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モデル中期のフェイスリフト

text:Matt Saunders(マット・ソーンダース
translationKenji Nakajima(中嶋健治)

 
アルファ・ロメオからひと回り小さいSUVが、まもなく登場する。それに間に合わせるように、ステルヴィオはモデル中期のフェイスリフトを受けた。

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初試乗は3年前。知覚品質やデジタル技術で物足りない印象のあったインテリアも、わずかにアップデートされている。装備も見直され、オプションで選べる運転支援システムは、レベル2に対応した。

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アルファ・ロメオ・ステルヴィオ2.2d スプリントQ4(英国仕様)

英国で用意されるトリムグレードは、スーパーとスプリント、ルッソTi、ヴェローチェの4種。エンジンは200psの2.0L 4気筒ガソリンターボか、190psの2.1L 4気筒ディーゼルターボの2つ。ヴェローチェでは、最高出力がそれぞれ280psと210psへアップする。

最上級グレードとしては、510psのクアドリフォリオが君臨。高性能がゆえ、リアシートの子供は気持ち悪くなる可能性が高いからご注意を。

サスペンションは、コイルスプリング。ヴェローチェには、スプリングレートを上げた短いコイルと、減衰力特性を選べるダンパーを装備する。アダプティブ・ダンパーと機械式LSDがリアアクスルに付く、パフォーマンス・パッケージがオプションで用意される。

トランスミッションは共通で8速AT。エントリーグレードのディーゼル・モデルを除き、Q4と呼ばれるクラッチベースの四輪駆動となる。

英国での価格は、安価なグレードでは4万ポンド(540万円)を切る。しかし2019年度モデルと比べると、価格は全体的に6%から10%ほど上昇。そのぶん、装備が充実したということなのだろう。

ハーフレザーのシートに大きなシフトパドル

今回試乗したのは、2.1Lディーゼルターボのスプリント。ドライブトレインに目立った変更はないから、ドライビング体験の印象は従来と大きく違わない。

インテリアのデザインはスマートさを増し、前期モデルより惹かれる雰囲気に仕上がっている。センターコンソールには表面加工されたアルミニウムが張られ、シフトレバーなど操作系の素材の質も良くなった。

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アルファ・ロメオ・ステルヴィオ2.2d スプリントQ4(英国仕様)

中央のアームレスト前方には小さなトレイがあり、スマートフォンのワイヤレス充電機能が内蔵されている。シフトノブの横には、クルマのキーを収めるのに丁度いい、小物入れも用意された。

イグニッション・スイッチは従来どおり、ステアリングホイールに付いている。初めて乗ると、気づきにくい。

車内の質感は以前より上がったものの、同価格帯のライバルと比べると、まだ及ばないことも確か。エアコンの送風口やステアリングコラムに用いられているプラスティック製パーツは、安価なハッチバックと変わらない。

複数の機能が割り振られたステアリングホイール上のスイッチは、見た目も触感も上級な感じは薄い。反面、普段触れないような下部にも、本物のレザーを用いるこだわりは見られる。

ハーフレザーのシートは、風合いがよく、座り心地もイイ。ステアリングコラムに付く大きなシフトパドルは、探すまでもなく視界に入る。金属質な触り心地で、操作する喜びも大きい。

車内は質感を高めたものの、改善の余地あり

リアのトノカバーには、大きくアルファ・ロメオのロゴがあしらわれる。ミラーやリアガラスに映り込み、なかなか悪くない。コストを掛けずに、ドライバーへ満足感を与える手法だ。デザイナーが思いついたのだろう。

インフォテインメント・システムもアップデートされている。よく使う機能をホーム画面に並べられ、ドライバー好みで操作性を高めることが可能になった。

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アルファ・ロメオ・ステルヴィオ2.2d スプリントQ4(英国仕様)

アップルとアンドロイドのスマートフォンは、USBポートを通じてモニターにミラーリング表示が可能。リアシート側にもUSBポートが付いている。8.8インチのモニターの大きさは従来どおりで、表示はやや薄暗く感じる。

アルファ・ロメオアウディQ5やBMW X4を検討するドライバーを惹きつけることを狙っているのなら、インテリア・デザインはもう少し手を加えるべきだったと思う。質感も煮詰めた方が良い。

パワーウインドウの動きにも、少し一貫性がないように感じた。明確に訴求力が上がった、という印象は受けない。ドイツ勢とのインテリアのギャップは、まだ開いたままだ。

運転席に座り、ステアリングホイール上のボタンを押してエンジンを始動。目を覚ましてしばらくはディーゼルらしい音が響くが、すぐに静かなアイドリングへ落ち着く。

バランスとグリップ力に優れるシャシー

トルクは中回転域で特に太く、吹け上がりは穏やか。一昔前のディーゼルエンジンのような印象も受ける。2000rpm以下でも充分パワフルだが、4000rpm手前にはシフトアップしたくなる。

環境負荷を抑えるため、加速時は早いテンポでシフトアップするように、アルファ・ロメオは8速ATを味付けしている様子。低速域でも、できるだけ高い段数を保つ傾向がある。中間加速などでは、アクセル操作の反応にもどかしい場面がある。

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アルファ・ロメオ・ステルヴィオ2.2d スプリントQ4(英国仕様)

それでも、ドライブ・モードをダイナミックにすれば、ステルヴィオが遅く感じたり、運転の楽しさに不満を覚えることはない。エンジンの環境負荷を抑える仕組みを、一部無効にしているようだけれど。

軽くダイレクトなステアリングホイールの操舵感は、適度に重さが増す。ディーゼルのスプリントでも、ステルヴィオは機敏。中型のSUVとしては、バランスとグリップ力にも優れている。

確かに低速域では乗り心地は硬めで、しなやかさに欠ける。ステアリングのレスポンスは早いものの、手のひらに伝わる感触は薄い。

それに慣れれば、スポーティな魂を宿したSUVとして、爽快に運転できる。ライバルには真似できない走りだといえる。

新世代のジョルジオ・プラットフォームには、バイワイヤーのやや過剰反応気味なブレーキなど、いくつか気になる癖もある。それでも新しいステルヴィオに乗る限り、改善されつつあるようだ。

動的性能を評価するなら不足ない選択肢

アルファ・ロメオ・ステルヴィオは、秀逸なハンドリングや動的性能を評価するなら、ドイツ勢プレミアム・ブランドにかわる選択肢として、不足ない魅力を備えている。スタイリングもハンサムだ。

しかし、より洗練されたSUVを目指すアルファ・ロメオの取り組みは、まだ完全とはいえない。歴史あるブランドの存続のためにも、改善を止めるわけにはいかないだろう。

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アルファ・ロメオ・ステルヴィオ2.2d スプリントQ4(英国仕様)

良くなった部分もあるが、まだ向上できる余地は残っている。低速域での扱いやすさなど、BMWメルセデス・ベンツでは見られないような弱点も、まだ残っている。

アウディポルシェのような路線に振りすぎるのも、ブランドとしては間違いだと思う。アルファ・ロメオらしい、さらなる磨き込みを期待したい。

アルファ・ロメオ・ステルヴィオ2.2d スプリントQ4(英国仕様)のスペック

価格:4万4820ポンド(605万円)
全長:4687mm
全幅:1903mm
全高:1671mm
最高速度209km/h
0-100km/h加速:7.6秒
燃費:14.3-15.6km/L
CO2排出量:169-182g/km
乾燥重量:1745kg
パワートレイン:直列4気筒2143ccターボチャージャー
使用燃料:軽油
最高出力:190ps/3500rpm
最大トルク:45.8kg-m/1750rpm
ギアボックス:8速オートマティック


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