学生達の反政府デモにより、10月15日より緊急事態宣言が発令されたタイ。首都バンコクでは公共交通機関ストップするなど、コロナの非常事態宣言すら解除されていない事態に加えてさらなる混乱が広がっている。タイのプラユット首相は「政府はすべてのタイ国民が抱える問題に耳を傾け、解決に向け努力する」と対話を呼びかけているが、収束の見通しは見えない状態が続いている。

 そんな中で「正直、寒い目で見ていますね」と語るのは、バンコクで暮らす日本人男性だ。デモを「寒い」と語るのには一体、どんな理由があるのだろうか。

◆まるで『渋谷ハロウィン

「これまで何度かタイのデモは経験してきたのですが、今回に関しては冷めた目で見ています。たとえば、昨年行われていた香港の民主化デモは『逃亡犯条例改正案撤回』や『普通選挙の実現』などを含む五大欲求の達成を目的に若者達が命をかけて警察と衝突していた。しかし、今回のタイのデモに参加している学生達からはそういった思いがまるで感じられない。

 もちろん、中には本気で政権を変えたいという者もいるんでしょうけど、大半は集まって騒いでいるだけ。よく見かけたのは黒い服にマスクをして集まっていた若者で、まるで海外アーティストミュージックビデオを真似しているかのよう。日本でいうと普段は大人しい奴らがここぞとばかりに集まってただ暴れている『渋谷ハロウィン』と同じです」(バンコクで暮らす日本人男性)

 男性が、デモで集まる若者達を揶揄する発言の裏側には一体どんな理由があるのか。

◆デモで仕事にも支障が

「実際に警察と衝突して大きなニュースになったのは最初の数日だけ。つい先日の10月20日にはSNSバンコクの主要駅でデモの集会を呼びかけているという情報があったんです。それで交通機関が止まるという噂が流れたので会社からは早退を言い渡されました。しかし、実際に行われたのは某映画を模したような3本指を立てながら国家を斉唱しただけだそうです。

 最初は学生デモとして始まったのですが、今は情報を混乱させて公共機関を止めさせたりするなど、警察や政府に対してただ遊んでいるだけのようにしか見えない。我々もいつ行われるか分からない状態や曖昧な情報に対してイライラしています。

 そんな学生達のノリともいえるデモに警察は放水車などで制圧していますが、それを『ハッピーソンクラン』と水掛け祭りのように騒いでる若者もいて不謹慎にもほどがありますよ。一体、何のためのデモで誰に何を訴えているのか……」

 男性いわく、デモは20時には終わるため、それ以降の時間になると交通機関も動き出して通常通りの夜に戻るという。しかし、デモの影響で繁華街では客足0の状態が続いているとか。

PCR検査をしない状況に不安も

 そんな中、タイに住んで十数年という女性はこのような心境を漏らす。

「これだけの人が集まっているのに、なぜコロナPCR検査をしないかを疑問に感じます。タイ国内では感染者ゼロの報道が続いていますが、ここまで人が集まっていてゼロが続くのはさすがに検査してないのでは……と不安。

 また、コロナに加えてデモと続き、最近は帰国を考える日本人も増えています。長くタイに住んでいても『タイで生活するのは潮時かも』『すべてが収束するまで日本に戻る』という人も。また、コロナテレワークになったことからバンコクを離れて郊外で仕事をしながら月に何度かだけバンコクに出社する……という人もいます。

 私も日本への帰国を考えているのですが、この状態なのでしばらくは難しそうです。郊外への引っ越しは在留届の手続きに加えて、デモの影響で交通にも影響が出ているので予定を組めない状態だし。日本ならコロナやデモがあっても比較的自由に動けるのに、つくづく日本の自由さが恋しくなりましたね……」

 この1週間のうちに多くの反政府デモ隊のリーダー達が逮捕されているが、抗議活動は拡大しているという。男性の言う通り、ただの「若者の悪ノリ」であれば、収束に大きな時間を費やすのは間違いないだろう。観光相が外国人観光客の受け入れを再開すると発表した矢先のデモ。日本人が再びタイに旅行に行けるのはいつか。年内は絶望的なのかもしれない。<取材・文/あろいあろいT>

現在のナナプラザ。客が減っているのがわかる