「三菱UFJ代行ビジネス」の元女性社員(20代)が、セクハラが原因で精神疾患を発症したとして、立川労働基準監督署に労災認定されたことがわかった。代理人弁護士が10月22日、記者会見を開いて明らかにした。

女性は当時入社2年目で、直属の男性上司(50代)から待ち伏せされて自宅の最寄り駅までついてこられたり、「こんな気持ちは家内と出会ってから初めて」と恋愛感情をあらわにされたメールを繰り返し送られたりした。

代理人によると、身体接触のないセクハラを主要な理由とした労災認定は珍しいという。

●駅で待ち伏せ、ストーカー行為も

女性は2016年4月、三菱UFJ信託銀行子会社の「三菱UFJ代行ビジネス」に入社。UFJ信託銀行の証券代行業務の事務を担当していた。男性上司は女性が所属する課の最上位だった。

2018年1月ごろから、食事に執拗に誘われ始め、メールで下の名前を「ちゃん」付けで呼ばれるようになった。

女性は4月初旬に人事課に相談したが、人事次長からは「そんなことをする人じゃない」「考えすぎ」などと男性上司をかばうような返答をされ、相手にしてもらえなかった。

その後、男性上司からのセクハラはエスカレート。会社の最寄駅のホームで待ち伏せされて、女性の自宅最寄駅までついてきて誕生日プレゼントを渡された。

また、メールで「エッチな気持ちからではなく純粋に同じ場所に行きたい」「僕の感情を知った以上、『絶対にありえない』こと?」と海外旅行に同行したいと伝えられた。

女性は7月、病院で「重度ストレス反応」と診断された。労基署はこれらのセクハラに加えて、発症1カ月前に時間外労働が普段よりも20時間以上増え71時間になったことも合わせて、2019年2月8日に業務上災害と認めた。

●「親会社ではこのようなことは日常茶飯事

女性は会見でコメントを発表し、「私が出社ができない状況にまで追い込まれたのは、上司によるセクハラだけではなく、出向してきた人事部の常務や次長、部長などのあまりに不適切な対応が原因」と訴えた。

女性によると、上司や人事課の女性に自宅最寄駅に呼び出され「こんなことで会社に行けなくなってしまうんじゃダメだよ」と会社まで無理やり連れて行かれたり、セクハラ被害を相談しても女性が異動するよう提案されたりしたという。

また、女性は初めてセクハラの相談に行った時、人事部長から「親会社ではこのようなことは日常茶飯事、身体的な接触がなかっただけあなたはマシだ」と言われたという。

蟹江鬼太郎弁護士は「メールに問題があることはその通りだが、会社の事後処理の落ち度を見過ごすことはできない」として、今後、会社側に謝罪と再発防止策などを求めると話した。

●会社側のコメントは

「三菱UFJ代行ビジネス」は弁護士ドットコムニュースの取材に、「コメントを差し控える」とした。

身体接触ない「セクハラ」で労災認定…執拗に食事の誘い、メールでちゃん付け、駅で待ち伏せ