機械翻訳市場においてGAFAが圧巻の存在感を放つなかで、欧州や日本の企業が目覚ましい躍進を見せている。

(参考:GAFAの牙城を崩す対抗馬は、機械翻訳AIの発展で続々登場? ナミビアで開発中の革新的アプリから考える

 機械翻訳領域で急成長を遂げつつあり、世界的に目を引く存在であるのが、東京、大阪にオフィスを構える日本企業の株式会社ロゼッタだ。同社の2020年3月から8月までの財務成績によると、売上高は前年の同時期に比べ3.2パーセント増の19億9700万円、営業利益は2億2200万円である。

 ロゼッタは多岐にわたる語学関連事業を展開するなか、自動翻訳の開発を主要事業とする。2020年前半における自動翻訳事業の売上高は前年の同時期に比べ46パーセント増、一方の営業利益は42パーセント増となっている。一方、他事業である通訳・翻訳事業やクラウドソーシング事業では前年度の同時期に比べ売上高が40パーセント減少した。

 2004年以降、国内の機械翻訳市場におけるパイオニア的存在として業界をリードしてきたロゼッタ。コロナ禍でテレワーク需要が増加するなか、同社はゼネコン会社の飛島建設と業務提携を締結し、外国人就労者の多い建設現場での遠隔指導を実現する同時自動通訳システム『e-Sense』を提供開始している。建設業界と言えば特有の専門用語が多いが、難解な専門用語に対する通訳精度の高さが売りとなっている。

 国内市場において一目置く存在であるのがみらい翻訳だ。同社はプロの翻訳者並みの「TOEIC960点レベル」を謳った機械翻訳モデル『Mirai Translator』をリリース。同モデルは契約書や法令などの専門性の高い分野に特化しているのが特徴である。契約書や法令分野と言えば、難解な専門用語や複雑な文が多いがゆえに、機械による翻訳処理が難しいとされてきた分野である。

 機械翻訳市場はGAFAがほぼ独占していると言っても過言ではないが、ドイツ企業が提供する自動翻訳エンジン「DeepL」の登場により、状況は変わりつつある。

 さらに、北欧に拠点を置く機械翻訳企業Tildeもまた業界に多大な影響をもたらしている。同社は8月上旬、人間による修正をリアルタイムに拾い上げることで翻訳品質の向上を目指す革命的な機械翻訳向けダイナミック学習NMTモデルを発表。簡単に言えば、履歴に基づき翻訳テクストを提案する翻訳メモリと、ニューラル機械学習モデルを組み合わせたモデルであり、翻訳者によるフィードバックを解析し、正しい語彙や文体、用語を即座に学習する仕組みとなっている。

 モデルが稼働している限り、学習内容が次々と蓄積されていくため、文節単位で原文と訳文を照合する従来の翻訳メモリとは異なり、文脈単位でのよりスマートかつ正確な翻訳を実現可能である。Tildeの機械学習モデルは、主に翻訳者向けに提供される翻訳支援ソフトウェア『SDL Trados Studio』で体験することができる。

 ロゼッタみらい翻訳、そして北欧のTildeに共通することと言えば、機械翻訳の専門性の強化に力を入れている点である。汎用性の高い翻訳に重きを置くGAFAに対して、一線を画したビジネス戦略は、GAFAとの差別化という面でも有意な意味を持つであろう。

Source
https://tilde.com/news/introducing-latest-innovation-neural-machine-translation-tilde-mt-dynamic-learning

(大澤法子)

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