【豊永阿紀インタビュー|前編】怒涛の連勝街道を走る福岡、公式アンバサダーが見た好調の要因は?

 アビスパ福岡は現在、12連勝とクラブ記録を更新し続け、ついにJ2リーグ第27節終了時点で首位に立った。リーグ優勝でのJ1復帰が現実味を帯びるなか、福岡・博多を拠点とするアイドルグループ「HKT48」のメンバーとして活動し、アビスパ福岡の公式アンバサダーも務める豊永阿紀さんに、絶好調のチームの印象やJ1昇格への熱い思いを訊いた。

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――アビスパ福岡は、9月5日の第17節レノファ山口戦(2-0)から破竹の勢いで連勝街道を走っています。一時は17位まで順位を落としたなかで、今季ここまでの戦いをどのように見ていますか?

「序盤戦は少し苦しい戦いが続いていて、正直不安もありました。そのなかで、クラブ記録の11連勝(16日の取材時点/18日に12連勝まで更新)ということで、チームとして殻を破ったというか、壁を一つ突破した感じがあって、アビスパの戦いを見るのが楽しくて仕方ないです」

――10月4日の第24節ギラヴァンツ北九州戦(2-0)では、アビスパ福岡公式アンバサダーとしてスタジアムへ応援に駆け付けました。新型コロナウイルスの影響が長く続いたなか、約1年ぶりの現地観戦はまた格別だったと思います。

HKT48加入後も含めて、今回ほど観戦間隔が空いたことはなくて、サッカーが本当に恋しかったです。スタジアムに行けない間はずっとDAZNで試合を見ていましたが、空気感を直接味わえるのはやっぱりスタジアムの特権だと思います。キックオフホイッスルが鳴って、ボールが動き出した瞬間、正直泣きそうになりました(笑)。このご時世だからこそ、『私、こんなにサッカーが好きだったんだ』と再認識できましたし、ギラヴァンツ北九州との“福岡ダービー”では、9連勝とクラブ記録更新の場に立ち合うこともできて幸せでした」

――豊永さんから見た今季のチームの特徴は?

「私の印象ですが、長谷部(茂利)監督に代わったなかで、完全移籍の選手、期限付き移籍で加入した選手が良い刺激になって、これまで在籍していた選手の皆さんもプレーがさらにアップデートされていると感じます。FWフアンマ(・デルガド)選手(←大宮アルディージャ)、FW遠野(大弥)選手(←川崎フロンターレ)が先頭に立ちつつ、若い選手たちのエネルギーあふれるプレーがチームの活力になっているなと。

 今は、守護神のセランテス選手が試合に出ていません。GK村上(昌謙)選手がずっとゴールを死守してくださっているのも大きいと思います。守備陣が相手チームをシュートまで持っていかせないくらい安定していて、失点が大きく減りました(27節終了時点で20失点はリーグ最少)。これまでは一瞬の隙を突かれてカウンターを受ける場面もありましたが、連勝期間は何が違うんだろうと私なりに考えた時に、監督がよくおっしゃっている『相手にボールを渡さない』意識がチーム全体に浸透して、さらに進化したと感じます」

終盤戦で期待するキーマンは、“キング”城後、大怪我を乗り越えた石津、ベテラン鈴木

――今年プロデビューした21歳の遠野選手は、新加入ながらフアンマ選手と並ぶチームトップタイの7ゴールを挙げる活躍を見せています。

「豊富な運動量でチームを勢いづけてくれるという意味では、昨季その役割を担っていたのはDF石原(広教)選手だったと思います。石原選手が(湘南ベルマーレに)移籍したなかで、同じスタイル・熱量を持った遠野選手が来てくれたということで、いてくれるだけで安心感があります。点を取るんだという意欲はもちろんですけど、どうやってシュートにつなげるのかを考えているように思うので、見ていてすごく面白いです。周りの選手の皆さんも、遠野選手につなげたら次の動きができると分かっているんだろうなと感じます」

――今季は新型コロナウイルスの影響で、特殊なレギュレーションが採用され、J1昇格のためには2位以内に入る必要があります。豊永さんが考える終盤戦のキーマンは?

「ここぞという勝負どころでは、アビスパの“キング”である城後(寿)選手にゴールを決めてほしいです。あとは、辛い状況から這い上がってきた姿に元気をもらえるのが石津(大介)選手。昨年、大怪我(右膝前十字靭帯損傷、外側側副靭帯損傷、外側半月板損傷で全治8カ月)で離脱があったなかで、(第25節ヴァンフォーレ)甲府戦でゴールを決めた時は本当に嬉しかったです。もちろん遠野選手、フアンマ選手にも引き続き期待したいですし、そこまでつなげる他の選手の皆さんのプレーも見たいですが、アビスパらしさで言うと城後選手、石津選手、鈴木惇選手が活躍してJ1昇格が決まったら泣いちゃうかもしれません(笑)」

――今後の戦いにおいて、アビスパ福岡に期待したいことは?

「選手の皆さんのプレッシャーにはなってほしくないですが、理想はずっと連勝を続けて、昇格することです。今はクラブ全体が大きな波に乗っていて、J2に降格した時(2017年)から掲げてきた『J2優勝で昇格』の目標に一番近い位置にいると思います。コロナ禍でどうしても落ち込みがちな世の中であることも考えると、ここでJ1昇格を果たせたら、自信になるだけでなく、一つの楽しみとして福岡が盛り上がるはず。J1に昇格した時の喜びは覚えているので、それをまた味わいたいです」

「私はJ1昇格を見据えるアビスパに見合うアイドル、タレントにならなきゃいけない」

――先日にはアビスパ福岡公式ツイッターから、「もうすぐ阿紀ちゃんの誕生日(10月25日)。このまま連勝プレゼントできるようにさらにさらに頑張ります」とのメッセージもありました。

アビスパは本当に温かいチームで、選手の皆さんが私のアンバサダーという立場を受け入れて、ファミリーの一員として迎え入れてくださっています。だからこそ、アイドルがアンバサダーをやっているという状況にとどめるのではなくて、はっきりと目に見える形で恩返しがしたいとずっと思ってきました。私は、たとえどういう状況になっても応援し続ける存在でありたい。選手の皆さんと同じ方向を見ることで、“案内板”じゃないですけど、多くの方にアビスパを知っていただくきっかけを作っていきたいです」

――今年でアビスパ福岡公式アンバサダーも3年目に突入しました。今後挑戦してみたいことや目標は?

「今年はコロナ禍で試合が開催できなかった期間、『オンラインファン感謝デイズ』(リモートによる選手トークショー/5月開催)やインスタライブが実施されて、今までアビスパのコアなサポーターの方しか分からなかった部分を、広く知っていただける機会があったと思います。これからも、私を応援してくださるファンの方を含めて、アビスパを知らない方に、チームの成績、選手、戦い方、ピッチ外の取り組みを発信して、その魅力を少しでも届け続けていきたいです。

 先日のギラヴァンツ北九州戦は9006人の観客動員を記録しました。この状況下では本当に凄いことだと思います。私のファンの方で、『アビスパを好きになって来たよ』という声も聞くことができて、あの人数の中に加わっていると思ったら、少しは力になれているのかなと感じました。最近はアビスパのサポーターの方が私の活動も応援してくださっています。アビスパHKT48は同じ福岡を拠点とするクラブ・グループなので、もっと関係深く、一緒に盛り上げていけたらいいなと思いますし、私はJ1昇格を見据えるクラブに見合うアイドル、タレントにならなきゃいけない。クラブの力になれる価値のある存在でいたいと思います」

[PROFILE]
豊永阿紀(とよなが・あき)/1999年10月25日生まれ、福岡県出身。2016年、HKT48の4期研究生となり、17年11月にチームHへ昇格。中学2年生の時にアビスパ福岡の試合を観戦したのがきっかけで、スタジアムのゴール裏で応援するほどの熱狂的なアビスパサポーターとなる。18年は「ハチ祭り」公式アンバサダーを務め、アビスパ福岡公式アンバサダーにも就任した。現在は海外サッカーも勉強中。(Football ZONE web編集部・小田智史 / Tomofumi Oda

「HKT48」の豊永阿紀さんがアビスパ福岡への熱い思いを語った【写真:(C)Mercury】