闘犬のイメージが強いピットブルだが、カナダでは人間が襲われるケースがあったことを踏まえて、飼育を禁止している市や州がある。このほどピットブルの飼育禁止条例が施行されているオンタリオ州で、長年飼われていた犬がピットブルの血が入っているのではないかと疑われ、市によって飼い主と引き離されてしまったことが多くの関心を集めた。『CTV News Toronto』などが伝えている。

カナダのオンタリオ州ヴォーン市に住むジェシカ・ブランデスさん(Jessica Brandes)は10月26日の朝、庭の門が完全に施錠されていなかったために飼っている雄のミックス犬“リンゴ(Ringo、12歳)”が外へ逃げ出してしまったことに気づいた。

ジェシカさんはリンゴを必死に探し回ったが、見つけることができずにいた。しかしヴォーン市が運営する動物保護機関「ヴォーン・アニマルサービス」のウェブサイトで、迷い犬の写真の中にリンゴがいたのだ。

ジェシカさんはすぐに同機関に電話し、感謝を述べてリンゴを迎えに行く手続きを取ろうとした。ところが同機関から「マイクロチップの情報からピットブルのDNAを持っている可能性があり、飼い主の元へ戻すことはできないかもしれない」と告げられてしまったという。

ジェシカさんの住むオンタリオ州では2005年から基本的にピットブルの飼育が禁じられているが、リンゴがピットブルの混血種かもしれないことはジェシカさんにとって寝耳に水の話だった。

さらに「検査の結果でリンゴがピットブルのDNAを持っていることが分かった場合、殺処分するか、それとも州外に引っ越しをしてリンゴを飼うしかない」とも言われたそうだ。

ジェシカさんは当時のことを、次のように振り返っている。

ショックで打ちのめされそうになりました。リンゴは、うちの子が生まれる前から一緒にいるんです。リンゴは私達家族の一員なんです。私はリンゴがピットブルだとは思ってもみなかったし、見た目からしてずっと普通の雑種だと思っていました。」

リンゴは10年前にジェシカさんがトロント市内の動物保護施設から引き取った犬で、これまで人に危害を加えるようなことは一度もなく、いつも窓からのんびり鳥を見ているような温厚な性格だったという。

ジェシカさんはリンゴを取り戻すために、引き取った動物保護施設から記録を取り寄せるなどしてできる限りのことをした。後にリンゴのことが話題になり、動物の福祉改革を推進する団体「Reform Advocates for Animal Welfare」がリンゴジェシカさんの元へ帰すための署名を募ってくれた。

署名はわずか数日間で8800件を超え、メディアがリンゴの件を取り上げたことでジェシカさんを支持する多くの声が集まった。

その後、ジェシカさんはヴォーン・アニマルサービスから連絡を受けた。リンゴはピットブルの混血種ではないことが確認できたとし、ジェシカさん家族は30日にリンゴと再会することができた。

ジェシカさんはリンゴと再び過ごせることに喜びを見せながらもこのように語った。

「おそらくリンゴがピットブルの混血か否かではなく、SNSやメディアに注目されたことで様々な意見がアニマルサービスに寄せられ、彼らも疲れ果ててリンゴを帰すことにしたんだと思います。」

「私が今回のことで分かったことは、オンタリオ州の多くの人がピットブルの飼育禁止に同意していないということです。私の結論からすると、ピットブルは悪い犬種ではありません。悪い犬になってしまうのは飼い主のせいだと思います。」

ちなみに昨年『The Star Vancouver』が行ったアンケート調査で「オンタリオ州はピットブル飼育禁止条例を無くすべきだと思いますか?」の問いに、「Yes」が81.68%、「No」が18.32%という結果が出ていた。

画像は『CTV News Toronto 2020年10月29日付「Ontario woman has her 12-year-old dog taken away because he might be part pit bull」、2020年10月30日付「‘I’m over the moon’: Ontario woman reunited with senior dog held by animal services」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)

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