日本弁護士連合会(日弁連)は10月28日の定例会見で、先の通常国会に提出され、継続審議となっている種苗法改正案について、「十分に審議を尽くしたうえで、早期に改正されることを求める」とした。

また、「令和2年種苗法改正法案に関する意見書」(承認日・執行日10月21日)を衆参両院の農林水産委員会のすべての委員や各政党に提出した。

「改正反対」の声が上がっている種苗法

種苗法改正案の概要について、日弁連副会長の大川哲也弁護士が説明した。

改正案では、優良品種の海外流出を防止するため、品種登録の際に、輸出可能な国や国内地域が指定される。指定外への持ち出しは育成者権の侵害となり、刑事罰や損害賠償の請求が可能になる。

注目されているのは、農家が登録品種を「自家増殖」するために、育成権者の許諾を必要とする点だ。「自家増殖」とは、農家が収穫物の一部を次期作付用に種苗として使用することを指す。

許諾のプロセスによって、農家の負担が増え、営農に支障が生じるとの懸念から、一部農水事業者らを中心に、改正反対の声が上がっている。

大川弁護士は「許諾が必要となるのは、新たに開発され、見出された登録品種のみであって、一般品種は対象にならない。また、品種開発目的の交配による種子生産は、登録品種でも自由にできることから、この懸念は誤解にもとづくところが大きい」と述べた。

なぜ法改正を進めようとしている?

この問題に詳しい日弁連知的財産センター委員長の伊原友己弁護士が法改正をめぐる背景について説明した。   通常国会では、和牛の遺伝資源の保護を目的とした法整備がなされた。和牛と同じく、コストをかけて開発した農作物も、知的財産として法的保護が必要と考えている。

「どのように日本の知的財産を守るか、著作権法などほかの知的財産法制にバランスをあわせるか。その側面から法改正が予定されていた。我々は良いことだと評価している。

しかし、なんの誤解か、世の中の動きをみると、法改正されると、農家の自家増殖が一切禁止されてしまうのではないかという不安感がある」

反対派には「誤解」がある

この「誤解」について、改正法で自家増殖の許諾が必要となるのは、登録品種に限った話だと改めて強調する。そして、特許の世界を引き合いに、農水分野でも、知的財産権の好循環が起こることを期待すると話す。

「たとえば特許の世界では、特許発明は産業界で使ってはいけないという話は一般的だ。使うのであれば、ロイヤリティーの支払いが求められる。そして、何年か経つとパブリックドメインになって、自由に使われ、社会の技術が上がっていく。

種苗法も同じで、開発にはコストがかかるので、一定期間だけ独占権を認めて、何年かしたら権利が切れて、誰でも自由に使える一般品種になる。知的財産権の好循環が起こることが農水の分野でも期待される」

このようなサイクルを作るにあたり、一定の許諾性が導入されることは「仕方ないと割り切っている」。

現実的に、農家による自家増殖を、登録品種の育成権者が認める方向に進むのではないかと伊原弁護士は指摘する。

「農家さんに買って使ってもらって、品種が広まることで、開発品種を提供している人たちも潤う。国民の豊かな食生活も潤う。ウィンウィンの関係になるだろうと思う。登録品種の自家増殖について、『育成権者の許可がいる』イコール『何か禁止されている』と結びつけて議論されていくのは違うのではないかという観点もあり、交通整理のためにも意見書を作っている」

知的財産権とのバランスを考える

「お金や時間をかけて開発したものを世の中に提供したら、すべて自由に使っていいということにはならないということが前提の理解となる。

たとえば、音楽の著作物は、著作権法の世界では、私的利用であればよくても、大規模に業として使用するのはいけない。適正な権利行使されなければ、音楽が守られない。そんな著作物の世界観もあるので、一定の創作努力された結果は、一定期間は報われるように、仕組みとしてととのえておくべきというのが、知的財産法の大きなたてつけになる。

いったん種が売られて、農家は無許諾で使いまわすことが自由というのは、その建てつけに馴染むかといえば、馴染みにくいなと思う」

種苗法「すみやかに改正を」日弁連が求める 反対派の不安は「誤解」と反論