改めて本格的なてこ入れが必要なのではないか。
日本学術会議の問題です。繰り返し、6人任命拒否の理由や背景は、きちんと説明される必要があります。
10月21日には、与党のプロジェクトチームに、吉川・黒川・大西の元学術会議会長を務められた3氏が出席(https://www.tokyo-np.co.jp/article/63252/)、6人の任免問題ではなく学術会議そのものの改革について議論されました。
私の考えは基本、完全にここでの議論、つまり私自身がお手伝いさせていただいた吉川・黒川両先生の基本方針と一致することを以下でも記しているつもりです。
ただ当事者として、「無給相当が適切」うんぬんなどなど、ややはっきりした物言いになっているとごは理解ください。
第22~23期と会長を務められた、大西隆・東京大学名誉教授が明晰なロジックで指摘しておられる通りであって、遵法的に物事が進められる必要があります。
同時に「学術」サイドからの主張には、正直、首をかしげざるを得ないものも少なくありませんでした。
例えば、「第1期から今まで、学術会議がどれだけ提言を出してきたか見てほしい」という主張があったのですが・・・。
いったい、それを誰が書いたと思って言っているのでしょうか。自分自身で手を動かして、稿を起こした学術会議会員がいったい何人いるのか、私は率直に疑問を持ちます。
新人が62、63歳、すでに定年を過ぎて「名誉教授」などになっている、完全にアームチェアで「よきに計らえ」が身についた人たちが「新人」というのが、少なくとも私が最初に深くコミットした、第19期学術会議の現実の姿です。
それが抜本的に変わったとは到底思えない。そもそも今期、第25期の学術会議会員は2020年8月に推薦されたというのですが・・・。
今年の8月ですよ。この、コロナで日本全国がこんな状態の。
例の6人を含む105人の顔ぶれを見直してみたのですが、およそ「新型コロナウイルス感染僧対策シフト」で、強力な政策答申が出せるような「コロナシフト」が工夫されたような形跡は、およそ見当たりませんでした。
百年一日のごとき、というか71年一日のごとき、社会の激動とは無関係、「泰然自若」とした「学術界の最高権威」づくりは感じるのですが・・・。
要するに、即効性のかけらも見いだせない。還暦を過ぎて新人というメンバーは、六本木の総会などには手ぶらでやって来て、発表は肘をついて聞いてる人も珍しくない。
その場での発言は雄姿を見るのですが、何か持ち帰って、幾日も徹夜して準備して、まる1か月程度は余裕でつぶして提言を書く会員が果たしてどれだけいるのか。
仮に持ち帰っても、大先生の場合、一族郎党が支えるということがあります。
その場合、働いているのは、その一族郎党であって、彼ら彼女らに学術会議から俸給も出なければ、その名が記されることもない。
「死して屍、拾うものなし」というのは、昔の時代劇のナレーションですが、それくらい「ショーワ」な体質を引きずっている。
それが「日本学術会議」の現実の姿です。
今回、最初から記すとおり、6人の拒否は下品なことをしたものだと思いますが、この好機を逃すことなく「解体的再編」を学術会議が自ら率先して、胸に手を当てて謙虚に推進する@「自浄作用」が必要不可欠であると思います。
再生に不可欠な「五か条の御誓文」
「学問のジユ―」も「軍事ケンキュ―」も「中国のなんちゃら計画」も無関係で、ニュースの種にもならないかもしれない。
でも日本学術会議を本当に腐らせているガンを根治する5つのポイントを、以下に整理してみます。
どこかでデモ行進か何かやったようで、参加した大学院生へのマスコミのインタビューというものをネットで目にしましたが、今後、知の担い手になるにはあまりにもお寒い、地に足のつかない「べき論」に終始していて、暗澹たる思いを持ちました。
最初に5つのポイントをまとめて記し、各々の詳細を補いましょう。
1 会員は無報酬の名誉職とするべし(財務の不公正を正す)
2 知財を搾取しない。貢献した個人に還元するべし(知財の不公正を正す)
3 研究者人口を反映した正しい人員構成とすべし(学術界の代表としての不公正を正す)
4 人類が直面する喫緊の課題に即した柔軟な組織運営とすべし(知の府の動脈硬化是正)
5 正会員の定年は60歳以下とすべし(名誉職老人会からの脱却)
この5つができなければ、学術会議の何のという以前に、存在自体が迷惑なお達者クラブでしかありません。
順を追って見ていきましょう。
1 会員は無報酬の名誉職とするべし(財務の不公正を正す)
連中には歳費が出ていたのですね。この20年間ほど、私一人がこの会議に関連して自腹を切って負担した金額だけで100万円では全く収まりません。
交通費、細かな雑費から、汗を流してくれた若い連中に一席設けるようなお金まで、すべて「ノブレス・オブリージュ」と得心して、現役教授陣の私たちが負担してきましたが・・・。
制度的には「交通費くらいは出してやっても」となるのかもしれませんが、我々を呼びつける場合、自腹で交通費も負担させて当たり前と思っているトンデモ権威ですから、この際、日当など言語道断、交通費も自腹で、完全無報酬、出血して役に立ちたい、という人間だけでやったらよろしい。
完全無報酬のクリーンな組織にすべきです。学会などは、みな会費を払って維持しているわけで、それがないだけでも天啓と思うべきではないでしょうか。
2 知財を搾取しない。貢献した個人に還元するべし(知財の不公正を正す)
学術会議の「提言」やら「答申」やらには、真の執筆者の主語がありません。また政策答申にされてしまうと、著作権がありません。
つまり、誰かの権利を干犯して成立している。知的寄生虫のごとき存在、それが学術会議の本当の姿です。
考えてみてください「クラスの全員で考えて決めましょう」なんて言って、全員が手を動かしますか。自分の手柄にもならないのに。
結局、少数の人間が全負担を負って、99%はその上に載ってるだけ。
学術会議の場合、会員は100%お神輿の上に載ってるだけというケースも珍しくはない気がするのは、私たけの勘違いでしょうか。
やたらと増えた「連携会員」のたぐいや、悪くすれば私のように
「学術会議隠密同心心得条
我が原稿 我が物と思わず
学問の儀、あくまで陰にて
己の業績は伏し、
ご下命いかにても果すべし
なお死して屍拾う者なし」
が当たり前という「ご公儀」ぶりは、いかにも日本の病としか言いようがありません。
3 研究者人口を反映した正しい人員構成とすべし(学術界の代表としての不公正を正す)
これは前回(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/62566)、詳しく触れました。今回6人が拒否されましたが、全員文科系、つまり非常に高率、電気電子の300倍ほどの確率で学術会議会員に選ばれる人たちでした。
なお、前回稿で典拠とした「基礎医学」の構成学会員数が少なすぎるのではないかと、元日本学術会議・基礎医学委員長も務められ、STAP細胞騒ぎの時期には、日本分子生物学会元会長として事態収拾にも尽力された、現東北大学副学長の大隅典子さん(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E9%9A%85%E5%85%B8%E5%AD%90)からご指摘をいただきました。
もともとのリポートの記載ですので、ファクトチェックをお願いしてあります。
こういう建設的なご指摘はいつでも大歓迎ですし、私とほぼ同世代で、20期から22期まで正会員だった大隅さんのような方が現役世代で頑張るから動く。
彼女はご両親とも学究で、学術の正義が服を着て歩いてるみたいなところがあり、私はああいう背筋の伸びた専門人が大好きです。
JBpressも素晴らしい研究者から前向きのご指摘をいただくことができ、とてもよかったと思います。
40代の正会員、委員長だったと思いますので、前回今回の趣旨、「お達者クラブを脱却せよ」を地で行った未来型の学術会議会員が、大隅典子さんご自身であるとも言えると思います。
以下にも改めて記していますが、改革は絶対に必要です。分野構成も現実とかけ離れた古代を踏襲しています。
「文系を減らせ」などとは言いません。
無報酬の自腹強要ですが、建築土木系や臨床医療、AIからデータサイエンスから技術経営から、21世紀に喫緊のテーマを扱い、本当に力があり、かつ学術会議におよそ選ばれない分野の人をきちんと増やして、まともな「日本の研究教育者の代表機関」として、一票の重みを是正しないと、ただただ恥ずかしいだけの既得権益名誉職機関にとどまるだけでしょう。
4 人類が直面する喫緊の課題に即した柔軟な組織運営とすべし(知の府の動脈硬化是正)
先ほども記しましたが、今期(第25期)、新型コロナウイルス感染症のさなかにあって、そんなことはどこ吹く風、全く世情と無関係なメンバーを推薦した「学術会議」。
これが、例えば「日本芸術院」(https://www.geijutuin.go.jp/)のように、浮世と隔絶して芸術を追求する組織であれば問題は何もないかもしれません。
しかし、「日本学術会議」は政策提言を求められる組織です。
コロナシフトも何もない「天下泰平の大先生寄合い」の温存が、今回のようなアクシデントによるとはいえ、白日のもとに晒されたのは事実であって、きちんと対処してもらう必要があります。
5 正会員の定年は60歳以下とすべし(名誉職老人会からの脱却)
前々回の原稿で「定年40歳」と記しましたが、部門や役職によって40歳ルールを入れるとしても、全体としては60歳定年あたりがよいと、当初から思っていました。
学術会議会長は、30代がやるとよいでしょう。
20代で新入会員となったら5年程度経験を積んで、いきなり執行部となる。40代以上は顧問格に退き、60過ぎたら、ちゃんちゃんこを着る世代なのだから「連携会員」として側面射撃で応援する。
そういう節度が必要でしょう。
現在の東京大学総長、五神眞さんが同僚の先生方と尽力した、工学部応用物理学科の運用は、20~30代で准教授、40歳前後で正教授昇任したら、ただちに教室主任など執行部を経験させる運営をしておられると聞いています。
若い人が最初に全体のことを知れば、自ずと自分が何をすべきかも悟ります。
年を食ってから権力争いなどすることもなく、新任でみなが持ち回りでトップを経験、財務からマネジメントまで、教室全体の成立に公共性をもって当たれる、そういう人材育成をしているのだと理解しています。
東大内では稀有なことで、そうした人物能力を買われて、天の声的に大学経営の重責を担われました。
若い人が縦横に力を使い、現実的なステイツマンシップを発揮するべきで、ミクロなポリティシャンは要りません。有害無益です。
権利を言うならまず義務から
日本学術会議に関するほぼすべての議論は、どのような立場、どのような主張の人のものでも、共通して学術会議の「権利」には言及しても、その果たすべき「義務」にはほとんど言及されていません。
そもそも、義務を果たせるだけの体力も、気力も持っているのか。実務経験者として、一言言わせていただきます。
学術会議関係の皆さんは、自分の胸に手を当ててよく考えてみましょう。
本当に手を動かして、義務を果たしてきたと大手を振って言える人が、果たして210人のうち、何人いるのでしょうか。
下手をすると、1期まるまる、ほとんど「よきに計らえ」だけのメンバーということも、あったのではないか。そう私は疑っています。
それくらい高齢で、そもそもやる気がなく、ただ、注文をつけ始めるとあれこれ小姑のようにうるさく、でも会場を一歩後にすると、ご自分で何か引き受けるという人は、パーセンテージが出ないほど少ない。おそらくppmオーダーでしょう。
そういう現実を見るだに、ほとんど解体に近い再生がなければ、まともに機能しないのではないか、と思わざるを得ません。
例えば210人という定員を筆頭に、法改正も必須不可欠でしょう。今回のトラブルを奇禍として、大いに正常化が進むことを期待しています。
(つづく)
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