老友新聞2020年11月号に掲載された都々逸入選作品をご紹介いたします。(編集部)

天の位

孫嫁ひとりで 耕しました
荒れ地に咲かせた 茄子の花

勝亦 はる江

「雑草菜園(ざっそうさいえん)」と秘かに作者は呼んでいたそうですが…実りが待ち遠しいですね。

地の位

愛の手塩で 咲かせた菊は
嬉し金賞 日本晴れ

惣野代 英子

当欄の以前の選者、谷口安閑坊氏は百歳に届く程のご長寿だったが菊作りの名人で、浅草観音境内や湯島天神などに菊鉢を多数ご奉納なさっていた。花との交流、羨ましい限りです。

人の位

鼻を突き上げ 目を細めつつ
風を読む気か 犬座る

向井 智恵子

私は犬を飼いませんが、一挙手(?)一投足が愛しいものなのでしょうね。

十客

お隣同士で 畑を覗き
芽が出た 葉が出た 出る笑顔

手銭 美也子

畑の仲良し隣り組。「出る」の完了形と現在形が心地よいリズムになっていますね。

冷やしビールは そりゃうんまいぞ
それじゃ一口 死ぬ思い

岡本 政子

下戸(げこ)の作者が、死ぬ思いでビールを飲むの図。「うんまいぞさん」に、ぞっこんなのですね。

タイヤ沈ませ 新米積んで
走る軽トラ 豊の秋

王田 佗介

風水害の厄いも無く五穀が幸せに実った豊年。「タイヤ沈ませ」が歓びをよく表している。

一夏(ひとなつ)過した 子つばめ連れて
南へ飛び立つ ツバクラメ

岸 慶子

軒端の巣で育った燕は我が子のようですね。

こんな不作は 初めて知った
冬の野菜に 掛ける夢

大石 志津江

不作を嘆いてばかりは居られない。次への努力が農の生活なのですね。

朝も早(はよ)から 大きな声の
カラスに元気を 貰う秋

鈴村 三保子

カラスの勘三郎でさえ相手にして呉れるなら、心の杖として元気の基(もと)にしようの気構え。常磐炭坑節の出ですね。

茅の輪潜りも 敬老会も
三密回避で ボツになる

櫓木 香代子

若者には来年もあるが敬老会だけは飛ばしてはいけませんよね。

何を買っても 包んでくれた
今は有料 ポリ袋

山田 浩司

そうでしたね。ポリ袋も進化して今は自ら水に溶けるそうですね。

コロナ収束 願って旗を
地蔵奉納 名前入り

高木 まつ

お地蔵様への奉納手拭。今年は名入りで気張りましたね。「収束」・「終息」も日刊紙上で解説されていましたね。

テレビ 新聞 コロナに染まる
ラジオも負けない全世界

小林 良一

コロナ禍は地球規模の課題なのでマスコミ全てが気を張っていますね。

「孫嫁ひとりで 耕しました 荒れ地に咲かせた 茄子の花」2020年11月入選作品|老友都々逸