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MX-30月1000台目標 丸本社長の回答

text:Kenji Momota(桃田健史

マツダが満を持して2020年10月8日に正式発表した「MX-30」。気になるのは、販売計画台数が月1000台と控えめなことだ。

なぜ、マツダはコンサバな姿勢を見せているのか?

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マツダMX-30    マツダ

オンラインでおこなわれた記者発表会で、記者の質問に答えたマツダの丸本明社長はこうコメントする。

「MX-30にはこれから2つの挑戦があります。それはEVであり、またロータリーエンジン(を活用したレンジエクステンダー型EV)など、電動化技術への挑戦です」

マツダのメインストリーム(主流商品)とは違うのため、デザインでも挑戦しています」という前置きをした。

そのうえで、販売計画台数がコンサバな点については以下のコメントを残した。

「2012年に投入した(新規導入モデルの)初代CX-5は年間14万台のヒットとなり、それが30万台を超えるまでになりました」

「MX-30も、まったく新しいモデルであり(初期の台数目標は)控えめにして、その後にお客様の声を聞きながら販売台数を広げていきたいです」

むろん、この月1000台とは、マイルドハイブリッドである「eスカイアクティブ」搭載車のみでの計画である。

丸本社長が会見の中で明らかにしたように、MX-30のEVバージョンについては2021年1月に発売を予定している。

さらに、2022年以降には、ロータリーエンジンを発電機として使うEVである、MX-30 レンジエクステンダーの市場導入を認めた。

とはいえ、初値で月1000台はコンサバ過ぎないか?

月1000台目標は少ない? 多い?

月1000台という数字を考えるうえで、直近でのマツダの販売実績を見てみたい。

一般社団 自動車販売協会連合会の調べでは、直近の2020年4月~9月期で、
マツダ2(1万2144台・月平均2024台)
CX-30(1万0119台・1687台)
CX-5(8539台・1423台)
マツダ3(8437台・1406台)
・CX-8(5811台・968台)
CX-3(4259台・719台)である。

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マツダMX-30は、マツダ3/CX-30(写真)につぐマツダスモール商品群の第3弾として発売された。    田村 翔

ただし、当然のことながら、この4~9月期は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、4月の緊急事態宣言による経済活動の急激な低下の影響がある。

そこで、コロナ前である2020年1月、2月を見ると、CX-30が2955台、3708台。CX-52742台、2987台という数値だ。

CX-30は2019年10月発売であり、2020年初は新車効果が大きかった。販売計画台数は2500台としていた。

エンジンラインナップも、ガソリンのスカイアクティブG、ディーゼルスカイアクティブD、さらに次世代エンジンのスカイアクティブXと3種類をラインナップしている。

一方のMX-30は当初、「eスカイアクティブ」のみと考えると、CX-30販売実績から逆算して、月1000台というのは、ややコンサバであるとはいえ、妥当な数字なのかもしれない。

ただし、丸本社長がMX-30に対して「もっと自由な発想でクルマを使いたいと願うお客さまをマツダブランドにいざない、ブランドの幅を広げるモデル」と表現するからには、数値目標としてもマツダの本気度が示されるべきだとも思う。

EVが欧州先行 受注急増の背景は?

MX-30の台数と言えば、欧州市場向けではすでに販売され受注数が公開されている。

予約販売は2019年10月からだったが、実車がディーラー店舗に展示され始めた2020年9月から受注のテンポが一気に上がり、9~10月の1か月間だけで3000台を数えた。累計では5200台となっている。

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かつてRX-8にも採用されたセンターオープン式のドア構造を採用する。    マツダ

マツダによると、顧客が実車を見たことによって、エクステリアの独創性、インテリアの質感を体感できたこと。また、実際に試乗してマツダらしいダイナミクス(運動特性)を感じたことが、受注の急増につながったと見ている。

欧州では、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)が掲げる、欧州グリーンディール政策により、厳しいCO2排出量規制を進めている。

その中で、イギリスフランスドイツなどEU主要国はそれぞれがEVなど電動車の普及に対する施策を公表している。

関連するインセンティブ(奨励制度)も各国で実施されており、「この際、思い切ってEVに切り替えようか」というユーザーも増えてきているのは確かだ。

マツダなどメーカーの立場からすると、欧州での電動化対応は必須事項であり、新規モデルとして導入のMX-30についてもEVバージョンとしてまずは欧州へ、という自然な流れとなった。

MX-30を日本でさらに売るには?

話を日本に戻そう。

2021年1月のMX-30 EVバージョン発売について、丸本社長は一般的な新車販売やリース販売など、様々な方法を検討中だと発言している。

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マツダMX-30の欧州仕様。AUTOCAR英編集部は総合力を称賛したうえで「航続距離が、最後のひと押しをためらわせる」と評価する。    AUTOCAR英国編集部

その台数については現時点では未公開だが、例えばホンダの「ホンダe」の場合、年間販売計画台数が1000台しかない。8月20日の予約販売で初期分は完売している。ホンダはその数について公表していない。

技術面で見ると、MX-30 EV(欧州仕様)とホンダeは、偶然にも搭載する駆動用バッテリーの電気容量が35.5kWhで同じだ。

だが、車重差やモーター制御の方法の違いなどによって、満充電での航続距離ではMX-30 EV(欧州仕様)はホンダeに比べて2割以上短い。

こうした製品性を踏まえて、果たしてマツダはMX-30 EV(日本仕様)の販売計画台数をどう設定するのだろうか?

そうなると、MX-30の差別化要因は、やはり2022年頃に登場予定のレンジエクステンダーになる可能性が高いと思える。

それまでの2年間は、MX-30が目指す、マツダにとっての新しいブランド価値を着実に築いていく必要がある。

MX-30による世界感を共有するファンの輪を広げる様々なチャレンジにも期待したい。

そうした流れの中で、MX-30に触れる人が徐々に増えていく。

MX-30とは、そんなクルマなのかもしれない。


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