始発地を真夜中の3時38分に出発するという高速バスに乗ってきました。周囲が寝静まったなかを進みますが、「夜行バス」ではないという、ちょっと不思議な感覚のバス、これほど早い始発のメリットはどこにあるのでしょうか。

最初のトイレ休憩でようやく夜が明ける

都市間を結ぶ高速バスは、朝早くから運行されているものがあります。なかでもとりわけ早い、午前3時38分始発という便に乗ってきました。

その高速バスは、福島県いわき市東京駅を結ぶ「いわき号」です。ジェイアールバス関東新常磐交通東武バスセントラルが共同運行しており、便により発着地が異なりますが、上りの始発「2号」はジェイアールバス関東の営業所(いわき支店)を3時38分に発車、4時にJRいわき駅を出て、東京駅日本橋口までを結びます。

これに乗車すべく向かった3時30分頃のいわき駅に人影はなく、特急「ひたち」のE657系電車が駅構内に5本も留置されているなど、周囲はまさに寝静まっていました。その静寂をかき分けるように、3時50分ころ、つばめマークのバスが到着しました。

バスはいわき中央ICから常磐道に入り、何度か高速道路を降りて停車したのち、東京を目指します。常磐道に入ってもまだ辺りは暗いままでしたが、夜行バスのように車内がカーテンで仕切られるようなことはありません。このバスはあくまで、「昼行」の便なのです。

周囲が明るくなってきた5時40分頃、友部SA(茨城県笠間市)で約10分間のトイレ休憩を挟みました。

その後、常磐道スイスイと進みましたが、首都高6号三郷線に入ると、通勤ラッシュの上り渋滞に巻き込まれてしまいます。予定より遅れて加平出口を降り一般道へ。その後はJR綾瀬駅と東武の浅草駅前を経由し、終点の東京駅日本橋口へは定時7時33分のところ、8時05分頃に到着しました。

ほかにもある「超早朝便」メリットは?

今回の「いわき号」のほかに始発便が早い高速バスを挙げると、たとえば長野駅4時00分発の池袋行き、松本バスターミナル4時20分発の新宿行き、倉敷駅3時50分発の大阪行き、といったものがあります(いずれも2020年10月現在、運休中)。

こうした地方都市と大都市を結ぶ高速バスは、主に地方から大都市へ向かう人の足として使われています。早朝発の高速バスには、たとえば長野であれば新幹線、松本やいわきであれば特急の始発列車よりも早く東京へ着きたい、というニーズがあるのです。

では「夜行」はどうなのでしょうか。この点を以前、長野や松本からの高速バスを運行するアルピコ交通に聞いたところ、片道3時間から4時間の距離では「夜行で行くまでもない」という意識があると話していました。「いわき号」も含め、これらはおおむね、運行距離が200kmから250kmほどの路線です。

ちなみに「いわき号」の東京行きはこの始発以降、およそ30分間隔の運行。対して鉄道の特急「ひたち」は、いわき始発が6時14分で、およそ1時間に1本です。東京駅までの通常運賃はバスが3500円、特急が6290円(運賃と指定席特急券)とバスが大幅に安いですが、所要時間ではバスが約3時間30分、特急が約2時間20分と、特急に軍配が上がります。

競合する特急列車は、大量の人を、より早く運ぶことができますが、高速バスはこれに対し、より本数を多くして利便性を高め、かつ安い運賃で対抗しているといえるでしょう。

いわき駅に到着した東京駅行き「いわき号」。