老後の生活費のメインともいえる年金。しかしながら、一体どのくらいの年金がもらえるのかと老後の生活費に対して不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。

金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和元年)」によると、老後の生活について『心配である』と解答した世帯は81.2%となっており、さらにその理由は「年金や保険が十分ではないから」が73.3%で第一位という結果です。

今回は、人生の中で教育費や住宅ローンなど、最もお金がかかるであろう40代に注目し、40代の現在の貯蓄額と将来貰える年金額についてみていきましょう。

一番お金が出ていく40代の貯蓄額は? 

総務省統計局が発表している「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2019年(令和元年)平均結果-(二人以上の世帯)」によると、40~49歳の勤労世帯の貯蓄額は「1,057万円」であると発表されています。その内訳は、まず預貯金については普通預金などの通貨性預貯金が389万円、定期性預貯金が278万円です。

預貯金以外の金融資産については、生命保険などが225万円、有価証券が102万円、その他62万円と続きます。教育費や住宅ローンなどで出て行くお金が多いと思われる40代ですが、貯蓄額1,000万円超えと思いのほか貯蓄額が多いように感じられます。

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負債も多い40代 

しかしながら、貯蓄額を見ていくために忘れてはいけないのが「負債額」です。同調査によると、40~49歳の勤労世帯の負債額は「1,120万円」あり、住宅・土地のための負債が1,053万円とその大部分を占めていることが分かります。40代はまだまだ住宅ローンなどが残っており、負債額も多いということなのでしょう。さらに、貯蓄額から負債額を引いた純貯蓄額を計算してみると、なんとマイナス63万円となり、貯蓄どころかむしろマイナスとなってしまっている現状が読み取れます。

しかしながら、そんな状況で老後は大丈夫なのかと不安になる必要はありません。同調査によると、50~59歳の純貯蓄は1,067万円、退職金がプラスされているであろう60~69歳の純貯蓄は1,906万円という結果も出ています。子供の独立などで教育費が落ち着き、住宅ローンの終了も見え始めると一気に貯蓄額が上振れし、老後資産をぐっと貯めやすくなってくるというわけです。50代以降、いくら貯められるかが肝となってくるわけですね。

年金はいくら貰えるのか 

とはいいつつも、年金はいくら貰えるのか、年金を補うためには今の貯蓄額で本当に十分なのか気になりますよね。
厚生労働省が発表している「将来の公的年金の財政見通し(財政検証)」における「2019(令和元)年財政検証関連資料」では、年金額の見通しを公表しています。

例えば、1974年生まれ現在45歳の将来のモデル年金を見ていきましょう。ちなみに、ここでいうモデル年金とは夫が平均的な収入で40年間就業し、その間妻が専業主婦であるというケースとなっており、この年金額の中には2人分の国民年金を含んでいます。
同見通しは出生率中位・死亡率中位(その前提が変わらない)の場合において、経済成長率(ここでは2029年度以降20~30年平均の実質経済成長率のことをいいます)に応じて年金額が変わってくることを示しています。今回は経済成長率0.9%の場合と、経済成長率0.0%の場合で見ていきましょう。

経済成長率0.9%の場合、現在45歳のモデル年金は、65歳で24.8万円、70歳で23.8万円、75歳で23.6万円、80歳で23.8万円、85歳で25.7万円、90歳で27.8万円となっています。

次に経済成長率0.0%の場合、現在45歳のモデル年金は、65歳で20.8万円、70歳で20.4万円、75歳で19.9万円、80歳で19.5万円、85歳で19.2万円、90歳で19.2万円となっています。

気をつけてほしいのはこのデータは満額受給での金額であり、場合によってはここからさらに減額される可能性もあるということです。経済成長率によっては20万円を切る可能性も大いにあり、その年金額に不安を感じてしまう人も多いのではないでしょうか。

40代、老後のために今からできること

ここで公益財団法人生命保険文化センターが実施した「令和元年度 生活保障に関する調査」をみてみましょう。この調査によると、夫婦2人が老後を過ごすために必要となってくる最低日常生活費について「20~25万円未満」と答えている人が多く、平均して22.1万円という結果が出ています。しかしこれはあくまでもギリギリの生活費であり、別の質問ではゆとりある老後生活を送るためにはさらに月14.0万円必要だということが分かります

上記のモデルケースで考えた場合、経済成長率にもよりますが、最低日常生活分の22万円はおおよそ年金でまかなえるとしても、ゆとりある老後生活のための月14万円は貯蓄から崩していくことになります。となると、65歳から20年生きると考えたとき、単純計算で3,360万円の貯蓄が必要になるわけです。もちろんそこまで贅沢はしないかもしれませんが、老後2,000万円といわれる理由が分かってきますよね。

40代で現在負債も抱え、実質貯蓄がほぼ0、むしろマイナスになっている世帯も多いかと思います。しかしながら、上記のことを考えるとやはり今から老後に向けて貯蓄を始めていく必要が大いにあるということが分かってくるでしょう。もちろんコツコツと貯めていくのも一つの手ですが、節税をしながら資産運用ができる、iDeCoやNISAに目を向けてみることもおすすめです。特にiDeCoは所得控除の対象となっており、投資した金額に応じて所得税等が軽減されるという特徴をもっており、仕事をしている人にとっては大きな魅力のある制度です。

そしてもう一つ、老後の労働についても今からしっかりと検討しておくことも重要です。2025年4月には65歳定年制がすべての会社で義務化され、また2021年4月には70歳までの就業機会確保が企業の努力義務として課されることとなっています。人生100年時代といわれ、高齢者の雇用促進が重要視されている現代社会において、年金受給開始時期だからといって年金頼みにするのではなく、体力があるうちはしっかり働くということも検討していくべきでしょう。

40代、まだまだ先のことだと思っているといつの間にか老後はやってきます。その時のために、できる限り早く準備を始め、ゆとりある老後生活を送れるよう資産形成や老後の労働について考えていきましょう。

貯蓄とは
総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。

【参照】
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]」(令和元年
総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2019年(令和元年)平均結果-(二人以上の世帯)8-5世帯主の年齢階級別
厚生労働省将来の公的年金の財政見通し(財政検証)
公益財団法人生命保険文化センター「令和元年度 生活保障に関する調査