2020年、新型コロナウイルス感染症COVID-19)が日本経済にもたらした衝撃は、私たちの日々の生活にもさまざまな影響を与えました。その中でも、「収入が不安定になり、未来の予測もつかず、深刻」という人が多いようですね。そうなると気になってくるのが、勤めている企業の規模による安定性や収入の違いかもしれません。

そこで今回は、総務省統計局「家計調査 」(貯蓄・負債編 二人以上の世帯 年報 7.世帯主の勤め先企業規模別)などの資料をもとに、大企業中小企業の収入や生活様式の差について考察します。

大企業と中小企業、収入の差はどれくらいある?

「うちの夫は、就業人数300人足らずの運輸業勤務。お隣さんは1,000人超えの大企業勤務。比べるつもりはないけれど、何かと大企業の方が安定感もありそうだし、社員も豊かな生活をしていそうな気がしてしまう」(AM 38歳)

「私の夫が勤務しているのは、いわゆる大企業。安定している反面、組織が複雑で人間関係もややこしい。斬新なアイディアは受け入れてもらいにくく、冒険ができないとのこと。そうなると、中小企業は社員一人ひとりの意見に耳を傾けてくれそうな印象がある。頑張れば頑張っただけ評価してくれそうな」(RM 29歳)

企業規模によるメリット・デメリットについては、皆さん、さまざまな見解を持っているようですね。さて、実際の「差」について、収入面ではどのようになっているでしょうか。国税庁長官官房企画課「民間給与実態調査 企業規模別の平均給与」(平成29年9月発表)によると、資本金2,000万円未満の会社が年収約361万円であるのに対し、資本金10億円以上の会社では約590万円という結果が出ており、その差は229万円です。

年間にこれだけの差が出てしまうと、やはり「大企業の方がいい!」と思えてしまうのかもしれません。

「LIMO[リーモ]の今日の記事へ」

企業規模の違いはそのまま貯蓄額の差になっている?

収入の額面差だけを見ると、大企業の方が断然お金が貯まりそう、とも思えますが、貯蓄額ではどれくらいの違いがあるのでしょうか。

総務省統計局 家計調査 / 貯蓄・負債編 二人以上の世帯 年報 7.世帯主の勤め先企業規模別」から「貯蓄額」について見てみると、従業員数100~299人規模の企業就業者の貯蓄額が1,421万円に対し、従業員数1,000人以上規模の企業就業者の貯蓄額は1,622万円と、200万円以上の差が出ていることがわかります。このことから、やはり収入の差は貯蓄の差となって表れやすい傾向にあるようですね。

企業規模関係なく、効率的に貯蓄する工夫

就職バブル期の“売り手市場”の時代とは違い、簡単に希望の会社に転職、というアクションが起こしにくい現代。企業規模の違いを嘆いてばかりはいられません。今、自分が得ることのできる収入の中から、賢くやりくりする必要があるでしょう。そこで、効率的な貯蓄方法について、以下に例を挙げます。

積み立て型の保険に加入する

「手元にお金があるとついつい浪費してしまう」という人、積み立て型の保険はいかがでしょうか。毎月一定した積立額を払い、将来お金が必要になるときに備えるタイプの保険です。月5,000円程度の少額からスタートOK、掛け捨てではないため満期時には利息がつき、いつ解約しても返戻金は100%といった商品もあり、気軽に始められそうですよね。

固定費や生活費の徹底見直し

インターネットの接続費、スマホ代などの、「収入の増減にかかわらず一定の額で出ていくお金」は見直しが必要でしょう。現在ではさまざまな格安プランやセット割引などが多数出ています。「なんとなくこのままにしてしまっている」固定費は、ぜひスリム化を図ってください。また、もう何カ月も行かずに会費だけ引き落とされ続けているジムは退会する、タクシー利用をやめて自転車や徒歩にする、といった「やめようと思えばやめられそう」な出費もリストアップしてみましょう。

キャッシュレス決済、ポイントカードの有効活用

クレジットカードやポイントカード使用によるポイント還元も、“ちりつも”貯金につながります。光熱費など毎月引かれる公共料金もクレジットカード決済にすると、定期的にポイント加算されますよね。上手な利用方法のコツとしては、あまりたくさんカードを作らないこと。1社のカードに絞って使った方が、ポイント累計高の把握がしやすく、節約のモチベーションアップにも効果的です。

ここで挙げた例以外にも、“本気”で見直せば支出入バランスを向上させることができるファクターがあるでしょう。ぜひ、この機に見直してみませんか?

「大企業だから」「中小企業だから」を越えた考え方を

収入や貯蓄の差だけを見ると、「大企業に勤めている方が断然うらやましい」との見方をする人もいるかもしれませんが、前出の「総務省統計局 家計調査 / 貯蓄・負債編 二人以上の世帯 年報 7.世帯主の勤め先企業規模別」に記載された「持家率」について見てみると、中小企業就業者世帯が80.9%に対し、大企業就業者世帯は82.8%と、大差がない結果となりました。

また、「世帯主の配偶者のうち女の有業率」つまり、夫婦共稼ぎかどうかという調査についても、前者57.5%、後者54.6%とそれほど差が出ていませんでした。これらの結果から、企業規模に関係なく、日常生活の諸経費の見直しや適切な節約、そして効果的な貯蓄方法を選択することが、「人生の安定感」につながっていくといえるでしょう。

また、金銭面だけではなく、自分が与えられたポジションにやりがいや価値を見出して仕事の充実度を上げていくことや、健康管理に十分な注意を払っていくことも、心豊かに社会生活を送る要素なのかもしれません。

こんな時代だからこそ、お金と丁寧に向き合いながら、毎日を何ごともなく過ごせることに幸せを感じながら暮らしたいですね。

貯蓄とは
総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。

【参照】
総務省統計局「家計調査」(貯蓄・負債編 二人以上の世帯 年報 7.世帯主の勤め先企業規模別)
国税庁長官官房企画課 「民間給与実態調査」企業規模別の平均給与
中小企業庁 FAQ「中小企業の定義について
明治安田生命「じぶんの積立