戦後初の国産旅客機YS-11」には、見た目や用途、エンジンなどの面でよく似たモデルが多数存在します。まさにそっくりなものや、設計の参考にされたもの、実は共通点のあるものなどを選びました。

実は結構あった「YS-11」のそっくりさん

航空機メーカーが新たな旅客機を開発する際に、最も重要なテーマのひとつが、航空会社側に「路線に投入したい」と思わせるモデルに仕上げることです。そして、もし可能であれば、機体を長くしたり短くしたり、より効率の良いエンジンを搭載したり……といった「発展性」を前もって想定しておけば、その後の航空輸送界の変化にも対応できるでしょう。

戦後初の国産旅客機YS-11」の開発が始まった1950年代後半は、より大型の機材としてジェット旅客機が出現してきた時期でもあります。その一方で、おもに第2次世界大戦中に大量生産されたダグラス社(現・ボーイング)のDC-3、DC-4といった「レシプロエンジン」の旅客機の更新時期が近づいており、その代替機が模索されていました。

YS-11にも搭載され、現在も一般的となっているターボ・プロップエンジンも開発が順調に進み、旅客機に搭載され実用化していました。

YS-11は1962(昭和37)年に初飛行。最大64席を有し、最大離陸重要は最も重い型式で25t、航続距離は最大2200kmです。世界では、角度によっては「YS-11」に見た目、もしくは用途のよく似た旅客機が生み出されています。どのようなものがあるのでしょうか。

アブロ/ホーカーシドリ(Hawker Siddeley、現・BAEシステムズ) HS748

HS748は、1960(昭和35)に初飛行したイギリス製の旅客機です。世界初の実用化されたターボ・プロップエンジンであり、そしてYS-11と同じシリーズとなるロールス・ロイスの「ダート」を2基主翼上に配しており、そういった意味でも、最も「YS-11」っぽい旅客機と言うこともできるモデルです。時代的にも、用途としてもYS-11にそっくりです。生産機数380機、客席数は最大58席、最大離陸重量25tで、約1700kmの航続距離を持ちます。

イギリス以外にもあった「YS-11っぽい」旅客機

イギリス以外でも「YS-11っぽい」旅客機がデビューしています。

コンベアCV240、CV440、CV640

アメリカのかつての老舗旅客機メーカー、コンベアにより造られたもので、レシプロエンジン機のCV240と、その胴体延長型のCV440は、YS-11設計の際におおいに参考にされたとの逸話が残っています。CV440はANA(全日空)が導入するなど、草創期の国内航空会社では一般的に使用されているモデルでした。

よりYS-11に近いCV440は1955(昭和30)年に初飛行。生産機数153機、客席数は最大52席、最大離陸重量22.5t、約2800kmの航続距離を持ちます。

そしてこれらよりもっと、YS-11に似ているのが、CV640。これはエンジンを「ダート」に変えたもの。まさに時代的にも、用途としてもYS-11にそっくりです。

初飛行は1959(昭和34)年で、生産機数13機、客席数は最大64席、最大離陸重量24t、航続距離は約2000kmです。

ダグラス DC-4

先述のDC-4は、レシプロエンジンを4基搭載しているなどの大きな違いはあるものの、角度によっては「少し大きいYS-11」のように見えることもあります。特に似ているのが胴体の形状でしょう。DC-3から発展した輸送機で、軍用をメインに戦後の主力機として活躍したのち、1960年頃にはローカル線で貨物輸送などに使用されていました。

初飛行は1942(昭和17)年で、生産機数1208機、客席数は最大86席、最大離陸重量28tで、航続距離は6800kmと、長い距離を飛ぶことができます。

日本は平成! だいぶ後になって現れた「そっくりさん」

ここまで「YS-11」に似た旅客機を紹介してきましたが、そのなかには、「見た目は似てないもの」や「だいぶ後になって現れたそっくりさん」も存在します。

ハンドレページ 「ダートヘラルド」

ダートヘラルド」は4発機で、主翼を胴体の上側に配置しているなど、YS-11との見た目の共通点は少ないイギリス旅客機ですが、実は中身がよく似たモデルです。というのも、この記事中ではおなじみのエンジン「ダート」を搭載しており、運航された時代的にも、用途としても似ています。

初飛行は1958(昭和33)年、生産機数50機、客席数は最大56席、最大離陸重量20t、航続距離1750kmといったスペックです。

イリューシン IL114

先述したモデルたちから時代が進み、YS-11がとうに生産終了となって久しい1990(平成3)年、ロシア(当時はソ連)で「YS-11」感あふれるモデルが初飛行しました。もちろん時代が進んでいるためエンジンをはじめさまざまな面で大きく進歩していますが、見た目は「機首が鋭いYS-11」といったイメージです。

生産数は20機と少ないですが、客席数は最大64席、最大離陸重量23.5t、航続距離も約2100km(航続距離延長型)とその用途もよく似ています。

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このように見ると、YS-11とその仲間たちは、当時の航空会社のローカル線に要求される仕様にうまく適合したスペックをしていたといえるでしょう。

東亜国内航空(現・JAL)のYS-11(画像:JAL)。