ホームで無得点の4連敗という苦しい時期を経て、仙台戦では6得点のゴールラッシュ

 浦和レッズは、18日に行われたJ1リーグ第23節ベガルタ仙台戦で6-0の大勝を収めた。得点力不足に悩まされていたチームが直近2試合で急激に攻撃の機能性を上げているが、大槻毅監督はあくまでも積み上げを強調。そして「自転車に乗れるだけではダメ」と、たとえ話を用いてチームの成長に触れた。

 浦和は今季から大槻監督の下で4バックを導入。攻撃的なサイドハーフの良さを生かす一方で、全体的に見れば組織的な守備から素早く攻める方向へ舵を切った。しかしながら、長らくポゼッション傾向のサッカーをやってきたメンバーと、そうしたプレースタイルが得意な選手がチームの中に混在する状況もあった。

 トレーニングキャンプ明けの2月は、公式戦2試合で8得点と新たなスタイルへの期待感も示した。しかし、新型コロナウイルスの影響で中断したリーグが再開すると、数少ないチャンスで生んだゴールを守り切る試合ができるか、失点を重ねて敗れてしまうかという流れが続き、勝敗はほぼ五分なのにもかかわらず、得失点差がマイナス2桁という状況だった。

 仙台戦の前にはホームで無得点の4連敗という厳しい時期を過ごしていたが、前々節にサガン鳥栖アディショナルタイムの決勝点による1-0での勝利を収めると、前節は柏レイソルを相手に20本以上のシュートを放つ攻撃の機能性をいきなり見せた。そのゲームでは決定力を欠いて1ゴールにとどまって1-1で引き分けたが、この仙台戦はビッグチャンスをしっかりとゴールにすることで6得点というゴールラッシュになった。

 劇的な変化をここ2試合で見せているように感じさせる浦和だが、大槻監督は「きっかけと言われると、よく分からない」と話し、積み上げの成果を強調している。

「コツみたいなもので一段飛ばしにできるようなことはなく、一つひとつを突き詰めていくことで、選手がスッと入れるところが大事だと思っています。僕はよくコーチ陣で話をしますが、自転車に乗れるのと一緒で、急に自転車に乗れるようになったら一生乗れます。ただ、自転車に乗った時にスピードを出して急カーブで曲がる、今の選手はサッカーでそこまでやらなければいけません。自転車に乗れるだけではダメで、それにスピード感や判断を身につけるようにという話を言っています」

埼玉スタジアムは最大観客動員が2万4000人まで緩和も仙台戦に訪れたのは9831人

 指揮官の言う「自転車に乗れるだけ」の部分は、2月のキャンプ明けの時点でチームに浸透していた。しかしながら、その自転車をどう扱って走っていくかという点で試行錯誤もあれば、チーム内に迷いがあったのも否定できないだろう。こうした部分が噛み合いの悪さとして成績の不安定さにつながり、連敗の時期を過ごすことにもなったと言える。

 一方で、ここ2試合の浦和は自転車の扱いという点では一つ上の段階に達したことをピッチ上で見せている感がある。この試合から浦和の本拠地、埼玉スタジアムは最大観客動員数が2万4000人まで緩和された。だが、現実に仙台戦に訪れたのは9831人。社会情勢や観戦へのハードルがあるにしても、ここまでの戦いぶりが期待感を与えてこなかったことが数字に表れているのは事実だろう。

 しかし、この試合は再びスタジアムでの観戦意欲を高めるきっかけになり、「見に来てほしい」と言えるものだろう。大槻監督も「当然、エンターテインメントですし興行ですから、我々はいいゲームを目指して本当にトライしてやることで、それが言えるようにトレーニングから努力していきたい」と話す。

 残り10試合となった今季のJ1だが、終盤戦の浦和は一気に勝ち点を伸ばす可能性を秘めている。(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)

円陣を組む浦和レッズの選手たち【写真:小林 靖】