空港で赤ちゃんが生み捨てられ13人の女性に容疑がかかる

空港で赤ちゃんが生み捨てられ13人の女性に容疑がかかる MKBWebfactory/pixabay

 今月2日、中東カタールの首都ドーハにあるハマド国際空港で、離陸前のカタール・エアウェイズに搭乗していた複数のオーストラリア人女性が降機させられ、強制的に身体検査を受けさせられていたことが判明した。

 当局側によると、空港内のトイレで新生児が遺棄されていたことがわかり、母親特定のために協力を要請し検査を行ったということだが、女性乗客らはなぜ検査を強いられるのか説明もされず、インフォームドコンセントも与えられなかったという。

 トラウマ的経験を味わった女性らは、既にオーストラリアに戻っているが、この事態を重く見たオーストラリア政府側は、公式にカタール政府に対して適切な説明を求めており、「容認できない対応」とカタール当局を激しく非難している。『ARAB NEWS』などが伝えた。

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Women strip-searched in Qatar after baby found in airport bathroom | ABC News

飛行機から降機された女性13人、子宮頸部の検査を強要される

 10月2日カタールの首都ドーハのハマド国際空港の主要ターミナルのトイレで、赤ちゃんが遺棄されているのが発見された。

 赤ちゃんは、低出生体重児で生まれたばかりとされ、空港当局と警察はすぐに母親特定の調査に乗り出した。

 このターミナルの駐機場には、シドニーへ向かうカタール・エアウェイズがあり、既に乗客らは搭乗していた。

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Nel_Botha-NZ/pixabay

 当局は、離陸を待つ機内にいるオーストラリア人女性乗客13人に降機を命じた。そして待機していた救急車の中で、直前に出産した痕跡がないか調べるため下着をおろし子宮頸部の検査を強要したのだ。

検査が必要な理由も説明せず、女性らにトラウマ経験を与える

 13人のうちの1人、キム・ミルズさん(60代)は後にメディアにこの時の恐怖を語った。

搭乗して、離陸を待つまでの間眠っていたら、乗務員に起こされました。パスポートを持って警察に従って飛行機を降りるよう命じられたのです。

他の女性らも同様の指示を受けているのを見て、異変を感じました。駐機場に停まっている救急車を見て、コロナの検査?と思ったのですか、連行される間何の説明もなく、かなりの恐怖を感じました。

救急車の中から出て来た若い女性は、泣いていました。彼女から理由を聞いて、愕然としました。娘が3人いる私でさえ恐怖を感じたのですから、若い女性たちにとってはもっと怖かったことでしょう。

なぜ、何も説明せずに検査を強要したのでしょうか。全くひどい対応です。私の娘が私と一緒に飛行機に乗っていなくて本当に良かったと思いました。


 幸いにも、キムさんは60代だったことから検査からは外された。しかし、他の12人のオーストラリア人女性たちは、救急車の中で待機していた医療従事者とみられる女性に下着を脱ぐよう命じられ、無理やり脚を開かせられて検査をさせられたという。

 被害に遭った女性1人(匿名希望)は、このように話している。

空港の誰もまともに英語を話せず、状況を説明してもらえませんでした。ただ目的地までの情報を提供するよう求められただけです。

それで突然、救急車の中でズボンを下ろすよう言われたので、当然拒否したら、「調べる必要がある」と繰り返し言うだけで。

逃げようにも救急車のドアは閉まっているし、最後には観念して言われるとおりにしましたが、パニックになりました。検査をされた他の人たちもみな、パニックに陥って、蒼白になって震えていました。他の人が訴えると言うのなら、私も一緒に集団訴訟に参加します。


当局、「母親の健康に深い懸念があり協力を要請しただけ」と弁明


 13人の女性らは、その後機内へ戻されても体の震えが止まらず、彼女らを機内で待っていた他の搭乗客らは事情を聞いて、誰もが大きなショックを受けた。

 乗客の1人は、女性らはみな激しく動揺していて、そのうちの1人は涙を流していたと話している。

 結局、飛行機は3時間遅れで離陸となり、無事にシドニーに到着した。その後、コロナによるホテルでの隔離期間を終えた13人は、トラウマ的経験から精神的なダメージも受けており、現在はニューサウスウェールズ州の保健局によってサポートを受けているところだという。

 当局は、「子供を産み捨てた母親の健康状態を深く懸念している。母親をいち早く特定するために、搭乗客には協力を要請した」と述べているが、これを知ったオーストラリア連邦政府は怒り心頭だ。

 後日、連邦政府のスポークスマンは、記者会見でカタール政府と空港当局を非難した。

女性への扱いは、不快で不適切極まりない。拘束してインフォームドコンセントを与えることなく、検査を強要した。これは容認できない対応だ。この1件については、現在正式にカタール政府に問い合わせ中である。

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staffanekstrand/pixabay

赤ちゃんの母親、未だ見つからず

 厳格なイスラム法を施行していることで知られているカタールでは、婚姻外の妊娠・出産をした女性には厳しい罰則を科している。

 しかし搭乗客に検査を強要したことで、この事態はオーストラリアだけではなく、世界中のメディアで「人権侵害」としても報じられ、激しい抗議の声が寄せられている。

 現時点では、オーストラリア政府はカタール政府からの回答を待っているところだ。肝心の赤ちゃんの母親については、未だ発見されておらず、当局では名乗り出るよう呼びかけが続けられている。

 なお、赤ちゃんは健康状態も良く元気にしており、現在はカタールの医療従事者やソーシャルワーカーの世話を受けて安全に保護されているということだ。

written by Scarlet / edited by parumo

全文をカラパイアで読む:
http://karapaia.com/archives/52296000.html
 

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