昨年、世間の関心を集めた「老後2000万円不足問題」。そもそも2000万円という金額の妥当性に疑問を投げかける識者もいる。『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』の著者でファイナンシャルプランナーの深野康彦氏は、その理由を説明する。

2000万円というのは、金融庁総務省の『家計調査年報2017年』というデータをもとに、高齢夫婦無職世帯の月々の支出が実収入より約5.5万円多い赤字家計である数字を使用して、これが今後30年続く場合の不足金額を切り上げ算出したものです。調査のために偶然選ばれた世帯の平均値なので、年によって不足額はかなり上下します」

 支出の内訳や医療費の見直しにより、真の必要額を1300万円に抑えることも可能だという。では、その1300万円をどう稼げば良いのだろうか?

◆老後資金不足を解消!1300万円はこう稼げ

 自らもアラフィフ世代である2人の識者は、40~50代の環境が厳しいことは認めながらも、「あきらめる必要はない」とアドバイスする。

 経済アナリストの中原圭介氏は「年金だけでは足りないことは明らかなので、まずはできるだけ長く働くことを前提に考えていきましょう」と言う。

「企業は必ずしも、年齢のみで人材価値を判断するわけではありません。必要なスキルを持つ人材は何歳でも重宝されます。中高年になってからの学び直しも心配は不要です。新しいスキルを習得するハードルは、AIやVRなどの普及で着実に下がっています。例えば、すでに外科医向けにVRを使った手術シミュレーターが実用化されていますが、近い将来、あらゆる領域でこうしたコンテンツが登場し、意欲のある人が技術を身につけるハードルは、劇的に下がるはずです」

 テクノロジーと競争するのではなく、うまく活用せよと中原氏は説く。

スキル選びは需要が供給を大きく上回るものを選ぶのが手堅い戦略です。例えば、建設現場の鉄筋工は職人不足が慢性化しており、公共工事の労務単価はここ10年で50%以上上昇しています。需給のミスマッチを見つけ出して技術を磨けば、長く安定的に稼げます」

パートでもよいから妻に働いてもらう

 一方、経済評論家の加谷珪一氏は、これからは夫婦で力を合わせて「明るい老後」を勝ちとる必要があると述べる。

「妻が専業主婦なら、パートでもいいので働いてもらいましょう。すでに共働きなら、夫婦でなんらかの副業を始めるのがおすすめです」

 現実に不足する1300万円の老後資金を50歳の人が15年で準備するなら、預貯金で月々7.2万円を積み立てていく必要がある。月7万円は厳しくても、投資信託を使った積み立て投資で年利4%で運用すれば5.3万円で用意できる計算だ。70歳まで働いて20年かけられるなら、月3.5万円の積み立てで間に合うことになる。

「夫婦が協力することで、熟年夫婦の仲が改善するという思わぬ効果もあります。最初はフリマアプリを使った製作物の販売などでもいいので、まずは奥さんとアイデアを出し合ってみては?」(加谷氏)

 ただ勤め上げるだけでは“明るい老後”などやってこないと肝に命じるべきだ。

▼明るい老後の3か条

①できるだけ長く働き続けるべし
②新技術を味方につけて積極的に学ぶべし
③共働きや副業で収入を増やせ

【深野康彦氏】
ファイナンシャルプランナー。1962年生まれ。大学卒業後、クレジット会社を経て独立系FP会社に入社。その後、独立して現在のファイナンシャルリサーチを起業。FP業界31年目のベテラン

【中原圭介氏】
経済アナリスト・経営アドバイザー。大手企業への助言を行う傍ら、執筆・セミナーで経営・経済教育にも力を入れる。近著に『定年消滅時代をどう生きるか』

【加谷珪一氏】
経済評論家。日経BP社、投資ファンド運用会社を経て独立。メディア連載、番組コメンテーターほか、億単位を運用する投資家の側面も。近著に『日本はもはや「後進国」』

取材・文/伊藤綾 猪口貴裕 栗林 篤 つまみ具依 南ハトバ 森田悦子 イラスト/神林ゆう

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