“モテたい”──その一心で音楽活動を続けてきたピコピコ系ミュージシャン・ヒゲドライバーさんが、2020年にめでたく活動15周年を迎えられました。
【30代童貞から電撃結婚したヒゲドライバーをお祝いにいった話の画像・動画をすべて見る】
KAI-YOUでは、これまで、音楽活動についてはもちろん過去すべての恋愛遍歴まで、あらゆるお話をうかがってきました。
アニメ『機巧少女は傷つかない』のED「回レ!雪月花」の作詞作曲など数々のアニソンをはじめ、人気バラエティ番組「ゴッドタン」(テレビ東京)やアイドルへの楽曲提供といった、多岐にわたる音楽活動で成功を収め、その夢を叶えてきたヒゲドライバーさん。
しかし、そんな彼にも、30代に突入しても叶えていない夢がありました。それは、ミュージシャンとして成功するために時には封印さえしてきた、普通の恋愛、そして結婚です。
そんな中、2020年8月10日、驚くべきニュースが飛び込んできたのです。
「ミュージシャンのヒゲドライバーさん、声優の小澤亜李さんと結婚」(関連記事)
まさかの全部すっ飛ばして突然の結婚発表。偶然にも以前、ヒゲドライバーさんと小澤さんの対談も企画させていただいていた我々は、15周年をお祝いするという建前のもと、根掘り葉掘りうかがうべく、彼のもとを訪ねました。
隣には、いつものように、ヒゲドライバーさんをどん底から引き上げて信じ続けてきた(口は悪いけど)人間味あふれる事務所の社長・村田(裕作)さん。
構成:鈴木梢 取材・撮影:新見直
祝! ヒゲドライバー15周年を祝いにやってきた
15周年本当におめでとうございます!
ありがとうございます。10周年のときも取材してもらいましたけど、あっという間ですね…。この5年間で本当にいろいろありすぎて、わーっとやってきたら今! くらいの感覚ですよ(笑)。
お仕事はもちろん、環境もいろいろと変化があったと思いますが……そのあたりは追ってうかがうとして、今、ヒゲドライバーとして率直にどんな心境ですか?
そうですね、“ヒゲドライバーの第2章スタート”という気持ちですね。
なるほど…第2章のスタート、と……。
…ねえ、にいみくん。「こいつの話つまんないな」とか思ってない?
いや、思ってないですよ! いきなり何をおっしゃるんですか!! …でもやっぱり、ちょっと落ち着かれましたかね…?
数年前は本当にやばいくらいにがむしゃらに働いていたので、そのときに比べたら落ち着きましたね。生活もめちゃくちゃでしたし…。
生活がめちゃくちゃ?
そう。全然寝てなかったし、食生活も不健康な感じだし…でも最近は生活を改めるようになって。ちゃんと朝起きて、ごはん食べて、家事をして…
すんごい普通の話(笑)。
さすがにこのままの生活を続けていたら、心身共にもたないなとは思ってたから。今振り返ると、とんでもない生活をしてた…。
一時期、毎クール必ずヒゲさんが手がけられた楽曲が流れていましたもんね。
毎クールどころか、2017年なんてアニメタイアップだけで年間9曲とかつくっていたから、4クールに分けたら1クール2曲以上。どうかしてますよね(笑)。
昔、池尻大橋にあった「2.5D」という配信イベントスタジオでお会いした当時と比べると、すごい話ですよね。それだけ「ヒゲドライバー」のニーズが高まっていったということですから。
そうですね。もちろん今もコンペ(楽曲を募集するコンテストのこと)はあります。けど、当時はがむしゃらに「これ明日〆切だけどなんとか間に合わせる!」みたいな日々だったので…今は、参加するコンペも選ばせてもらうようになりました。
当然ですよね。お忙しいし売れっ子ですから。そうしてがむしゃらに駆け抜けた5年を経て、突然のご結婚ですよ! 本当におめでとうございます!(2回目)
あ、はい、ありがとうございます…(笑)。
後でおうかがいするつもりでしたが、やはりその変化を語っていただかないと話が繋がっていかないと思いました。KAI-YOUではこれまで、ヒゲさんの恋愛遍歴のすべてを語っていただいてきましたが…
確かにそうですね(笑)。
小澤亜李さんとのご結婚は、やっぱりターニングポイントになりましたか?
結婚はもちろんですが、それ以前に、恋愛をする気持ちになったことがまず大きいですね。
「恋人をつくるか、音楽を続けるか」を考えて、普通の恋愛を禁じた時期もあったほどですもんね。※1
※1 ヒゲドライバーさんは大学時代に大恋愛をして失恋後、再び別の女性といい感じになるも「音楽を続けるために踏みとどまった」過去を持つ(10周年のインタビュー参照)
そうなんですよ。
一方で、そのインタビューの最後に『そろそろ普通の恋愛をしてもいいんじゃないかな』ともおっしゃっていましたね。
2015年当時…というと、32歳ですね。正直な話、30歳の節目でちょっと考え方が変わってきたんですよ……変な言い方をすると「このまま30歳を超えてまだ“童貞売り”をしていくのか?」って。
それを自分で客観的に考えていたんだ(笑)。
本当に、「ガッキーに会いたい!」とか言っている場合じゃない。※2 恋愛をして、結婚を考えたほうがいいな…となんとなく思い始めて。
※2 「モテたい」という一心で音楽をはじめたヒゲさん。さらなる野望は自分の「三大天使」に会うことで、その1人がガッキーこと新垣結衣さん
このままじゃダメなんじゃないか? という意識が、ご自身の中で生まれてきたと。
とはいえ仕事も順調になってきた時期で忙しくて、なかなかすぐに恋愛…という感じでもなかったんですけど。仕事をがんばったなーってときに、良いタイミングでご縁があったんです。
結婚は、自分の道の真っすぐ先にあった
「童貞売り」というお話がありました。
童貞を“イジる”のはナンセンスだし時代遅れですが、ヒゲさん自身がホスト時代から童貞を“ネタ”にして踏ん張って来られたわけじゃないですか。※3
※3 大学時代、結婚を考えて手を出さなかった彼女に振られ、その理由が「男らしくなかったからじゃないか?」と考え、一転ホストになった過去がある
“コンプレックスが創作の原動力になる”ことは絶対にあるし、コンプレックスに限らずその人自身の特性が表現や作品自体に影響を与えることは少なくない。
ヒゲさんであれば、“童貞”というステータスが表現に与えてきた影響はあると思うんです。例えば初期の名曲『マイティボンジャック』とか、少なくともそういった影響が強く表れていたように感じます。
2020年にもなってそこを掘り下げていいのかっていうのはすごく悩んだんですけど、でも「ヒゲドライバー」という作家の作家性にとってすごく重要だと思うのでどうしても聞きたいんです。その変化が、ヒゲさんにどう影響しているのかということを……
まわりくどいけど、つまり「今の気持ちはどう?」って聞きたいの?
簡単に要約しないでくださいよ! 一言では言い表せない話なんですから…!
……言わんとすることはすごくわかるんですけど、僕としては別に急な変化じゃないんですよね。
自然なことだった?
お相手にしてもそうだし、結婚ということにしてもそうだけど、自分の道の真っすぐ先にあったことのような気がするんですよね。
童貞が結婚した、っていうとなんか真逆のことしたみたいに思われるんですけど、延長線上にあるんですよね。だから、表現とかがガラッと変わる気がしなくて。
急に起きた出来事じゃないから、急な変化もない。
そう。出会い方もそうだし、関係性とかもそうだし、すごく自然な流れで好きになったし、自分の中の違和感とか、無理しているような感じはまったくなかったんですよね。
「大事なのは、そこに至るストーリーだったんだ」
10周年の2年後、2017年に4thアルバム『ヒゲドライバー 4UP』がリリースされた記念で、小澤さんと対談していただきましたよね。
僕が「ヒゲさんは童貞だそうです」とぶっこんだ対談で、お互いの家族観みたいなお話が出たり、ヒゲさんも「今の目標は、女優、もしくはAV女優と結婚すること」と言ったりしていたのに、そのときには誰もが想像もしていなかった未来になったな…と思うわけですよ。
そうですよね…。
そうだ。夢叶ったじゃん! “女優と結婚”っていう夢が。声優さんも女優です。
確かに、夢を叶えてる…(笑)。
実際、ヒゲさんは着実に夢を叶え続けている人ですよね。音楽一本で食べていきたいと山口から上京して、成功して有名になって、そして女優と結婚もされた。
スローペースですけどね。37歳にしてようやくここまで辿り着いたという気もします。
いろんなメディアに、“ミュージシャンのヒゲドライバーさん結婚”って書いてあったもんね。自称じゃない“ミュージシャン”の表記!
いや本当に、あんなに大々的にニュースになるとは思わなかった…。
それはなりますよ。人気クリエイターと人気女優の結婚ですから。
あのとき、うちの10周年インタビュー記事がすごい注目されて、ありがたい一方で“童貞”がトレンド入りしたらどうしよう…入ったら僕の責任だ…とは思っていました。
それはそうだ(笑)。
でもみなさん、思い出してください。ヒゲさんが童貞だという話にきちんと応じてくださった小澤さんが、「卒業したときには是非インタビューしてほしいなぁ」とおっしゃっていたことを(関連記事)。だからこそ今日、僕はここに来ました!
伏線を回収しにきた! 本人が言ったなら、しょうがない。
だから僕は、世界中のゲスい心を一心に背負って、もう一度うかがいます。ヒゲさん、どうでしたか?
……(笑)。そうですねえ…………相手がいることなので、それ自体については言及しません。僕としては、もっと手前で発見があったり衝撃を受けたりしたんですよ。
たとえば?
それこそ、初めてお互いに気持ちを伝え合ったとき、手を繋いだとき…
初々しいタイミング。
そう。世の中でヒットしている恋愛ものも、一番盛り上がるのは初々しい経験じゃないですか。そこが一番歌になりがちな理由がようやく納得できて。大事なのは、そこに至るストーリーだ、ってことに気づけた。
童貞だったからこそ、この恋愛があって結婚があったと思っています。でも、童貞を捨てる捨てないは、実はそんなに大事なところではなかったんじゃないだろうか、と今では思います。
普通に、めちゃくちゃいい話だこれ。音楽の話一切してないけど。
自分にも気付かなかった感情を引き出してくれた人
では、伴侶を見つけられてから、ご自身に関する発見はありましたか?
意外と、自分にも“嫉妬心”とかあるんだなって思いましたね。
なんと。同級生の方々に「あんまり心を見せない」とか何考えてるかわからないところがあるとか言われていたヒゲさんに、嫉妬心が!※4
※4 非常にひょうきんで優しいヒゲドライバーさんながら、一方で幼馴染から「あんまり心を見せないところがある」と評される一面もあった
自分でも驚くんですよ。もともと僕はあんまり人に執着しないしわりとドライだし、自分のことばかり考えて生きてきた。でも今は、ちょっと敏感になることがあって…
それは大きな変化ですね……!
きっと多くの人が学生の頃とかに芽生える感情だと思うんですけど(笑)、僕の場合は最近ようやく、そういう気持ちが自分もあるんだって思いました。
そういう感情がなかったわけじゃないってことですね。
そう、彼女は初めて僕のそういう感情を“引き出してくれた”人だと思います。“人間味しかない”みたいな人ですし(笑)。
僕は感情を隠しがちな人間だけど、彼女は感情を全部出す人間。一緒にいると、つられて感情が出る瞬間がたくさんあって。人に対してドライだった自分が、ちょっとうるおいを持った感覚はすごくあります。
さっきからずっといい話だ……。
…にいみくん、いい話だって言ってるけど、顔はずっと不可解な表情をしてるけど大丈夫? 「俺が知ってるひねくれたヒゲドライバーと違う」みたいな。
いやいや、そんなことは…。全く悪い意味じゃなくて、人間って年齢に合わせてステージが変わりますし、いろんな方の影響を受けて今のヒゲさんがいらっしゃると思うと感慨深いですよ。
本当に?
それは本当なんですけど、それはそれとして、ヒゲさんからとんでもない話が出てきたら記者としては面白いんですけど…
今の絶対に(記事に)書いて! これ超大事だから!!
そりゃあそうですよ! 僕はひとりの人間として心から祝福しているのも本当です。
ただ、いろんなメディアで「モテたくて音楽始めたわけですけど結婚してどうですか?」って質問にサラッと答えられていて、本当にそうなのかなとかいろいろ考えてたのは事実です。だからこそ今日は直接うかがいたいと思って来ましたから。
結婚して変わった? ヒゲドライバーの“モテ”観
ヒゲさんのお母様に取材させていただいたとき、「あとは、結婚できるかどうかだけが心配」とおっしゃっていましたよね。※5 報告されたとき驚かれたんじゃないですか?
※5 病床のお父さんに「音楽をやりたい」と話したヒゲドライバーさん。お父さんは一言「好きなことやらせてやれ」とお母さんに伝え、お母さんは女手一つで東京に送り出してくれたのだった。お父さんが亡くなったあとも応援し続けてくれたお母さんが唯一心配していたのが「結婚できるかどうか」だった
それが、「そうじゃないかと思っていたのよ〜」と言っていて。
えっ、それはなぜですか?
僕の親は、インターネットにあがっている僕の写真を収集しているんですけど(笑)、その中から携帯の待受画面にしていたのが、なぜか僕と彼女が写っている写真だったんです。まだ付き合ってもいない頃だったのに。
そんなことあります…?
それも、2人だけ映ってた写真じゃないのに、サイズ的にたまたま僕と彼女のツーショットにトリミングしていたっていう。
付き合う前から、2人のツーショットがお母さんの待受画面にされていた。
たまたまだと思うんですけどね。けど、報告したら「そうなりそうな気がしてた」みたいなことを言ってました。
恐るべき親の直感…。結婚の報告を受けたとき、村田さんはいかがでしたか?
僕はもちろん全部知ってたから。うちの事務所の人間には、「もしも表に出る職業の人と付き合うなら結婚する覚悟で」とは伝えていたし、そもそもヒゲさんは結婚を前提にする人だし。
実際、「結婚しましょう」って言って付き合ってるから。
逆に、以前「そろそろ自分も普通の恋愛をしてもいいんじゃないかな」とおっしゃっていたので、もっとステップを踏むのかと思っていました…。
そもそも“普通の恋愛”の定義が、僕の中でバグっている可能性がある(笑)。結婚を前提として付き合うのが、僕の中では普通なので。
そういう人でした、ヒゲさんは。
それは、相手も同じだったんですよ。付き合うなら結婚前提、って。それがまた信頼できるなあと思いましたね。
それで“恋愛”か“音楽”かのどちらかを取るのではなく、両方を選べたと。
20代前半の頃はどちらかしか選べないと思っていたんです。けど、30代半ばにもなると人間ちょっと考え方が変わりますね。童貞という流れがあったからこそ、その延長線上に、音楽も結婚もあった。これが一番しっくりくるんです。
ただ、そうは言ってもヒゲドライバーと言えば”モテたい“を原動力に音楽をやってきたわけじゃないですか。
そもそも僕の“モテたい”ってちょっと違うんですよね。僕の思い描く“モテ”はひとりから愛されることではなく、どちらかと言えばワーキャー言われる的なこと。
道歩いててワーキャー言われたいの?
道歩いててまでじゃないけど…(笑)。自分がやることで世間を驚かせたいとか。
他のインタビューで「これからもっとモテるぞっていう気持ち」という発言もありましたが、結婚してもそこのモチベーションには本当に影響がないんですね。
考え方は変わってると思いますよ。自分に課してるものがなくなったっていうか、「何がなんでもがむしゃらにモテなきゃいけない」みたいなことから解放されたこともありますけど、今は“誰かのために”何かしたい気持ちのほうが大きいです。
目指すところが“ハーレムものの主人公”から“RPGの勇者”的な立ち位置になったみたいな?
うーん、どちらかと言えば“シムシティの市長”かな(笑)。
シムシティの市長……街をよくするマネージメント的なことですかね? ヒゲさんは5年前、よくおっしゃっていました。自分は世界を変えたいんだと。ヒゲさんの根底にある“世界を変えたい”という気持ちは今もなお強くある、ということですか?
そうですね。以前は世界を“自分の力で変えたい”だったのが、“みんなで変えていこう”みたいに変わってきた気がします。音楽に対するスタンス自体は変わっていないんですけどね。
音楽は今も昔も、ヒゲさんにとっては楽しいものであり続けている? ※6
そこは変わらないですね。
※6 音楽で食べていく決心をして上京するも、生活は苦しく、声をかけられて出したアルバム2枚は会社が倒産してギャラは未払い。やさぐれて、死ぬかもしれないほど貧乏だったどん底の時期。それでも「音楽は僕にとっていつも楽しいものだった」とヒゲさんは5年前にも語った
コロナ禍でのクリエイティブとインターネット
近年の環境の変化ということでは、やはり新型コロナウイルス感染症があります。コロナ禍でのクリエイターの方々って、「クリエイティブな気持ちにならない」人もいれば「逆にやる気が出る」人もいましたが、ヒゲさんはどちらですか?
うーん、あんまりどちらでもないですね。
わりと自然に受け止めた感じですか?
気分は下がることが多かったですね。でも、家に彼女がいて、犬がいて。それはだいぶ癒しになりました。だから、独り身だったら大丈夫だったかな…って。
こういう状況だとクリエイターは「自分の原点と向き合う時間になった」とか、そういう話もけっこう聞きました。
インプットはたくさんしました。一緒にゲームしたり、映画観たり、それこそ曲を一緒につくってみたり…。
何か印象に残っているものはありますか?
普段は映画とかそんなに観ないんですけど、一緒にいろいろ観て。あ、『ハリー・ポッター』を初めて観た(笑)。面白かったな。
観たことなかったんですね!
そうなんですよ。あと、『ストレンジャー・シングス』も面白かったな。「こんな面白いのか。みんながハマるのも納得だわ」ってなった(笑)。
2020年にようやく『ハリー・ポッター』とか『ストレンジャー・シングス』観て、納得したのか(笑)。
反骨精神もあり、今まで“王道”と言われるものにはあんまり触れてこなかった人生だったんですよね。けど、それも触れてみると、やっぱり王道が王道たる所以はあるなあと素直に思いましたね。
では、お仕事の環境面ではあんまり変わらなかったですか。もともと基本在宅で作曲制作を?
そうですね。そこはいつもどおりでした。と言いつつ、インターネット疲れるな…というのはあって。
インターネット・ミュージシャンが『インターネット疲れた』発言。
コロナ禍でそう思うようになっちゃったのも大きいですけど、インターネットを使うことがずいぶん一般化したじゃないですか。
もはやわざわざ“インターネット”って呼ばないくらい。
それくらい一般化しちゃったら、引っ張られすぎないようにして、自分の精神衛生を保つのは大事だなと思って。
そうですよね。
音楽も流行に左右されるようなことばかりしてるとつらくなりますし、インターネットもあんまり左右されるとしんどい。そもそも僕自身、“自分がちゃんと好きで続けられる”を大事にしてきたからこそ15年やってこられたから。
ヒゲさんはインターネットとの適切な距離、とれるようになってきましたか?
いや、全然(笑)。今まさに探っている最中です。難しいですよね。インターネットから離れようとテレビをつけてもYouTuberが出てくるとか、それだけ垣根がなくなってきていて、インターネットが一般化したので。
もともと“インターネット大好き”が先行してたわけじゃなくて、地方で音楽活動をしていた僕にとって“人と繋がれるのがインターネットだった”って感じなので。
人と繋がれるツールのひとつだった。
今は東京にいるからインターネットでしか人と繋がれないってわけじゃなくなった。あとは、ひとりじゃなくなったから言えるのかもしれないです。ひとりだったらインターネットしか見るものがなかったから。
今日ほとんど結婚の話をうかがってしまいましたが、やっぱり結婚の影響ってあらゆる面で大きいんだなって思いました。
結局そこに軸があって、生活と音楽ができている感じはしますね。
改めて、“ヒゲドライバーの第2章”
同級生にお会いし、ご実家にまで押しかけ、何度も取材させていただいた僕からすると、とても失礼ですが偏屈でひねくれたヒゲさんが、どんどん自由になられているなって感じます。
半生を振り返っていただいたときに思ったのが、ヒゲさんは自分に「こうしなきゃ」って枷をかけるじゃないですか。※7 自分ルールというか。そこからどんどん自由になっていると思うんです。
※7 結婚する前提だから手を出さずにフラれてしまった元カノとのこと、逆に男らしさを学びたくてホストになったこと、同じニコ動出身だけど当時ボカロPとはコラボしないと決めていたこと、音楽に集中するために恋愛を封印したこと etc…ヒゲドライバーは強いこだわりを自分に課しているようなところがあった
ああ、自分ルール…そうですね。自分本位的だったけど、丸くなったと思います。
かつて、「絶対に楽曲はチップチューンじゃないといけない」という強迫観念があったヒゲさんが、村田さんと出会ったことでそのこだわりを捨てて作風が広がったという話がありました。※8 このご結婚も、良い意味で作用されて、その枷が外れていっているように思えました。
※8 アルバムをリリースするも収入がもらえず路頭に迷いかけた時代。チップチューンから知ってもらったファンが離れていくことを恐れたヒゲさんだったが、村田さんのアドバイスをうけてチップチューンに固執することを辞めた。結果、作風を広め活動領域が広がり、作家として成功した今に至る
そう言われると、自分ルールみたいな考え方は確かにちょっと変わったかな…。相手がいることもあって、表現の面でも“誰かのために”って考え方のほうが多くなったかもしれないです。
こじつけではなく、『ひげこれ!』を含めてこれまでの作品を改めて通しで聴いてみると、やはり作風が広がって多様な楽曲が生まれていると感じるんですよね。
久しぶりにお会いしましたが、良い意味で充足されている感じがありますし。
充足してるんですか?
充足してるのかなあ…でも、してると思います。はい。
私生活は充足してるんだろうけど、全体的には?
アーティストとしてはまだかな。まだできることあるなとは思うようになった。今までと同じようにやっててもなって。「音楽だけで!」って気持ちではなくなったんですよね。
それは、何かきっかけはあったんですか?
やっぱり『Re:ゼロから始める異世界生活』がひとつのでっかいポイントだったんですよね。劇中で『Wishing』が流れて、自分の音楽で一番泣いたってくらい泣いちゃって、「それはなんでだ?」って考えて。音楽って、音楽以外のところで演出できるんだなって気づいたんですよね。
音楽も加わった物語が一番強いと考えたから?
一番とまでは言わないけど、音楽以外の手段で、音楽がわっと届く可能性があるんだなって。音楽が好きで、音楽をつくりたい気持ちはもちろんありますけど、その周りも見るようになったというか。
せっかくインターネットの時代なので、いろいろチャンスはあると思いますし、まだチャレンジできることはたくさんあるなと。
具体的に何かチャレンジし始めてるんですか?
最近は海外向けのYouTubeを始めたり、あとは「ゲームをつくりたい」って話をしていたり。イラストレーターのよむさんと「ヒゲとタイツと女子高生と」っていうプロジェクトも始めるし。
ありがたいことに、周りの人から「ヒゲドライバーさんとこういうことをやってみたい」と言っていただくこともあります。
本日、「ヒゲとタイツと女子高生と」をよむさん( @y_o_m_y_o_m )とはじめます!
— ヒゲドライバー (@higedriver) October 1, 2020
これからおもしろいこといろいろ出していくのでお楽しみに! pic.twitter.com/dWhvfIytoX
音楽じゃないものが音楽を引き立てるという意味では、アーティストにとっては、ご自分の物語もそれに入るわけですよね?
確かにそうですね。自分の人生が、音楽に彩りを与えられたらいいなとは思います。
この言い方があっているかはわからないですけど、ヒゲさんの場合、どん底があって、死別があって、その上で自分の理想を掲げて、成り上がっていっている物語じゃないですか。有言実行で夢を叶えてきた物語。その物語は強いと思うんですよね。
童貞売りだったのがいきなり結婚して、その彩りがどうなるか…武器にしていけたらいいですね。
そのためにもお幸せになられてください…!
そうですね(笑)。
最後に、聞きたいことがあります。組み合わせが組み合わせなだけに、結婚しても発表しないという方法もあったと思います。なぜ、あえて発表されたんですか?
僕も相手の方もそうなんですけど、隠すのが嫌で。悪いことしているわけじゃないし、それも失礼というか、応援してくれる人達に対して悪い気がして。
童貞ネタも使わずうやむやにしながらこれから生きていくのか、と(笑)。スパッと発表して、堂々と「この人を愛しているんです」っていう人生でいいんじゃないかなって。そこは迷いがなかったです。向こうも絶対に発表したいって言ってくれました。
素晴らしいですね。以前は逆の風潮でしたが、近年、みなさん結婚を発表されるようになったように感じます。
カップルYouTuberが人気だったりとか、そういうこともオープンにして認められる日本になってきたような感じもするので、タイミング的にも良かったのかなって思いますね。
過去には声優さんの結婚発表で荒れるケースもありましたが、お二人の結婚をみんなが祝福されていて、それがすごく印象的でした。
ありがたいです。
オープンな時代にもなったし、特にヒゲさんの場合は全部さらけ出されてきましたもんね。
そう、ここだけ隠すっていうのも変なので(笑)。
僕が言うのもなんですが、ヒゲさんは、本来ミュージシャンが話す必要のないことも赤裸々に語ってきてくださったじゃないですか。これまで付き合ってきた女性遍歴や子供の頃の恥ずかしい話、それにご家族の話まで。だからこそ、ミュージシャンとしてはもちろんですが、みんな「ヒゲドライバー」を応援してくれるんだと僕は思います。
「15周年記念の曲をつくってください」と言ったんですよ。今までの半生を振り返って、自分の中から出る15周年の曲を。
完全にオリジナルのやつです。それは今つくっていますね。15周年が終わらないうちに…年内には出します!
それは本当に楽しみですね。今日は赤裸々にお話いただきありがとうございました。本当に、おめでとうございます!(3回目)
恋愛と音楽の両立の道を見つけたヒゲドライバーさんは、第2章に突入。これまでどおり音楽活動を続けていくのはもちろんのこと、より多くの人々に音楽を届けていくための活動の拡張についてもうかがうことができました。
本当に活動15周年、ご結婚、おめでとうございます。これからもKAI-YOUはヒゲドライバーさんのご活躍を追いかけていきます。
12月4日追記:読者プレゼント
ヒゲドライバーさんの直筆イラスト付き『HIGE DRIVER BEST in KADOKAWA ANISON「ひげこれ!」』を3名の方にプレゼントいたします!
下記概要を確認し、ふるってご応募下さい。
【応募方法】
1.KAI-YOU.netのTwitter(@kai_you_ed)をフォロー
2.以下のツイートをリツイート
ヒゲドライバーさん( @higedriver)のサイン入りCDを3名様にプレゼント!
— KAI-YOU (@KAI_YOU_ed) December 3, 2020
1. @KAI_YOU_ed をフォロー
2. このツイートをRTで応募完了(※12月10日(木)23:59〆切)
㊗️ヒゲドライバーさんのお祝いインタビューはこちらhttps://t.co/Qk3GiU5A8I pic.twitter.com/39PIK0hUvw
【応募期限】
2020年12月10日(木)23時59分まで
【応募条件】
・日本国内に在住の方
・KAI-YOU.netのTwitterをフォローしている方
・TwitterのDM(ダイレクトメッセージ)を受信可能な方
【当選発表】
ご応募いただいた方の中から抽選し、当選者を3名決定します。
当選者のみ、TwitterのDMにてお知らせいたします。
※都合により当選通知のご連絡が遅れる場合がございます。あらかじめご了承ください
※都合によりプレゼントの発送が遅れる場合がございます。あらかじめご了承ください
※住所の不備や転居先不明・長期不在などによりプレゼントをお届けできない場合は、当選は無効になります
※本キャンペーンの当選権利を他者に譲渡することはできません
※ご連絡後、一定期間お返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
※発送は当選お知らせ以降、順次対応させていただきます。
(c)KADOKAWA CORPORATION 2019 , (c)2013 海冬レイジ・株式会社KADOKAWA メディアファクトリー刊/機巧少女は傷つかない製作委員会 , (c)椿いづみ/スクウェアエニックス・「月刊少女野崎くん」製作委員会 , (c)得能正太郎・芳文社/NEW GAME!製作委員会 , (c)得能正太郎・芳文社/NEW GAME!!製作委員会 , (c)VALKYRIE DRIVE PARTNERS , (c)長月達平・株式会社KADOKAWA刊/Re:ゼロから始める異世界生活1製作委員会 , (c)カルロ・ゼン・KADOKAWA刊/幼女戦記製作委員会 , (c)つくみず・新潮社/「少女終末旅行」製作委員会 , (c)2017 羊太郎・三嶋くろね/株式会社KADOKAWA/ロクでなし製作委員会 , (c)榎宮祐・株式会社KADOKAWA刊/ノーゲーム・ノーライフゼロ製作委員会 , (c)伍箇伝計画/刀使ノ巫女製作委員会 , (c)YORIMOI PARTNERS
コメント