「ロジハラ」という言葉を聞いたことはありますか。「ロジカルハラスメント」の略で、「正論を振りかざして相手を追い詰めるハラスメント」という意味だそうです。

テレビでも取り上げられ、ネットでは「当たり前の事言っただけでハラスメントになるのかよ」「マジレスは違うの?」と話題となりました。

弁護士ドットコムにも正論で部下を厳しく叱責する上司について、相談が寄せられていました。

相談者の職場には、全ての若手社員が逆らえない厳しい上役がいます。新しい案件が来るたび、不備を見つけて、担当者に威圧的な姿勢で延々と叱り続けます。

ただ、言っている内容の多くは「正論」だといい、相談者は「精神的に大きなダメージを与えているが、言っていることが正論の場合、ハラスメントになるのか」と疑問に感じているようです。

果たして、正論を振りかざした場合、それはハラスメントになるのでしょうか。岩井羊一弁護士に聞きました。

●「業務上の適正な範囲かどうか」がポイント

——「ロジハラ」はパワハラの一種とも捉えられそうですが、そもそも、パワハラはどういうものを指すのでしょうか。

職場のパワーハラスメントとは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」などとされています。

——内容が正論でも、言い方や態度によってはパワハラになるのでしょうか。ハラスメントとなるポイントを教えてください。

内容が正しいかどうかではなく、「業務上の適正な範囲かどうか」がポイントになってきます。

言っていることが正論でも「威圧的な姿勢」で「延々としかり続ける」ことは業務には必要がないことが多いでしょう。そうすると、正論を言ってもパワーハラスメントになることは十分にありえます。

——10月11日の「ワイドナショー」(フジテレビ)では、ロジハラについて「論理的に正しい指摘であっても、相手を思いやる心がない人」「真っ向から正論をぶつけて困らせたり優位に立とうとする人」と紹介していました。

論理的に正しい指摘でも、相手を思いやる心がない人」ということだと、それだけで業務の適正な範囲を超えるかどうかは微妙です。ただちにパワーハラスメントとはいえないと思います。

「真っ向から正論をぶつけて困らせたり優位に立とうとする人」については、そのぶつけ方が「業務上の適正な範囲を超えている」場合に、内容にもよりますが、パワーハラスメントになる可能性があります。

——加害者側は「正しいことを言ったまでだ」などと反論して来そうですが、どうすればパワハラと認定されますか。

そうした反論はよくあります。発言は正しく、「業務の適正な範囲」の指導であると反論されることがあります。この場合、パワーハラスメントとして精神的苦痛を受けたのかを説明することは簡単ではありません。

たとえば、複数の人が同じ上司の下で働いていて同様の印象を持ったり、ひどい場合には複数の人が、同じ上司のもとでメンタル不全をおこしていたりする場合は、パワーハラスメントを判断する一つのポイントになると思います。

【取材協力弁護士】
岩井 羊一(いわい・よういち)弁護士
過労死弁護団全国連絡会議幹事、日弁連刑事弁護センター副委員長 愛知県弁護士会刑事弁護委員会 副委員長

事務所名:岩井羊一法律事務所
事務所URL:http://www.iwai-law.jp/

正論で詰める上司が「ロジハラ」と話題 指導とハラスメントとの境目は?