主演・木村佳乃と吉田羊、仲里依紗という3人の“美しい母”の恋愛模様を描く金曜ドラマ「恋する母たち」(毎週金曜夜10:00-10:54、TBS系)が10月23日(金)にスタートする。3人の母のうち、吉田演じるキャリアウーマン・優子の息子で引きこもり生活を送る大介を演じるのが、本作がドラマ初出演となる新人俳優・奥平大兼(おくだいら・だいけん)。俳優デビュー作となった映画「MOTHER マザー」(2020年)では、初めて受けたオーディションで大抜擢され注目を集めた。「恋する母たち」でも、その類まれな感性を遺憾なく発揮する。

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■ 初演技で大抜擢!

「恋する母たち」は、パートで働くシングルマザー・石渡杏(木村)、バリバリのキャリアウーマン・林優子(吉田)、キラキラのセレブ妻・蒲原まり(仲)という3人の“美しい母”の心を、3人の男性が揺さぶっていく様子を描く物語。彼女たちの心を揺さぶる男性陣には、阿部サダヲ小泉孝太郎、磯村勇斗がキャスティングされた。

そして彼女たちの息子は同じ学校の同級生、という設定。大介役の奥平のほか、まりの息子・繁秋を宮世琉弥、杏の息子・研役を藤原大祐が務める。

奥平は、今年俳優デビューを果たしたばかり。本格的な演技はデビュー作「MOTHER-」に続いて2度目、という超フレッシュな新人俳優だ。

奥平は、2003年9月20日生まれ、東京出身の17歳。東京・渋谷駅でスカウトされ、芸能界入りした。

初めてのオーディションで「MOTHER-」周平役を掴んだ時、演技は未経験。だが、その稀有な才能の輝きは大勢の若手俳優たちの中にあっても埋もれることはなかった。

MOTHER-」プロデューサーの佐藤順子氏は、奥平に惹かれた理由について「その感性にすごく驚かされた」と振り返る。

「周平と同じ年頃の数多くの役者さんにオーディションでお逢いしましたがイメージに合う方がおらず、最後に飛び込みで『演技経験はない新人ですが』と言われてお会いしたのが奥平さんでした」「はじめてオーディションでお会いした時、彼しかいないと確信しました」と佐藤P。

撮影時についても「撮影を重ねるごとに良くなり、多くの奇跡的なシーンを撮影する事が出来たと思いますし、まるで奥平大兼の役者としての成長をドキュメントで観ている様でした」と語っていた。

■ 「自然と周平の気持ちになれた」

それほどまでに奥平が光を放つ理由は、「MOTHER-」脚本・監督を務めた大森立嗣氏の言葉から推察できる。

「彼が偉かったのは、演技の中で嘘をつかないことをやり通せたこと。素直だからこそ、嘘をつくのは嫌だという感覚が本人の中にあって、嘘をつかないためには自分がそこでどういう気持ちにならなければいけないのかという作業を、撮影中の彼は常にしていたと思います」と大森監督。

決して表情や仕草だけを取り繕うのではなく、心の中までその役柄そのものになり代わって同じ気持ちを体感する。それを初演技にしてやってのけたのだという。

奥平自身、「MOTHER―」で印象深かったシーンを問われ、こう答えている。

「お母さんと並んで橋を歩くシーン。周平に決断が求められる場面で、ワークショップでも事前に練習をしていたんですけど、全然うまくいかなくて。悩んだままだったんです。でも本番に臨んだら、長い沈黙の中でポツリと言われるお母さんからの言葉が、すごく重く入ってきて。さらに自分たちの目の前を歩いている冬華(浅田芭路)を見たら、『もうやるしかないんだ』って自然と周平の気持ちになれたというか。撮影の中で一番、何も考えずに素の感情に任せてセリフを言えたシーンなのかなと思いますね」。

そんな“素直さ”は、共演した長澤まさみからも絶賛されている。奥平の演技について、長澤は「感じたことや思ったことを素直に反応してくれたので、今回、私はとても助けられていたように思います。そこで生まれた感情に大きく揺れ動く姿と対峙することで、自分も素直に演じることができました。お芝居は、その瞬間瞬間の感情を表現することが大切だと改めて感じさせられました」とコメント。その言葉には、同じ俳優としての敬意すら感じられる。

■ 大介役は「最初はどう演じていいかわからなかった」

初演技でこれだけの大役を立派に果たし、奇跡の新人俳優として注目を集めた奥平だが、本人は「映画が公開された後はたくさんの方に『見たよ』と言っていただいて、うれしかったです。ただ僕自身はまだ正直、自分が役者だという自覚はあまりなくて。まず役者っていうもの自体を理解できていないと思うんです」と、少々戸惑い気味。

そんな中、再びオーディションで射止めたのが「恋する母たち」の大介役だ。

あるきっかけから“引きこもり”になってしまった大介。「話数を追うごとにいろいろな感情や表情が出てくる役なので、最初はどう演じていいのかが全く分からなくて。大介と同じような境遇の子が描かれている他の作品を見て、勉強してから現場に入りました」と、準備して撮影に臨んだ。

「前回の『MOTHER』では分からないことはすぐに監督などに聞いていましたけど、今度の現場でもそれが通用するとは思っていないですし、何でもかんでも質問しちゃっていいというものではないと思うので。まずは自分でしっかりと考えていって、その上で『自分はこうだと思うんですけど、合っていますか?』という感じで確認しながら演じていっています」と、成長ぶりものぞかせる。

そんな奥平を、“母”役の吉田も高く評価している。

「恋する母たち」制作発表会見で吉田は「セリフを真っすぐ私に届けようとしてくださるので、彼とやるシーンはセリフが突き刺さるんですよね。お芝居だとは分かっているんですけど、母として悲しくて、切ない気持ちにさせてもらっています」と、その演技を絶賛した。

吉田も、直近のインタビューでは「少しずつ“こういうトーンで大介を演じればいいんだな”というのが見えてきた気がしています」と語るなど、手ごたえも感じつつあるようだ。

度胸のよさも、奥平の大きな強み。「MOTHER-」の完成披露イベントでは、初めての舞台挨拶ながら「すごく緊張するのかなと思っていたら、考えていた以上に緊張しなくて、困っています(笑)」と大物ぶりを発揮した。

特技は幼少期から12歳まで打ち込んだ空手で、初段の腕前。2012年全国武道空手道交流大会「形」優勝、2013年全国武道空手道交流大会「形」3位、2014年全国武道空手道交流大会「形」準優勝の実績を持つ。空手で身につけた精神力、全国大会でも実力を発揮してきた集中力が、大一番でもあがらない強さの秘訣なのかもしれない。

「お芝居はすごく楽しいです。ただやっぱり自分が役者であるという自信はないし、『これで勝負していけるんだ』という確かな武器もないので、今はとりあえず勉強していくしかないなと思っています」と、インタビューでも真摯に語った奥平。そんな17歳の大器の瑞々しい演技に注目したい。(ザテレビジョン

「恋する母たち」 (C)TBS