新型コロナウィルスの経済支援の目玉とも言われた持続化給付金を巡って、不正受給が社会問題化していることはご存じのことだろう。その手口についてはここでは触れないが、申請代行と称して手数料を取る不埒な輩どもが全国で増えている。

◆地元新聞の社員も不正受給に手を染めていた

 中でも沖縄県が不正受給の一番の温床となっており、不正受給総額が少なく見積もっても4億円以上にものぼると地元紙が発表。さらに9月、沖縄県内の2大新聞の1つである沖縄タイムス社の現役社員2人が不正受給を行なっていたことが発覚。政府や米軍に対して批判的な記事が多いことから「反日メディア」とも呼ばれる新聞社の社員が、国の制度を利用して行った不祥事とあって、ネット上では様々な意見が飛び交った。

 事態を重く見た沖縄タイムス社は、9月13日記者会見を開き、同社員2人がどういった経緯で不正受給をするに至ったのかを説明した。まず総務局付40代男性社員は、知人男性から不正申請を持ちかけられ、持続化給付金100万円、緊急小口資金20万円、総合支援資金60万円の計180万円を不正受給。給付金100万円を受け取った際に知人の男性に5万円、税理士事務所に10万円、計15万円の手数料を支払ったという。

 もう1人は関連会社タイムス印刷の30代社員であり、先の40代社員の勧誘により、同じ税理士事務所で小口資金20万円を不正に借り入れた。ともに職業欄には虚偽の職種を明記していた。とにかく、この40代の社員は、社内外合わせて何十人と申請の勧誘をしていたという。当然、この2人は懲戒解雇処分となった。

 事の発端は那覇市内にある税理士事務所が合計1800件の虚偽申請に関与した疑いがもたれ、事務所など複数の関係先が家宅捜索されたことによるものだった。その中で沖縄タイムス社の人間が不正受給していることが判明したのである。言うまでもなく、今回の一件は氷山の一角であり、こういった不正受給は組織ぐるみで全国的に多発している。

1014億円ものカネが舞う沖縄

 それにしても、なぜ沖縄が全国でも群を抜いて不正受給が多いのだろうか。そのワケを説明するために沖縄振興一括交付金の存在を抜きには語れないだろう。令和2年度の沖縄振興予算が総額3010億円で、その中には沖縄振興一括交付金の1014億が含まれているのだが、この一括交付金が曲者とされているのだ。

 一括交付金は平成24年度に創設されて以来、沖縄県が自主的な選択に基づいて事業を実地できるお金として、観光や産業の振興、離島振興や福祉など幅広く活用されている。このカネが魑魅魍魎たちにとっては垂涎の的となっているのだ。

 個人事業者以外による助成金、補助金を申請する場合、分野ごとの応募となるのだが、沖縄県内に会社登記していることが基本条件とされる。県内には中小を含めて約6万7000軒の事業所がある。そのうち、従業員がいない、実態のないダミー会社が数十~数百社あるとも言われているのである。また、年間の移住者が1万8000~2万3000人もおり、そのうち半分が1年以内にUターンしていることを考えれば、流動性が非常に高いことがわかる。

 今の暴力団は暴対法施行されて以来、年々資金源が枯渇しているため、市井が知る任侠の世界観だけでは生きていけない。国から合法的にカネを取ることが一番だと考えた輩たちは、交付金予算が多く、そして審査が甘い沖縄に目をつけているのだ。そう、沖縄には持続化給付金が始まる以前から、助成金にすがる土壌ができあがっていたと言っても過言ではないのである。

◆カネも女も食い物にされる沖縄の現状

 暴力団、半グレの息のかかったダミー会社を沖縄に設立、もしくは会社を持っている移住者を抱き込んで助成金をむしり取る。この実態は、一部の県民にもよく知られていることでもある。事情に詳しい関西在住の人物に話を聞いた。

「沖縄がオイシイというのは、かれこれ10年以上も前から言われていたこと。カネも女も沖縄で仕込む手口が楽なんだよ。まずはカネ。適当な会社をでっち上げるか、休眠会社を買い取って地元で食い詰めてる連中を社員に仕立てる。それで助成金をせしめて後はバックレるだけ。うまく申請すれば、社員の給料も3分の2以上は補助されるから、怪しまれない程度の人数を雇うようにすればいい。事業内容は、イベント会社、観光客向けの沖縄料理屋、テレアポやコールセンターといったような沖縄に多い業種であれば何でもいい。

 観光客向けの沖縄料理屋なんて、経営者が地元のヤツなんてほとんどいないんじゃないかな(笑)。私の知り合いは適当な沖縄料理の店を出して、半年ほどで飛ぶ予定がまんまと当たってしまい、1年ほど続けて東京の外食チェーンに売っ払って助成金と売却益でウハウハだった。

 それと、助成金だけじゃない。生活保護も沖縄はゆるいからこれも食い詰めてる連中を使って不正受給させてピンハネができる。震災で内地から逃げてきた連中なんて、仕事もなくてすぐに食い詰めた。こういう連中を転がすとカネになるんだよ」

 彼によると、風俗関係の女性も沖縄で調達していたという。

「内地の風俗グループがホストクラブを沖縄に作るんだ。ホストはみんな内地でヤリ手の連中だから、沖縄が地元の女をハメこむのは赤子の手をひねるようなもん。あとは売掛(※ツケ)をしっかり作ってから、大阪や名古屋、東京などで提携している風俗に沈めるという寸法。沖縄は狭いから沖縄が地元のコは地元で風俗をしたくないってコが多い。だから、内地で~って言えばすぐに乗ってくる」

◆内地からノウハウを持って沖縄へ

 彼によると今回の持続化給付金の不正受給についても、内地から入り込んだ半グレが大きく関わっていると言う。

「休眠会社やダミーの会社の扱いは半グレや反社勢力にとっては“本業”だよ。SNSを使って受給したいヤツを募って不正受給させる、今度はその不正受給したヤツにマージンを払うからと言って勧誘をやらせネズミ算式に受給したいヤツを増やしていく。オレオレ詐欺マルチのノウハウをうまく組み合わせてる感じだな。こういうノウハウは内地でやってるヤツが作ってる。田舎のチンピラじゃ思いつかないって」

 別段、4億円以上の不正受給額のすべてが、ナイチャー(本土の人間)の仕業というわけでもないが、餌食になっているのはウチナー(沖縄の地元の人)の食い詰めた人だけではない。大学生やごくごくフツーの人たちも手を染めているのである。取材した沖縄のマスコミ関係者は忸怩たる思いで語る。

「ナイチャーが勝手に来て、荒らすだけ荒らして帰る。地元民が怒らないはずがない。国の助成金により飲食店を開業するのは都市圏に比べてはるかに簡単。それもこれも観光産業を盛り上げたい施策から始めたのに、詐欺まがいな行為で助成金をかすめ取る。人間感情として、だったら俺たちもって思うナイチャーが出てきても仕方がないんじゃないですか」

◆沖縄へ渡ったカネは再び内地へ……

 沖縄の地域振興のために創設した沖縄振興一括交付金で内地の息がかかった企業が絡みのはもちろん、公共事業にしてもオイシイところは内地の企業が全部持っていく図式が沖縄ではできあがっている。「そりゃ、やりきれんばっ!」これは県民の悲痛なる声だ。

 とは言え、国からの予算を平気で蝕んでいく土壌が沖縄にあるのは否めない。その原因となっているのは、戦後から続く沖縄に対する国の扱いであるといっても過言ではない。不正受給が沖縄で横行するのは、もはや自然の成り行きなのかもしれない。こうした歪んだ現状はいったいいつまで続くのだろうか。

取材・文/松永多佳倫

【松永多佳倫】
1968年生。岐阜県出身。琉球大学在学中。出版社を経て2009年8月よりフリーランスとなり沖縄移住。ノンフィクションライターとして沖縄の民族、言語等を研究中。他にもプロ野球高校野球の書籍等を上梓。著作として『沖縄を変えた男 栽弘義―高校野球に捧げた生涯』(ベースボールマガジン社)、『史上最速の甲子園―創志学園野球部の奇跡』、『沖縄のおさんぽ』(ともにメディアファクトリー)、共著で『永遠の一球―甲子園優勝投手のその後』(河出書房新社)等