「悪いことをしちゃったな」「迷惑を掛けちゃったかも」とモヤモヤすることはありませんか? ちょっとしたことに罪悪感を抱きやすいタイプや、「気にしなくていい」と言われても申し訳ない気持ちが続くタイプの人は、心がしんどくなりやすいでしょう。

今回は、罪悪感を強く持ってしまう心理とその解消法について解説します。

■「罪悪感」とは?

罪悪感の言葉の意味としては、「罪をおかした、悪いことをしたと思う気持ち」(出典:『デジタル大辞泉』)です。類語には「自責の念」「良心の呵責」「悔恨の念」「後ろめたさ」などがあります。

また、心理的な罪悪感とは、「自分が悪い」「申し訳ない」「自分のせい」などと自分を責める感情を指します。そして、罪悪感があると「自分は罰せられるべき」とか「自分は償わなければならない」という発想がもれなくついてきます。

罪悪感が生まれるメカニズム

罪悪感を抱いてしまう主な原因には、大きく分けて3つの理由があります。

◇(1)「してしまった」罪悪感

「自分が加害者」だと思う場面で生じる罪悪感です。

仕事を例にいえば、「発注ミスをした」「間違ったやり方をした」「自分の言葉で混乱させた」など。

自分がしたことで誰かを困らせた、誰かに迷惑を掛けた、誰かを傷つけたなどの自覚があって、「取り返しのつかないことをしてしまった」と悩みます。

◇(2)「しなかった」罪悪感

次に、「自分が行動しなかったこと」に対して生じる罪悪感です。

こちらも仕事を例にいえば、「準備しておいた方がいいかなと思ったのに準備せず、そのために支障が出た」「上司の勘違いで同僚が叱られているのを助けなかった」「考えれば分かることなのに、気が付かなかった」など。

できたかもしれないのに、行動しなかったことで後悔し、自分を責めます。

◇(3)「自分だけ恵まれている」罪悪感

最後に、「他の人は苦労をしているのに、自分だけ幸せで申し訳ない」と思った時に生じる罪悪感です。

例えば、「みんな残業しているのに、自分だけ定時で帰る」「他の人は大変なのに、自分の仕事だけラク」「自分だけ上司に気に入られて優遇されている」など。

周囲の人が自分と同じように幸せだと思えないことから申し訳なさを感じ、自分の幸せを素直に喜べません。

罪悪感を抱きやすい人の特徴

日常生活の中には罪悪感の種になるような出来事がたくさんあります。ですので、自分だけが罪悪感を抱いていると不安に思う必要はありません。

ですが、起きた出来事にはいろいろな解釈の仕方があるのに、つい罪悪感と結び付けて悩んでしまう人もいます。ここでは、そんな人の特徴を紹介します。

◇(1)自分を責める癖がある

「私がダメだから」「私が不十分だから」と自分を責める癖があると、全ての出来事を「自分のせい」と思います。「今日雨なのは、私が雨女のせい」などが分かりやすい例でしょう。

悪い出来事だけ「自分のせい」で、良い出来事は「自分のせい」だと思わないのが特徴です。

◇(2)責任感が強い

責任感が強いのは良いことです。しかし、本来なら背負う必要の無い責任まで、自分の責任と考えてつらくなることがあります。

例えば、「チームの失敗は、自分のサポート下手が全ての原因だ」などです。

◇(3)自己評価が低い

自分自身への評価が厳しいと、「何もできていない」「迷惑ばかり掛けている」と思いやすくなります。

「自分が貢献できていることや、人に与えているものがある」と自分自身で思えていないと、自分に対して疑いを持ちます。「自分が何か悪い影響を与えていないか」「自分のせいで悪いことが起きるのではないか」と不安になりやすいのです。

◇(4)やれることをやっていない

必要な行動を後回しにしていると、「私は頑張っていない」と罪悪感を持ちやすくなります。

また、「これくらいできて当然」と自分に求めるものが大きいと、理想通りにできないことがあった時、努力不足と感じることもあります。

■強い罪悪感を解消する方法

抱えてしまった罪悪感を手放していくには、「許し」が有効です。自分に対して許す心を持つための具体的な方法を5つ紹介します。

◇(1)素直に謝る

「自分のせいで申し訳ない」という気持ちが強い場合や、「自分が原因でネガティブな結果を招いた」と自覚している場合は、直接お詫びができるなら、素直に謝罪を伝えましょう。ずっと言えなかった「ごめんなさい」を伝えられると、胸のつかえがとれる場合があります。

直接伝えられない場合は、出さなくても良いので手紙を書くことで感情を吐き出してみるのもいいでしょう。

◇(2)客観的に捉えなおす

「私と全く同じ失敗をした人が目の前にいたとしたら」と考えてみましょう。あなたは、その人を許さないでしょうか? 他人に置き換えて考えると、意外と「なんてことない」と思える場合が多いはず。

また、想像したその人に「どんな優しい言葉を掛けようか?」と考えてください。そして、思い浮かんだ言葉を、自分自身にも言ってみましょう。

◇(3)大切にしてくれた人を思い出す

自分を大切にしてくれた人を1人思い出してみましょう。その人に、自分が抱えている罪悪感を懺悔したとしたら、その人はどんなふうに受け止めてくれるでしょうか。その人が掛けてくれる言葉や表情を想像することで、心が許されたような気持ちになります。

ただ、ありのままの自分をその人にゆだねるのをイメージしてみることで、心が軽くなります。

◇(4)今できることをする

罪悪感を抱き後悔をしている時は、心が過去で止まってしまっています。まずは、過去の体験から何を学んだのか、あの経験にどんな意味があったのかを考えてみましょう。

そして、「今」自分にできることを見つけて、実際に行動しましょう。その時できる最善を尽くすことで自分を許せる可能性があります。

◇(5)罪悪感を別の感情に変換する

罪悪感を抱える時、「本当は○○してあげたかった」「もっと○○できたら良かった」けれども「できなかった」と自分を責めています。前提には善意や愛情があって、望むような行動ができないことに罪悪感を抱いているのです。

そんな時は、「なぜこんなに申し訳なく思うのか?」と自分に聞いてみたら、優しい気持ちが自分にあったからだと気が付けるはずです。罪悪感という感情で抱えるのではなく、善意や愛情や優しさなどの別の感情に変換し、自分を許してあげましょう。

罪悪感を抱きにくくするコツ

罪悪感があると、自分を責めて苦しくなります。できることなら、なるべく罪悪感を持たずに過ごしたいものです。

最後に、罪悪感を抱きにくくするコツを紹介します。

◇(1)「おかげさまで」と感謝する

「ごめんなさい」と言う時、自分のダメさや、できなかったことを考え、罪悪感に苛まれやすくなります。一方で、「ありがとう」と言う時は、相手の善意や相手がしてくれたことに焦点を当てています。

つまり、相手に意識が向いている状態では、自分を責めなくて済みます。そこで、「ごめんなさい」を口癖のように使うのではなく、積極的に「ありがとう」「おかげさまで」と感謝するようにしましょう。

◇(2)許し上手になる

自分が誰かに対して「あなたが悪い」「あなたのせい」と思っていると、自分も同じようなことをした時に、人から「あなたが悪い」「あなたのせい」と思われると考えます。

逆に、誰かのミスに「あの状況では仕方がなかったよね」「そんなこともあるよね」と寛容でいると、自分のミスに対しても過剰に自分を責めなくなります。

許し上手になると、同時に許され上手にもなれるのです。

◇(3)迷うなら行動する方を選ぶ

一説には、後悔の75%は行動しなかったことへの後悔だといわれています。行動したことへの後悔と、行動しなかったことへの後悔では、行動した後悔の方が「自分がしたことだから」と気持ちの整理がつけやすいようです。

そこで、罪悪感を抱き後悔しやすい人は、迷った時には行動する方を選択していきましょう。そして、行動できた自分を褒めることを習慣にしましょう。

自分を責めすぎないで

罪悪感は誰もが持つ感情ですが、人によって受け止め方の深刻度が異なります。頻繁に自分を責めて苦しくなるようなら、ひどく自分を罰し過ぎているのかもしれません。

大抵の場合、自分を一番「許せない」と思っているのは自分自身のようです。罪悪感との付き合い方を理解して、自分を責める気持ちを減らしていきましょう。

(大塚統子)

※画像はイメージです

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