宇宙から飛んできた隕石には、地球上には存在しない物質が付着していることがある。そういった物質が地球上に最初の生命をもたらしたというのが「リソパンスペルミア説」だ。
2018年にカナダ、オンタリオ州からアメリカ中西部にかけての夜空を照らした火球は隕石となって地表に落下したが、そこには、数十億年前に形成された無数の有機物が含まれていたという。これは地球上の生命の起源について手がかりになる発見になるかもしれない。
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凍結した湖に落下した火球
火球の正体は、2018年1月16日に地球の大気に突入した隕石だ。大気圏への推定突入速度は秒速数キロ。その衝撃は6ヶ所の地震計で検出されたほどだった。
隕石の軌跡は気象レーダーによっても捉えられており、すぐさまミシガン州ストロベリー湖に落下したことが突き止められ、くるみ大の隕石の欠片が回収された。
大気圏突入時の凄まじい熱によって9割は溶けてしまい、どうにか地上にまでたどり着いた隕石の欠片は、厚さ1ミリほどのガラスに包まれていたという。
隕石から2600の有機元素を発見
そしてそのガラスに包まれた隕石の中に、宇宙の地球化学に関する手付かずの記録が閉じ込められていたのだ。
落下地点は凍結した湖であり、速やかに回収されたおかげで、隕石の隙間に水が染み込んでしまうことはなく、地球上の胞子や微生物によって汚染されることもなかった。
米フィールド自然史博物館をはじめとする研究グループの分析では、そこに2600もの有機化合物が含まれていることが判明している。それらは数十億年も前に宇宙で形成されたものだ。
45億年前の岩石の様子を今に伝える
隕石に含まれていたウラン(同位体238と235)と崩壊して鉛になったもの(同位体207と206)の比率から、その大元の岩石が形成されたのは45億年前と推定されている。
当時、宇宙をただよう岩石は700度の高温にさらされて「熱変成」を起こしていたが、これを経た後、化学組成はほぼ安定して30億年が経過しているという。
また宇宙線への暴露を分析した結果からは、およそ1200万年前、何らかの衝撃がくわわったことで岩石が割れたらしいことも分かっている。2018年に地球に落下したのはその欠片だ。
過去に熱にさらされて変化したために、隕石は「H4」に分類されている。Hはイオンが豊富であることを意味し、4は熱変成で本来の組成が変化しただろうことを意味する。地球に落下した隕石の中で、H4に分類されるものはわずか4%のみだという。
有機物を含む隕石と地球内生命体の関係
地球の生命の起源は宇宙からもたらされたと説く仮説を「パンスペルミア説」と言い、その中でも他の惑星に由来する隕石や彗星に付着して地上に飛来したとする説を「リソパンスペルミア説」いう。ただの与太話などではなく、この説の正しさを裏付ける証拠はいくつも見つかっている(関連記事)。
もちろん、宇宙からもたらされた有機化合物から生命が誕生するまでには、「大きな一歩」が必要になる。それでも、今回の調査結果は、有機物を含む隕石が一般的であることを示唆するものだ。
太古の地球では、今よりも頻繁に隕石が落下していたことだろう。その中に、ミシガン州の湖に落下した隕石と同じようなものがあったとしてもおかしくはない。
生命のタネ播きには「隕石による有機物の注入が重要だったと確信してます」と、研究グループのフィリップ・ヘック氏は語っている。
この研究は、『Meteoritics & Planetary Science』(10月27日付)に掲載された。
References:space.com/ written by hiroching / edited by parumo
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