コロナ禍で迎える初の受験シーズン、そして新しく始まる「大学入学共通テスト」。いまの高校3年生が迎える「大学受験」は昨年までとはちがった様相になることが考えられますね。また、高校生以下のお子さんを持つ親御さんにとって、今後の「学費」がどれくらいかかるか、は大きな関心ごとでしょう。

「幼児教育・保育の無償化」、私立高校授業料の実質無料化など、ここ数年で、高等学校以下の教育費の負担が大きく軽減されるようになりました。

その一方で、高校卒業後に必要となる学費は上昇傾向にあります。ただ、こちらは「私立」か「国公立」か、そして専攻する学問によってもだいぶ差があります。今回は、それらの違いを、「大学」「短期大学」に的を絞ってみていきます。

大学進学にかかるお金

文部科学省平成30年(2018年)度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果について」「国公私立大学の授業料等の推移」から、各学校にかかるお金についてみていきましょう。

さいしょは、私立大学に進学した場合から。

私立大学文科系学部

(文・人文学系、経済・経営・商学系、教育系、法・政治学系ほか)

397万7,697円

※「入学金」(初年度のみ納入:22万9,997円)と「授業料」(年額78万5,581円×4年分)と施設設備費(年額15万1,344円×4年分)

私立大学理科系学部

(理・工学系、農・獣医・畜産学系ほか)

528万2,149円

※「入学金」(初年度のみ納入:25万4,309円)と「授業料」(年額110万5,616円×4年分)と施設設備費(年額15万1,344円×4年分)

私立大学医歯系学部

(医学、薬学、歯学など)

2,356万8,949円

※「入学金」(初年度のみ納入:107万3,083円)と「授業料」(年額286万7,802円×6年分)と施設設備費(年額88万1,509円×6年分)

私立大学その他学部

(家政、芸術、体育、保健など)

503万1,103円

※「入学金」(初年度のみ納入:25万8,747円)と「授業料」(年額95万8,445円×4年分)と施設設備費(年額23万4,644円×4年分)

次は国立大学に進学した場合をみていきます。

国立・医歯系学部以外(4年間在籍)

242万5,200円

※「入学金」(初年度のみ納入:28万2,000円)と「授業料」(年額53万5,800円×4年分)

国立・医歯系学部(6年間在籍)

349万6,800円

★「入学金」(初年度のみ納入:28万2,000円)と「授業料」(年額53万5,800円×6年分)

次は公立大学です。公立大学の学費については、「地域内入学者」と「地域外入学者」で費用がかわることがあります。下記は、すべて地域外からの入学者の平均を記載しています。

公立・医歯系学部以外(4年間在籍)

254万7,327

※「入学金」(初年度のみ納入:39万2,321円)と「授業料」(年額53万8,734円×4年分)
※金額は地域外からの入学者の平均。

公立・医歯系学部(6年間在籍)

362万4,795円

※「入学金」(初年度のみ納入:39万2,321円)と「授業料」(年額53万8,734円×6年分)
※金額は地域外からの入学者の平均。

さいごに、4年制大学ではなく、短期大学に進学した場合の費用もみていきます。

私立・短期大学

前述の文部科学省の「平成30年私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果について」を見ると、私立短期大学にかかる費用は以下のようになっています。

199万5,960円

※「入学金」(初年度のみ納入:24万1,836円)と「授業料」(年額70万3,287円×2年分)と施設設備費(年額17万3,775円×2年分)

いったん短期大学に進学し、その後4年制などの大学への編入を視野に入れているケースもあるでしょう。その場合は、すでに「大学に進学する場合」で述べた「入学料」と、在籍する年数分の「授業料」「施設設備費」、また「受験料」などが必要となります。

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「学費以外」に出ていくお金も…。

進学先によって、金額は様々ですが、いずれにしても多額の教育費が必要になることは間違いありません。また、大学の学費以外にも、さまざまな費用がかかります。その代表的なものが、自宅外通学をすることになった場合のお金でしょう。

そこで、日本政策金融公庫が公表した、令和2年(2020年)度「教育費負担の実態調査結果」から、自宅外通学をした場合、子ども1人あたりにかかる費用をみていきます。

「自宅外通学を始めるための費用」平均39.3万円

25万円未満…34.5%
25万~50万円未満…30.0%
50万~75万円未満…24.8%
75万~100万円未満…3.5%
100万円~…7.2%

※2020年4月の入学時に自宅外通学を始めるためにかかったアパートの敷金、家財道具の購入費などの合計です。

「仕送り」年額平均90万3,000円(月額7万5,000円)

0万円…10.6%
0万円~50万円…15.4%
50~100万円…34.4%
100~150万円…26.5%
150~200万円…9.8%
200万円~…3.2%

※自宅外通学者が1人いる世帯

自宅外通学者への仕送り額は返還平均90万3,000円。月額7万5,000円と換算するとイメージしやすいかもしれませんね。前回調査の102.3万円よりさがってはいるものの、保護者にとってはそれなりの負担となる金額です。住居費については、その土地の相場などによって差が出てくることも考えられます。

さいごに

「教育費って結構かかる…」と感じた人も多いと思います。必要になる時期は決まっていますので、お子さんが小さいうちから計画的に準備していきたいものです。

毎月のやりくりがうまくいかず、ついつい「貯金」に手を出してしまう…という人も多いと思います。そんな場合は、教育費専用の口座を作って貯めていく、学資保険を利用するなどの方法を検討してみるとよいですね。

お金を用途によって「色分け」していくことで、貯蓄の進捗状況も把握しやすくなります。「これは長男の教育費用の貯蓄」といった“ラベル“をお金につけることで、途中で引き出したくなったときに、心理的なブレーキが働くことも期待できそうです。

また、高校卒業後の学費については、奨学金の活用を視野に入れるご家庭もあるでしょう。こちらはいわば借金。お子さん自身が就職後に返済していく必要があります。利用を検討したときは家族でしっかり話し合いをしましょう。

【参考】
平成30年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果について文部科学省
国公私立大学の授業料等の推移文部科学省
令和2年度 教育費負担の実態調査結果」日本政策金融公庫
『国立』『公立』『私立』『短期』大学の子供の学費、どれくらい違うのか」LIMO

【ご参考】貯蓄とは

総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。