鳥にも共感力があり、仲間を思いやる

鳥にも共感力があり、仲間を思いやる /iStock

 他者に共感し、思いやりを示すのは人間だけではない。人間と長い間暮らしてきたはもちろん、ネズミだって仲間が傷つくと悲しくなることがわかっている。

 我々が思っている以上に動物は、仲間に寄り添い、何とかしてあげようと思う気持ちがあるようだ。

 そしてそれはある種の鳥も同様だった。常に仲間がどのくらいエサを食べたのか気にしており、あまり食べることができなかった仲間がいると、自分の餌を分け与えるのだという。

 「鳥は他者の立場を考慮して判断をしているようです。つまり共感を抱いているようなのです」と、オランダ・ユトレヒト大学の生物学者ヨルグ・マッセン氏は話す。

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他者に共感し、助けようとするのは人間だけではない

 かつて、他者を助けるという行為は、人間ならでは行動だと考えられてきた。しかし今や、それは人間だけでなく、社会性を持つ霊長類や哺乳類、より最近では一部の鳥類の仲間にも見られる行動であることが明らかになっている。

 ただ、そうした社会的な行為をうながす認知機能上の土台となっているものが何なのか、今のところよく分かっていない。

 はたして、単純に本能にしたがって行なっているだけなのだろうか? それとももっと柔軟で、相手の立場を気にかけた結果、行われていることなのだろうか?

お腹を空かせた仲間を見たオナガは、自分の餌を分け与える

 この疑問を明らかにするべく、マッセン氏らは「オナガ」というスズメ目カラス科の鳥に大好物のイモムシをたっぷりと与えるという実験を行なった。

 だが、エサをもらえるのは1羽だけで、もう1羽にはエサを与えない。このとき、お腹を空かせた仲間を目にしたオナガは一体どのような行動をとるだろうか?

 するとオナガの行動は仲間がエサもらえたかどうかで変わったという。仲間が食べているのかどうかを観察し、仲間がお腹を空かせていた場合は、自分のエサを分け与えることが確認されたそうだ。

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Pixabay

オスとメスの違い


 こうした行動はオスとメスの両方で見ることができた。だが面白いのは、両者の行動はまったく同じではなかったという。

 オスの場合は、必ず相手にエサを分け与えたという。だがメスでは、多くの場合は与えたが、そうしないこともあったのだ。

 こうした違いについて、「自己アピール」をするかどうかが関係していると、研究グループは推測している。

 つまりオスの場合、「ほら、ボクってこんなに気前がいいんだよ!」ということを周囲にアピールしようとするために、メスと行動の違いが生じると考えられるのだ。

オナガは相手の境遇に立って行動している

 オナガは仲間からエサをせがまれたときの方が、よく分け与える傾向にあったという。

 しかし重要なのは、せがまれなくてもエサを分け与えたということだ。このことは、オナガが仲間からの要求がなくても相手の境遇を認識している可能性を示唆している。

オナガは行動を決定する際に、相手の立場に立っていると思われます。人間で言う共感のようなものを示している可能性すらあります

 自然界では、子供を協力して育てる種は、お互いに助け合う強い傾向があることが知られている。

 それは人間も同様で、まだ狩猟採集生活を行なっていた頃は村全体で子供を育ててきたし、現在でも子供の面倒は社会で見るものという考え方がある。

 「私たちは子供を集団の中で育てます。そのために私たちは社会的になり、協力できるようになるのです。同じことがオナガでも観察されました」と、マッセン氏は説明する。

この研究は『Scientific Reports』(9月30日付)に掲載された。

Azure-winged magpies’ decisions to share food are contingent on the presence or absence of food for the recipient | Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-020-73256-0

References:/ written by hiroching / edited by parumo

 人間界では、特にネット上で、他者の気持ちを想像することができなかったり、自分のことは棚に上げ、まったく無関係の他者を責めるといった、共感力の低い言動や行動が多く目につく。

 だが、果たしてそれは、共感力の低い人が増えたからなのだろうか?実はそうではなく、共感力の高い人はあえて声を上げないだけなんじゃないかとも思う。他者の気持ちになって考えられる人は、何かを発言することで誰かを傷つける可能性を配慮しているからかもしれない。

 動物界でも人間界でも一定の割合(少数)で育児放棄が存在する。種を保存させていく上でそういった少数派の存在も必要悪なんだろうけれど、その割合が増えると生態系を維持するバランスが崩れてしまう。

 そう考えると、共感力の低い発言が多数派のように目立ち、バランスが崩れてしまっているように見えるネット上で様々なトラブルが起きているのも、納得がいく話ではある。

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52295665.html
 

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