20~30代を中心とした個人投資家たちがビッグヒット株に飛びついたわけである。

 しかし、10月16日の終値は20万500ウォンと前日比22.29%減となった。

 15日まで韓国市場における時価総額ランキングは30位内だったが、16日は38位に下落した。

 今のところ株価は「評判倒れ」。「名物に美味いものなし」というような状況だが、果たしてBTSの底力を見せてくれるのか、今後に注目しみたい。

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韓国の人気グループBTS(8月30日、ニューヨークで、写真:MTV/ViacomCBS/REX/アフロ)