―[魂が燃えるメモ/佐々木]―


いまの仕事楽しい?……ビジネスだけで成功しても不満が残る。自己啓発を延々と学ぶだけでは現実が変わらない。自分も満足して他人にも喜ばれる仕事をつくる「魂が燃えるメモ」とは何か? そのヒントをつづる連載第224

「エンリケ」の愛称で知られる小川えりという元キャバクラ嬢がいます。彼女は東海地区で指名数、来客数ナンバーワンを8年間キープし、バースデーイベントでは2日間で1億円を売り上げました。

 彼女がキャバクラで働き始めたのは、学生時代の先輩に「休みたいから代わりに行って」と頼まれて仕方なくでした。お酒の種類も作り方もわからず、「最初はイヤでイヤでたまらなかった」と言います。

 彼女はなぜ嫌でたまらなかった仕事を辞めることなく続けたのか。人は誰かに心を揺さぶられた時に、決断や行動ができるようになります。それが人物の影響です。彼女が影響を受けたのは、初めて指名をもらった時のお客さんです。

 指名を受けた彼女が「学生時代にいじめられていた」という話をしたところ、そのお客さんは親身になって話を聞き、「頑張って」と励ましました。次に彼女が聞き役に回って質問していくと、相手と会話のキャッチボールができていました。この時、彼女は「この世界、けっこう楽しいかも」と感じ、「もうちょっとやってみよう」と考えるようになりました。

 決断や行動について、私たちは理屈で考えがちです。しかし、いくら理屈で答えを出しても、「そうすべきだ」「そうしなければ」と思うだけで、なかなか行動に踏み出せません。

◆自分は他者との交わりで生きている

 それに対して、「あの時、あの人が、ああ言ったから」あるいは「あの時、あの人が、ああしたから」ということがあると、「だから自分はこうしよう」と考えて、自然にアクションが取れるようになります。私たちは決断や行動において理屈よりも、人との結びつきが作り出す心情を重視しているのです。

 彼女はこの「人物の影響」について、とても自覚的です。彼女の著書『日本一売り上げるキャバ嬢の指名され続ける力』(KADOKAWA)を読むと、それがよくわかります

 彼女が小学生だった時に、同じクラスに人気の女子がいました。その女子は可愛いだけでなく愛嬌があり、男子にも女子にも好かれていました。その女子を見た彼女は「あんなふうになれたらいいなあ」と憧れて、話したことのないクラスメイトに自分から話しかけたり、いつも笑顔でいるようになりました。

 また、中学生だった時は素行不良で、先輩に誘われて街のデパートに集まって遊んだりしていました。それが三年生の時の担任が頭ごなしに怒ることなく、たくさん褒めてくれる先生だったことで、「この先生のために毎日学校に来よう」決心しました。

 このように彼女は自分の決断や行動について、誰に影響を受けたのかを細かく覚えています。だからこそ、それが根拠になって人よりも多くの行動が取れるのです。

 彼女は「名古屋の錦に、常識をぶち破るどえらいキャバ嬢がいる」という噂が広まって、多くの人に知られるようになりました。金髪もカラコンもネイルもピアスも色恋営業もせず、歌ったり踊ったり変顔をして、その様子をSNSで配信していたら、それまでキャバクラに来たことがなかった人に来店し、指名数も来客数が増えたと言います。

 そのことについて、彼女は「秘密っぽいイメージキャバクラを、みなさんがエンターテイメントに変えてくださったのです」と表現しています。「自分がキャバクラを変えたのだ」と言わずに、「みなさんが変えてくださった」と表現するのは、彼女が「人物の影響」に対して自覚的であることを物語っています。

 彼女に限らず、成功者が自分の成功要因について、才能や実力ではなく「周りのお陰」と話すことは珍しくありません。それは単なる謙遜ではなく、ありのままを話しているのです。自分は他者との交わりによって存在しています。もちろん、すべての人間関係がポジティブということありえません。大切なのは、どの人間関係に着目して、どんな自分を選択するかです。その繰り返しによって、「自分」はいくらでも変化していきます。

佐々木
コーチャー。自己啓発ビジネスを結びつける階層性コーチングを提唱。カイロプラクティック治療院のオーナー、中古車販売店の専務、障害者スポーツボッチャ」の事務局長、心臓外科の部長など、さまざまな業種にクライアントを持つ。現在はコーチング業の傍ら、オンラインサロンを運営中。ブログ星を辿る」。著書『人生を変えるマインドレコーディング』扶桑社)が発売中

―[魂が燃えるメモ/佐々木]―


※写真はイメージです