性暴力を受けて妊娠し中絶を希望したら、医療機関から加害者の同意を求められる――。

人工妊娠中絶に関する問題で、厚労省が母体保護法の条文について「強制性交の加害者の同意を求める趣旨ではない」と見解を明らかにした。

母体保護法は、「性暴力」による妊娠の時は中絶を認めている(第14条1項2号)。中絶をおこなう際には原則として医療機関側が「同意書」を求める運用となっているが、一部の医療機関で、性暴力被害者の中絶をおこなう際に「加害者の同意」を求める実態が明らかになっていた。

さらに、厚労省はこの14条の解釈に関する通達を24年ぶりに改正。性暴力による妊娠か医師側に厳格な確認を求めていたが、表現をやや緩めた。

この問題を指摘してきた上谷さくら弁護士は「今回の改正は、表現が緩和された点は評価できますが、がっかりしたというのが正直なところです」と話す。

「強制性交の加害者の同意を求める趣旨ではない」

人工妊娠中絶は、母体保護法で認められる条件が定められている。

原則として、身体的、あるいは経済的な理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるものか、それ以外でも性暴力(母体保護法第14条1項2号「暴行若しくは脅迫によって又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫」)による妊娠の時は中絶を認めている。

また、母体保護法では、中絶に際しては「本人及び配偶者の同意を得た場合に人工妊娠中絶ができる」と定めており、実施する際には原則として医療機関側が「同意書」を求める運用となっている。

ことしの夏、犯罪被害者を支援する弁護士らにより、性暴力被害者が中絶を希望した際に「性暴力加害者の同意」を求める医療機関が一部あることが明らかになった。弁護士らは6月26日、日本医師会に対し、適切な対応と実態調査をもとめる要望書を提出した。

厚労省は8月、日本医師会の照会に回答する形で「母体保護法第14条1項2号は、強制性交の加害者の同意を求める趣旨ではない」と見解を示した。

母体保護法の厚労省通達、24年ぶりに改正

これにともない厚労省10月20日、母体保護法の施行に関する通達を24年ぶりに改正した。

中絶が認められる「性暴力」のケースについて、1996年9月25日に出された厚生労働省の通達は「この認定は相当厳格に行う必要があり、いやしくもいわゆる和姦によって妊娠した者が、この規定に便乗して人工妊娠中絶を行うことがないよう十分指導されたい」と記載していた。

本当に性暴力によるものなのか、医師が認定するよう求めるような内容だったが、今回の改正は「この規定により安易に人工妊娠中絶を行うことがないよう留意されたい」と改めた。

厚労省は取材に「どういう者のことを指しているのか分かりにくいと考えたため改正したもので、特に考え方が変わったということではない」と話す。

「二次被害が起こる」

通達が改正されたことは第一歩だが、「安易な中絶」をどう判断するのか課題は残る。

上谷弁護士は「医療に性被害かどうかの判断を委ねるべきではありませんし、二次被害が起こるであろうことが容易に想像できる」と批判。さらに「加害者の同意を求める趣旨ではない」という見解についても、「禁止事項にしなければ意味がない」と指摘する。

「医師が加害者の同意を求めているのは、後から訴えられるのが嫌だから、と聞いています。その気持ちがある限り、『加害者の同意は求められてはいないが、念のため同意をとっておこう』という心理は働くと思います」

性暴力による中絶「加害者の同意は不要」厚労省が見解 24年ぶり通達改正も残る課題