1990年10月30日に開館した東京芸術劇場が30周年を迎えた。野田秀樹脚本、シルヴィウ・プルカレーテ演出による『真夏の夜の夢』、井上道義指揮、野田秀樹演出の「『フィガロの結婚』~庭師は観た!~」と続いた30周年記念公演の掉尾を飾るのが読売日本交響楽団 演奏会である。指揮者・演奏者の顔ぶれが豪華で、曲目も充実しており期待が高まる。

今回の指揮者マキシムパスカル1985年生まれの35歳。ヨーロッパの主要楽団に客演し、オペラに関してはミラノ・スカラ座やパリ・オペラ座、ベルリン国立歌劇場に招かれている。ことに近現代作品を得意としており、ドビュッシーラヴェルといったフランス印象派などで声望を高めている。そんな若き実力派のマエストロが、なんと今回初めて東京でオーケストラコンサートのタクトを振るというから楽しみである。

反田恭平 (c)M.Yamashiro

反田恭平 (c)M.Yamashiro

さらに30 周年を記念して作曲家・望月京に新作「待ちわびて」を委嘱し世界初演する。フランスドイツの楽団などからの委嘱も多い望月の新作を、パスカル&読売日本交響楽団がどのように奏でるのか注目される。ほかにラヴェルの「ラ・ヴァルス」、「左手のための協奏曲」、ドビュッシーの「海」と煌びやかな名曲が並ぶ。「左手のための協奏曲」にはピアニスト反田恭平が出演。国内外の著名オーケストラに客演し、先日ウィーン楽友協会で佐渡裕指揮、トーンキュンストラー管弦楽団と共演してウィーン・デビューを飾ったばかりの気鋭から目が離せない。

読売日本交響楽団 (c)読響

読売日本交響楽団 (c)読響

クラシック専用の大ホール(コンサートホール)を備え、数々の名演を生み、クラシック音楽の聖地でもある東京芸術劇場。その30周年を祝うにふさわしい至福の演奏会となるだろう。

文=高橋森彦

マキシム・パスカル  (c)Guillaume de Sardes