右左折や車線変更時にウインカーを出さない、あるいは出すのが遅すぎるクルマが見られます。警察も「基本的なルール」と話す合図、なぜ適切に行わない人がいるのでしょうか。

ウインカー出さない・遅すぎは命取り

右左折や車線移動、そのための幅寄せなどをする際にはウインカーで合図をするのがルールですが、その合図を出さない、あるいはタイミングが極めて遅いというクルマが見られます。

たとえば岡山県は、JAF(日本自動車連盟)が2016年に実施した意識調査で「ウインカーを出さずに車線変更や右左折するクルマをよく見る」と答えた人が全国最多の53.2%に上りました。そのような走り方を揶揄するものなのか、岡山県警によると「岡山ルール」なる言葉も存在するといいます。

合図のタイミングは道路交通法で、「右左折の30m手前」あるいは車線変更や幅寄せをしようとする「3秒前」とされています。岡山県警交通企画課は、「合図の不履行や遅れは、たとえば周りからそのクルマが直進するか右折するかが分からないため、対向車と正面衝突する要因になるほか、左折時の巻き込み事故の恐れもあります」と話します。

岡山では、交差点の30m手前に「★合図」と記された珍しい路面表示があることも知られます。県警によると、これは2005(平成17)年、岡山国体の開催に際して「基本的な交通ルールを浸透させる」意味をもって整備されたものだそう。

ウインカーを出さないと人が多いといわれることについて岡山県警交通企画課は、必ずしも県民全体がそう感じているわけではないとしつつも、合図不履行や横断歩行者保護違反など「基本ルール」についての取り締まりを強化しているといいます。

そもそもなぜ、ウインカーを出さない、あるいは出すのが遅い人がいるのでしょうか。

「親にそう言われた」という人も

ウインカーを出さないという人は、『面倒くさい』あるいは『出さなくても事故にならない』と考える人でしょう。出すのが遅いという人は、『早く出すのがカッコ悪い』と考えているのではないでしょうか」。ペーパードライバー講習などを行う東京都世田谷区の自動車教習所、フジドライビングスクールの田中さんは、このように話します。

ただ、「早く出すのがカッコ悪い」と考えるのは、若い人や初心者よりも、ベテランだといいます。

「早くウインカーを出すことが『カッコ悪い』などと直接的に口には出さないものの、『そんなに早くウインカーを出す必要はない』と親やベテランから言われた、という講習生が少なくありません」(フジドライビングスクール 田中さん)

教習所ではウインカーを出すタイミングを「30m手前」「3秒前」ときっちり習うものの、実際にはケースバイケースになるといいます。というのも、低速時と高速時とで時間や距離の感覚は大きく異なり、低速時に30m手前からウインカーを出せば、確かに早すぎるように感じるケースもあるとのこと。

「その感覚を基準として、『そんなに早くウインカーを出す必要はない』と初心者に教えてしまうから、『早く出すのがカッコ悪い』『周りから下手くそに見られる』などと考えるようになるのではないでしょうか」(同)

田中さんは免許を持っている人へのペーパードライバー講習などでは、ウインカーを出すタイミングをより実践的に、「右左折や進路変更のためにブレーキを踏む少し前」と教えるといいます。仮に60km/hで走行している場合は、かなり早いタイミングでの合図が必要になるとのことです。

ウインカーを出すのが遅いクルマ、なぜなのか。写真はイメージ(画像:Aliaksei Verasovich/123RF)。