エルグランド、一躍大ヒット車種に
2020年10月12日に2回目のマイナーチェンジを果たした日産エルグランド。
前回のマイナーチェンジは2014年1月のことだったから、6年9か月ぶりのマイナーチェンジということになる。
そもそも3代目となる現行エルグランドのデビューは2010年8月のことだから、10年目という節目のタイミングでのマイナーチェンジということも言えるだろう。
振り返ってみれば、1997年5月に初代エルグランドが登場するまでのミニバンと言えば、人員輸送が第一。
ファミリーで使うことも考慮してシートアレンジなどは考えられていたものの、高級車というジャンルに入るものではなかった。
しかし、エルグランドは余裕の室内空間と動力性能、そして威風堂々としたフロントマスクを持っており、高級セダンに匹敵するモデルとして登場し、一躍大ヒット車種となったのだ。
なお、デビュー翌年には早くも後席スペースをVIP用に改造した4人乗り仕様の「ロイヤルライン」がオーテックジャパンからリリース。当時の日産自動車の社長車としても導入されていた。
このように、一躍大ヒット車種となったエルグランドではあったが、当然ライバルメーカーも指をくわえて見ているだけではなく、多くのフォロワーが後発されたのはご存知の通りである。
後発のアルファードの後塵を拝する
快進撃を続けるエルグランドに待ったをかけたのが、トヨタ アルファードだ。
エルグランドが2代目へとフルモデルチェンジを果たした2002年5月と全く同じタイミングで登場したアルファードは、後輪駆動レイアウトを採用したエルグランドに対し前輪駆動レイアウトを採用し、より広い室内空間を実現していた。
また日本専売車とすることで、多くの日本人が思い描く「高級感」をうまく演出した内外装などを実現。それにより一気にエルグランドの牙城に食い込むことに成功したのである。
2015年には現行型となる3代目へと進化を果たした現行型アルファードは、デビューから5年が経過した現在でもコンスタントに月5000台以上を販売する大人気車種となっている。
一方のエルグランドは2020年に入ってから月平均で300台弱の販売台数であり、アルファードに大きく水をあけられているのが現状だ。
今回のマイナーチェンジで先進安全装備の強化も図られたエルグランド。全車速追従機能付クルーズコントロールや、夜間の歩行者や自転車も検知する衝突被害軽減ブレーキなどが備わるアルファードが未だに一段上手と言わざるを得ない。
また日産得意の電動化技術もエルグランドに限っては投入されていないのが現状で、ハイブリッドも用意するアルファードに分があると言えるだろう。
では、一体エルグランドを検討、購入するユーザーは一体どんな層なのだろうか?
意外? 検討/購入するユーザーとは
今回は首都圏にある日産ディーラーに現在エルグランドを検討、購入するユーザー層について話を伺った。
販売店によると、エルグランドに興味を示すのは従来型のエルグランドに乗っているユーザーよりも他車種に乗っているユーザーが圧倒的に多いとのこと。
また、ライバルと目されるアルファード(および兄弟車のヴェルファイア)と比較検討しているユーザーは意外なほど少ないというのが、予想と異なる点だった。
ではどんな車種に乗っているユーザーが多いのかというと、なんと輸入車。それもBMWやアウディといったドイツ車ユーザーが多いというのである。
そもそもエルグランドは3代目にフルモデルチェンジを果たした際、10cmほど全高を低めている。
そこがファミリーカーとしてこのクラスのミニバンを求めるユーザーからは不評となってしまったわけなのだが、逆に輸入車ユーザーからしてみると、絶妙な全高に映るようなのだ。
前輪駆動となったとはいえ、低重心で安定感のある走りにはもともと定評があったエルグランド。その点が輸入車好きの心を揺さぶるのかもしれない。
そして輸入車に乗っている層ということもあって年齢層も比較的高く、エルグランドをミニバンとしてではなく、ステーションワゴンの延長線上にあるクルマとして検討していることが多い。
普段は2列目までをゆったり使うという使用方法が多いのだとか。
そういったユーザーからするとアルファードは「四角いゴテゴテしたバン」に映るらしく、最初から検討のテーブルに乗らないということなのだろう。
つまり、まとまった台数は望めないものの、エルグランドはコアなユーザーからは未だに高い関心があるということなのだ。
それだけに日産もラインナップから外すことができないのかもしれない。
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