生理(月経)中に「眠い」「やる気が起きない」「疲れる」など、いわゆる“だるさ”を感じる人は多いようです。

心と体の調子やパフォーマンスが悪くても仕方がない……そんな風に諦めていませんか? 生理中のだるさの原因と、コンディションを取り戻す対策についてまとめます。

※この記事では月経について、一般的な表現である「生理」という言葉を使ってお伝えします

■生理の期間、なぜだるい?

生理中のだるさ(倦怠感:けんたいかん)などつらい症状は多くの女性に共通する悩みですが、症状は同じでも、人によって原因が違う場合があります。

◇いろいろな「だるい」がある

よく使われる「だるい」という言葉ですが、「体が重い」「眠い」などの肉体的な疲労感を表すときと、「やる気が起きない」「わずらわしい」などの精神的な症状を表す場合があり、またその両方が混ざっていることもあります。

あなたが生理で「だるい」と感じている症状はどんなことでしょうか? 自分の症状をピックアップしてみましょう。

症状の程度や症状が出るタイミング、つらさ、感じ方も人それぞれです。だるくて生理の期間を快適に過ごせないなら、我慢したり、人と比べたりしないで、改善するためにもぜひ婦人科に相談を。

つらい症状は本当に生理の影響か、ほかに原因となる病気がないかも調べられます。診察していると婦人科とは関係ない別の病気が原因で「だるさ」が起きていることもあるのです。原因に応じた治療や生活改善をしていきましょう。(松峯先生)

一概には言えませんが、生理に関連してだるくなる原因として代表的なものは、次に紹介する「月経前症候群PMS)※」や「生理の異常」「月経困難症」などです。

※精神的な症状が強いものをPMDD(月経前不快気分障害)といい、精神科や心療内科での治療を勧められることもあります。

◇月経前症候群PMS)によるだるさ

生理の前3〜10日間(黄体期)に心身にさまざまな不快な症状が出る病気が「月経前症候群PMS)」。だるさもPMSのよくある症状の1つです。

PMSの特徴は、多くの場合「生理が始まると症状が軽くなる(もしくは症状が消える)」こと。自分のだるさはいつ始まり、いつ楽になったか、生理の時期と絡めてチェックしておきましょう。

PMSに悩む女性は少なくない

症状が軽い場合も含めると、生理のある日本人女性の95%[*1]もの人がPMSを経験していて、2〜10%の人がPMSの症状により普段通りの生活ができなくなっていると報告されています[*2]。

婦人科でホルモンの検査や体質、ライフスタイルなど複合的に診察して、人それぞれの原因に合った治療法が選択できます。

◇生理の異常や月経困難症の可能性も

だるさが生理の異常によって起こる貧血や月経困難症によって引き起こされているケースもあります。

☆生理の異常(過多月経・過長月経)

出血量が異常に多い(経血の量が140ml以上)「過多月経」や、出血している期間が8日以上続く「過長月経」では貧血が引き起こされ、だるさを感じることがあります。

経血の量はもともと個人差が大きく、量の判断が難しいもの。生理用ナプキンが1時間ももたずに度々交換しなければいけないなどがあれば、過多月経の可能性があります。婦人科を受診しましょう。

☆月経困難症

生理の直前や生理が始まるとともに症状が現れるのが「月経困難症」[*4]。下腹部痛、腰痛、吐き気につながるようなむかつき、頭痛、疲労感、気分の落ち込みなどが強く出て、普段通りの生活ができなくなってしまう病気です。

月経困難症には子宮内膜症や筋腫など原因となる病気がある場合(器質性)と、ない場合(機能性)があり、それぞれに合わせた治療がなされます。

月経困難症の特徴は「生理終了前あるいは終了とともに症状がなくなる」こと(器質性の場合は症状が持続する場合も)。いつ症状があるか、変化の様子をチェックして、主治医に伝えましょう。

■だるさが生活や仕事に影響していたら?

だるさを改善するには、症状とどのように向き合えばよいのでしょうか。

◇生理のだるさ、どうすればいい?

「月経前症候群PMS)」や「生理の異常」「月経困難症」などのだるさは、生理のせいだから仕方がないと考えず、婦人科で診察を受けましょう。

PMSや生理によるだるさは原因や症状が多様で、いくつかの原因が重なっていることも多いので、治療法は1つではありません。患者さんのつらいことをよく聞き、症状を軽減するための生活上のアドバイスをするとともに、多くの治療法の中から適した方法や薬をコーディネートしていくケースが多いです。

だるさなど生理で起こるトラブルを放置すると、症状を悪化させる要因になることもあるので、早めに相談してください。(松峯先生)

☆生理に関連するだるさ、治療は?

まず、生理の異常や月経困難症を引き起こしている原因疾患があるのであれば、必要に応じて治療を行います。そして、PMSや月経困難症の各症状に合わせた“対処療法”も行います(痛みなどには鎮痛薬などを処方)。

なお、共通する治療の選択肢の1つに、低用量ピルがあります。低用量ピルは生理周期に大きく関わる2つの女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)が配合された口から飲む薬です。卵巣から分泌される女性ホルモンを外から取り入れ続けるため、卵巣はお休みして女性ホルモンの分泌も排卵も止まります。結果として、女性ホルモンの変動がほとんどなくなるため、生理による体調や気分の変調もなくなります。

による治療(薬物療法)にはいくつも選択肢があります。低用量ピルなどは服用している期間だけ一時的に排卵を止める薬で、使用を中止してしばらくすると排卵が再開します。薬について疑問や不安があるときは主治医薬剤師とコミュニケーションをとり、用法や作用についてよく理解・納得して、利用しましょう。 (松峯先生)

◇生理についてフランクに話せる機会をもとう

生理のことや、心身のだるさなどの症状は人に話しづらいことかもしれません。松峯先生は「話しづらい」ことのストレスも症状を悪化させる場合があると指摘しました。

つらく不快な症状がある生理に対して『面倒くさい』といった気持ちをもつのは自然です。

症状を軽減する治療を受けながらも、フランクに話す機会をもつこともストレス解消に大切ですから、身近に話せる人がいなかったら、婦人科で主治医に話し、心の負担も軽くしてください。(松峯先生)

ゆとり&リフレッシュを

生理期間だけに限らず、健康をベースに快適な毎日を過ごすために、松峯先生は「ゆとりをもって心と体のメンテナンスをする時間をもってほしい」と話しました。

特に生理期間中にだるいときはだるさに身をまかせて、休養たっぷりに過ごしましょう。だるさの原因に応じた治療を受けながら、無理をせず過ごすことが大切です。

特にPMSではカウンセリングを行って、適度な運動や睡眠・生活習慣の改善などの指導を行います。家でのんびりしながらできる美容ケアやストレッチを試すなど、忙しくてもなるべくリフレッシュできるオフタイムをもって、夜には約7時間(25〜45歳の場合)、連続した睡眠をとってください [*9]。(松峯先生)

■だるさなど生理中のつらい症状、仕方がないと思わず受診を!

生理に関係してつらい症状があるときは、「生理だから仕方がない」とは考えずに、婦人科を受診して、相談してください。

だるさなど、不快な症状を起こす「月経前症候群PMS)」や「生理の異常」「月経困難症」などは治療で改善が期待できる病気です。

生理期間中のだるさにはいくつもの原因が考えられるため、自分自身の原因を調べ、適した治療やケアを受けましょう。

(文・構成:下平貴子、監修:松峯美貴先生)

※画像はイメージです

参考文献

[*1] 産婦人科外来パーフェクトガイ.医学書院,P82,83

[*2] 病気がみえるvol.9 婦人科・乳腺外科」(メディックメディア),p36

[*3] 産婦人科外来パーフェクトガイ.医学書院,P13

[*4]「病気がみえるvol.9 婦人科・乳腺外科」(メディックメディア),p37
産婦人科外来パーフェクトガイ.医学書院,P79,80,81

[*5] 日本臨床検査医学会 貧血
https://www.jslm.org/books/guideline/36.pdf

[*6]「日本人の食事摂取基準 2020年版」
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf

[*7] 厚生労働省 「e-ヘルスネット 貧血の予防には、まずは普段の食生活を見直そう」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-008.html

[*8] 女子栄養大学レシピサイト 貧血の基礎知識と予防に効く食事
https://www.eiyo.ac.jp/recipe/sp/feature/view/vol:1/lesson:3/

[*9] 厚生労働省 健康づくりのための睡眠指針2014
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf

生理中のだるさの正体