ゲテモノ扱いされたのも今は昔。美容やダイエットにも通じる高い栄養価を誇り、生産効率が高い昆虫が、スーパーフードとして注目を集めている。昆虫食にいち早く目をつけたスタートアップ企業に徹底取材し、あらゆる角度から昆虫食の今を探る!

◆日本に昆虫食元年が到来!ブランド化が成功のカギ

 世界のたんぱく質危機の救世主として食用昆虫に熱視線が注がれているなか、国内でも無印良品をはじめとして大手企業も昆虫食開発に乗り出す動きが出てきている。こうしたトレンドをいち早く察知し、昆虫食開発に先駆けるスタートアップ企業の一つが、蚕=シルクフードに的を絞って商品開発をしているエリーだ。代表の梶栗隆弘氏は「シルクフードは世界で戦える産業」と、構想を語る。

エリーを立ち上げる前は食品メーカーに勤めていたのですが、その頃から将来の代替たんぱく質ビジネスに可能性を感じていました。そして世界で昆虫食に注目が集まっている昨今、日本の環境に適していて、生産効率と量産体制が確立しやすく、味もいい蚕に注目し、本格的に開発に着手すべく会社を立ち上げました。趣味の延長や文化発信でなく、あくまでビジネス目線で勝機が十分にあると思っています」

◆フレッシュな蚕はクリーミーでナッツ系の甘み

 昆虫食開発は、栄養、味、見た目がいいことが前提。とりわけ、“鮮度”にこだわっているという。

「これまで市場に出回っている昆虫食の多くは乾燥させたり、採取してから時間がたっているものです。蚕も絹糸を取った後の乾燥蛹がほとんど。なので、酸化が激しく独特の苦みやひどいニオイがする劣化した状態です。フレッシュな蚕はクリーミーでナッツ系の甘みがあり、味わいや風味がまったく違います

 ペースト状にすることで応用範囲がグッと広がり、これまでハンバーグシフォンケーキなどの商品を生み出してきた。また、蚕は栄養価も高く、乾燥した蚕3個で生卵1個分に匹敵するのだとか。

「血糖値を下げる作用や免疫力を高める整腸作用、そしてアンチエイジング効果などが見込める成分も豊富に含まれています。今は、蚕オリジナルの機能性成分を研究中。見た目と鮮度、そして蚕オリジナルの機能性成分が揃ったとき、日本国内でも普及するはずです」

 食卓に、納豆の代わりに蚕が並ぶ日が到来するかもしれない。

◆雇用を生み、経済を回す。昆虫は未来の新しい農業

 高崎経済大学発のスタートアップ企業・フューチャーノートは、コオロギ食品の開発・販売を手がけている。代表の櫻井蓮氏は起業のきっかけをこう振り返る。

「環境科学のゼミでタイのコオロギ養殖農家を訪問したときに、タイの農村部では若者の都市部への流出によって高齢化や過疎化が深刻な問題となっていることを知りました。一方で、食用コオロギの養殖産業が、新しいビジネスとして雇用と経済を支え始めていたんです。“未来の農業”としての可能性を秘めていると感じましたね」

 コオロギは欧米の企業も注目するスーパーフードで、丸ごとパウダー状にしたものは牛肉の2倍以上のたんぱく質を含む。

ビタミンミネラルも豊富なので腸内環境の改善や美容効果も期待できるといわれています

 現在はお菓子を中心に商品を展開しているが、原材料となるコオロギはタイ産にこだわっている。

「タイでは、農家の副業としてコオロギの養殖業が期待されています。私たちが良質なコオロギを輸入して消費を促すことで、過疎化・貧困化が進む農村部の活性化に繋げられればと思っています」

 食糧、貧困問題の解決の糸口となる昆虫ビジネス。日本の地域創生のヒントにもなるといえよう。

<取材・文/SPA!昆虫食研究班 撮影/山田耕司>

―[昆虫食リアル]―


パテの牛肉の50%を蚕に置き換えたシルクバーガーは深いコクと甘みを味わえる