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(写真:共同通信

「“Go Toキャンペーン”などで人の移動が増えているなか、日本の発症者数は横ばいを続けています。ハイリスクな既往症のある患者や高齢者などでも死亡者数がさほど増えないというのは、いわゆるウイルスの変異が起きているのかなと感じています」

そう語るのは、帝京大学大学院公衆衛生学研究科の高橋謙造教授だ。また、医療ジャーナリストによれば、

「欧州では再び、新型コロナウイルス感染者が急速に増加しています。特に1日の感染者数が過去最多の4万1千622人を記録したフランスでは、夜間外出禁止令の対象地域を9都市から38地域に拡大しました。

しかしながら、10月中旬時点で、ここ1カ月の1日あたりの死者は100人を下回り、千人を超える日もあった今春の“第1波”とは差があるといいます。WHOの欧州地域事務局長は『欧州全体の死者数は(第1波の)5分の1にまで下がった』と断言しています。

かたや国内を見ると、9月に発表された国立感染症研究所による新型コロナの致死率は“第1波”の5.8%から、6月以降の“第2波”は0.9%まで低下。新型コロナの“弱毒化”が指摘されるようになりました」

元WHO専門委員の医学博士・左門新氏もこう語る。

「治療実績を積んだことが死者数を減らした大きな要因だと思います。ただし、ウイルスはランダムに変異するので、弱毒化している可能性もあるでしょう。かつてSARSは終息しましたが、これはウイルスが強かったためわれわれが厳しく対処をしたからです。

長いスパンで見て、ウイルスが生き残って生物に感染し続けるには、あまりに強毒だと長く続きません。そのため、実は弱毒化したほうがウイルスは長く生き残るということはいえるでしょう」

冬の足音が近づくと、コロナとは別に、インフルエンザ感染にも警戒しなければならない。前出・左門氏は続ける。

「いまはコロナ禍で、手洗いや消毒、マスクなどの感染予防が徹底されているので、インフルエンザにかかる人はかなり少ないです。ただ、コロナへの警戒を緩めて感染予防を怠れば、インフルエンザ感染者は増えると思います」

新型コロナインフルエンザに“同時感染”するケースもありえるという。

「中国・武漢の新型コロナ重症患者の約50%がインフルエンザにも感染していたとする海外の研究結果があるのです。同時感染すると、全身の免疫が暴走する『サイトカインストーム』現象が早まるともいわれています。同時感染を避けるためにも、特に高齢者などにはインフルエンザワクチンを早めに打つことを勧める専門家もいます」(前出・医療ジャーナリスト)

左門氏は“同時感染”の危険性についてこう力説する。

「医学的には、ウイルスに感染するとインターフェロンという免疫ができるので、新型コロナが蔓延していればインフルエンザにかかりにくい状態だと思います。ただ、同時に感染することはもちろんありえます。その場合、別々のウイルスなので体の別々の場所に影響が出るという意味でも、重症化のリスクはあります。

また、ウイルスに感染してさらに細菌にも感染する“混合感染”を起こすと、肺炎を起こして重症化し、死に至ることもあります。だから、ウイルスに感染したら細菌感染を防ぐ目的で、ウイルスには効かない抗生物質を投与することもあるのです」

“同時感染”に“混合感染”――。死者数が減っても重症化リスクがある現状を、しっかり認識すべきだろう。前出の高橋教授は改めて新型コロナウイルスの特殊性について、注意を促す。

「コロナがインフルエンザと明らかに違うのは、後遺障害が深刻だということです。肺などへのダメージが大きく、さらに味覚障害や嗅覚異常などの後遺症報告も多く、まだまだ未知のウイルスです。

子どもの場合、海外では川崎病のような全身の血管炎症の報告例も多いです。コロナウイルスは弱毒化によって、インフルエンザのように長期間、生き残る道を選んだといえるでしょう。SARSよりもよほど“賢い”ウイルスなのです」

“弱毒化”したからといって感染予防策を怠れば、大きなしっぺ返しを食うことになる。 われわれも負けずに“賢明”な生活を送ることが肝要なのだ――。

「女性自身」2020年11月10日号 掲載