迷惑が金を生む時代だ。ユーチューバーの「へずまりゅう」こと原田将大容疑者(29)ら2人が威力業務妨害などの容疑で大阪府警に16日に逮捕された。洋服店のブランド商品が偽物だと難癖を付けて業務を妨害したという一見、他愛もない事件だが、逮捕は3カ月余りで2度目だ。

「偽物でしょ。日本人だまして楽しいっすか?」

「アメ村の黒人ぼったくり店に凸撃してみた」と題する5月に投稿された動画(現在は削除)で、肥満体型の男が、同店のTシャツを手に、たたみかけるように店員に迫っていた。「へずまりゅう」こと原田容疑者だ。

「交番の警官、役に立たないです」などと警察官を罵倒

 原田容疑者は「迷惑系ユーチューバー」としてネット界隈では知られる。迷惑行為を繰り返し、それを動画配信サイト「YouTube」に配信することでアクセス数、ひいては広告費を稼ぐというわけだ。

 動画では原田容疑者は同店でTシャツを購入。ほつれが見つかったとして「返品してこようかと思います」と言い、店外に店員を呼び出していた。

 その後も「ボケ!」などと店員を罵倒する原田容疑者。近くで警察官を見つけると、同様のクレームを繰り返すが、今度は「消費者センターに相談を」と受け流す警察官に攻撃対象を移し、「交番の警官、役に立たないです」などと罵倒。「また行くぞ」などと捨て台詞を吐いて動画は終わった。

 動画は数日で50万回近く再生。単純計算で数万円の収入が原田容疑者らに入ったことになる。黒人、警察官など人の感情を刺激するキーワードアクセスを稼ぐのか。

 だが、「へずまりゅう」こと原田容疑者が悪名をとどろかせたのは、この動画とはまた別の一件だった。

の切り身窃盗、コロナ拡散で悪名とどろく

 へずまりゅう、という不思議な言葉になんとなく既視感があるのは、7月の新型コロナウイルス騒ぎがあったからだろう。

 原田容疑者は、愛知県岡崎市スーパーで会計前の魚の切り身を食べるところを5月に配信。7月にそれが窃盗にあたるとして窃盗容疑で愛知県警に逮捕されたが、逮捕後にコロナへの感染が確認されたのだ。

 逮捕の直前には訪れていた山口県でもコロナをまき散らして、少なくとも2人を感染させていたことが発覚し、山口県の村岡嗣政知事が「へずまりゅう」を名指しで非難した。

警察施設でもマスクなし

 最終的には愛知県内でも原田容疑者から7人がコロナをうつされた疑いが浮上。愛知県大村秀章知事も非難に加わった。7人のうち6人は警察関係者。原田容疑者は発熱があったにも関わらずマスクの着用を拒否。警察施設でもマスクなしで動き回っていたことが判明している。

 司法関係者は「自分がコロナに感染しており、人に感染させる意図を持って感染させていたとしたら、傷害罪に問える可能性もある」とする。

 逮捕も厭わず、迷惑行為に走る原田容疑者。だが、そうした存在が現れることは、予見されたことだったともいえる。その予兆は少なくとも7年前に遡る。

「迷惑系」の走り、バカッタードローン少年

 ツイッター上に、レストランの業務用冷蔵庫の中に店員が入っている様子を撮影した写真が載ったのは2013年のことだった。後にステーキレストランチェーンの店だったことが発覚したが、不衛生だとして大騒動となり、同店は閉店にまで追い込まれた。

 内輪での極めて悪質な「悪ふざけ」投稿がツイッター上で話題になり始めるのはこのころからだ。その後も同様の不衛生な写真がアルバイト店員から投稿されたそば店が閉店するなどの被害が相次ぎ、「バカッター」なる用語まで誕生した。

 ただ、この時点ではいわば「承認欲求」に基づく思慮のない投稿に過ぎなかった。潮目が変わるのはその2年後あたり。動画配信が注目を集め始めた2015年、「ドローン少年」の登場からだ。

ドローン少年」とメディアに名付けられた少年は、自らの動画配信のため、殺人事件の容疑者の自宅に押しかけたり、国会などにドローンを飛ばそうとしたりした。長野県善光寺ではドローンが式典中に落下。東京・浅草の三社祭でも同様に落下して威力業務妨害の疑いで逮捕される事態にまで発展した。

 ドローン少年がこれまでのバカッターと異質だったのは、自身のホームページに銀行口座の番号を公表し、動画を気に入った視聴者から資金も得ていたことだ。単なる承認欲求を超え、物議を醸す動画を配信することが金稼ぎの手段となっていたわけだ。

 へずまりゅうこと原田容疑者の「迷惑系」動画はまさにこの延長線上にある。YouTubeという大手のプラットフォームを利用しているだけに集金力も桁違いだ。ただ、原田容疑者の言動を注意深くみると、その目指す先は単なる再生回数に応じた広告費稼ぎだけにとどまらないようにもみえる。

堀江貴文さんの本を読んで来た!人とは違う逆転の発想

 原田容疑者の野望を読み解くつぶやきがある。

YouTubeの広告だけじゃ生活はできない!これだけでかい媒体なんだから俺は自分を売名するための場所でしか思ってない!そこから様々なビジネスに繋げられるしな!俺は堀江貴文さんの考えとかが好きで昔から堀江さんの本を読んで来た!人とは違う思考や逆転の発想!〉

 2020年5月11日、ちょうど冒頭のシャツの偽物騒動動画を配信して間もないころの原田容疑者の投稿だ。

 原田容疑者の投稿はある意味で正しい。合計1千万人以上のフォロワーのいる著名ユーチューバーヒカキンなど、現在のユーチューバーは動画再生回数以外での収入を増やしているからだ。

 ヒカキンなどはボタンを押すだけでヒカキンの台詞をしゃべったり、マイクを通せばヒカキンの声に変わるおもちゃまでメーカーコラボして発売している。もはや有名であること自体がビジネスに繋がる存在なのだ。無論、ヒカキンの場合は、他人に迷惑をかけるようなことは微塵もないのは言うまでもない。

 悪名は無名に勝る、とは言うが、留置場からは何も発信できないのも事実。YouTubeからも配信を止められて久しい。へずまりゅうこと原田容疑者は、その野望を実現する手段を持っているだろうか。

(末家 覚三/Webオリジナル(特集班))

へずまりゅうツイッターより