ライブのタイトルが全てを物語っていたと言っていいだろう。22/7(ナナブンノニジュウニ:通称ナナニジ)が11月13日(金)に東京・新木場STUDIO COASTで開催した無観客の配信ライブ『11(イレブン)』。

2016年のクリスマスイブにデジタル声優による11人組のアイドルグループとして結成されたナナニジだが、CDデビュー1周年の記念日となる2018年9月までは8人のキャラクターのみが明かされていた。そのため、それまでにリリースされた「僕は存在していなかった」「シャンプーの匂いがした」「理解者」という3枚のシングルの表題曲は8人のメンバーで歌唱。2019年8月リリースの4thシングル「何もしてあげられない」は、初めて11人が参加した楽曲となったが、2020年2月リリースの5thシングル「ムズイ」は、TVアニメ『22/7』のストーリーに合わせて再び8人に。メンバーの卒業と加入、体調不良による活動休止と復帰を経て、今年の9月20日(日)にLINE CUBE SHIBUYA渋谷公会堂)にて開催された3周年記念ライブ『22/7 Anniversary Live 2020』は11人が初めて揃ったワンマンライブとなっていたが、「シャンプーの匂いがした」や「人格崩壊」は、高辻 麗、武田愛奈、涼花 萌の3人が参加しない8人でのパフォーマンスとなっていた。

メンバー全員で、11人でステージに立ちたいというのが彼女たちの意思だったのだろう。この日のライブは、ユニット曲やキャラソンメドレー以外で8人になることはなかった。

そして、『11(イレブン)』と名付けられたライブはいつものメンバー紹介を兼ねたオープニングVTRと「Overture」が流れることなく、19時30分にいきなりはじまった。拳に力を込めたメンバーが<納得できないことがあるなら 声をあげるべきだ>と力強く意思を表明する最新シングル「風は吹いてるか?」から、前回とは少し違った印象を受けた。天城サリーはカメラに向かってウィンクを投げかけ、西條 和と河瀬 詩は迷いや葛藤を吐露し、帆風千春が宝塚の男役トップスターのような迫力のある声で背中を押してくる。何が変わったのか。宮瀬玲奈がセンターで<君が好きだ>と告白し、白沢かなえと武田愛奈が続く、甘酸っぱい初恋ソング「ポニーテールは振り向かせない」ではっきりと分かった。これまでよりも格段にグループとしてのまとまりが出ているのだ。セリフパートではそれぞれの個性を発揮させながらも、例えば、振り向いて背中でハートを描くタイミングなど、細かいフォーメーションがしっかりと揃っている。後ろ向きのメンバーが一人ずつ振り向いていく「不確かな青春」への流れもスムーズで、この曲では、西條と高辻、河瀬と涼花など、ペアを組んだ女の子たちが校内をおしゃべりしながら歩いているようなシーンも見えた。スカートの裾を持ってひらひらと揺らしながら踊る「願いの眼差し」では、常に笑顔の倉岡水巴海乃るりだけでなく、西條も珍しく楽しそうな笑顔を見せていたのが印象的だった。

開演直前にサプライズでMVが公開された “晴れた日のベンチ”が明るく元気に弾んだ「半チャーハン」、セクシーかつ妖艶な“蛍光灯再生計画”による大人の愛の歌タトゥー・ラブ」、“気の抜けたサイダー”が仲良く手を繋ぎながら歌った「ソフトクリーム落としちゃった」というユニットコーナーを経て、初のキャラソンメドレーコーナーへと突入。トップバッターの倉岡はヴィブラスラップが鳴り響く演歌でこぶしをきかせ、海乃はヴェルベッドの幕と豪華なシャンデリアをバックにワルツミュージカル風に歌唱し、帆風はミラーボールの真下で歌謡ディスコを熱唱。白沢はラウンジ前で眼鏡を使って感情を隠しながらテクノポップをクールに歌い、河瀬は80年代アイドルさながら、バルコニーで懐かしの『ザ・ベストテン』風の演出で歌唱。西條と天城は客席フロアで裸足で踊り、宮瀬はVIPルームでハットとコートがかかったラックを男性に見立ててスイングし、涼花、高辻、武田の3人はステージ上に戻り、キャラソンメドレーのトリを務めた。客席フロアやラウンジ、バルコニー、楽屋や通路など、普段のライブでは使えない場所を使いながら、画面に出るタイトルや歌詞も曲調に合わせてフォントを変えるこだわりようで、無観客の配信ライブならでわの特徴を最大限に生かした演出となっていた。

ライブの衣装は、前半が最新の6thシングル「風は吹いてるか?」のアーティスト写真で着用していたグリーンの制服で、メドレーはキャラクターの私服のようなガーリーなワンピース。そして、後半からは表題曲で初めて11人が揃った4thシングル「何もしてあげられない」のエンジの制服となっていた。『11(イレブン)』という言葉の輪郭と意味性が次第に強く鮮やかになっていく。

帆風が「私たちと一緒に走ってください」と画面越しに呼びかけた「韋駄天娘」。腕や体を回すフリがしっかりと揃い、V字になったメンバーの先頭に立った天城がダイナミックに踊った「ロマンスの積み木」。2つの円を描きながら、次第にスピードを上げていく、11人での大きなウェーブも展開した「Rain of lies」。そして、宮瀬が視聴者の心を鷲掴みにするような視線を投げかけた「未来があるから」から「何もしてあげられない」へ。西條、河瀬、宮瀬という3人と高辻、武田、涼花という3人の対比。孤独や悲しみを胸に抱えて立ち止まっている西條と、その姿に気づかずに歩き続ける傍観者役の10人。全てがストップモーションとなった中で、リーダーの帆風と天城が歌いながら歩く構図や、11人で作り上げた枝葉の広がる木など、ストーリーを感じさせる内容となっていた。

ここで、突然、暗転し、ナナニジにしては珍しく、ライブリハーサルの初日に密着したドキュメント映像が流れた。「新たなストーリーがあるよって安心して頂きたいです」というコメントに続き、メンバー紹介を兼ねたオープニングVTRと「Overture」が流れ、カウントダウンを経て、“11”という数字が映し出された。ここからが、11人の新たな始まりということだろう。

メンバーは5thシングル「ムズイ」の水色の衣装を着て、11人で「ムズイ」を初披露した。客席フロアで体をのけぞりながら歌い、踊る11人をカメラは360度回転しながら追いかける。高辻と武田が抱き合うフリもあった。速いパッセージの「僕らの環境」ではサークルを作った中で一対一で対決するバトルのようなシーンもあり、さらに激しさを増していく「足を洗え!」では殴るようなフリを見せながら、“前へ進め、新しい道を生きろ、見知らぬ世界へ自分を向かわせるんだ”というメッセージをぶつけ、「空のエメラルド」では11人が横一列となり、倉岡を中心に美しく澄んだ歌声を響かせた。

最後のMCでは、涼花が「今回のライブのタイトル『11(イレブン)』という意味が皆さんに伝わっていたらいいなと思います」と語ると、高辻は涙を堪えながら、「こうやって11人で同じステージで、一緒に歌うことができて本当に嬉しいです。待っていてくださった皆さん、一緒に信じてくれて、本当にありがとうございます」と感謝の気持ちを伝え、ラストナンバーとしてフォークバラード「11人が集まった理由」を歌唱。帆風&天城から始まり、高辻、武田、涼花の3人、そして、白沢&河瀬、西條、宮瀬、海乃、倉岡へと歌い継いでいく。彼女たち、11人が歌っているのは希望であり、新しい日の始まりだ。私たち、11人であれば、どこにだっていける。じゃあ、どこに行こうか。11人のナナニジの未来はここから始まる――。

文 / 永堀アツオ

22/7 『11 (イレブン)』
2020年11月13日(金)@新木場STUDIOCOAST

セットリスト

1. 風は吹いてるか?
2. ポニーテールは振り向かせない
3. 不確かな青春
4. 願いの眼差し
5. 半チャーハン/晴れた日のベンチ(海乃るり倉岡水巴高辻麗・武田愛奈)
6. タトゥー・ラブ/蛍光灯再生計画(河瀬詩・白沢かなえ・帆風千春宮瀬玲奈)
7. ソフトクリーム落としちゃった/気の抜けたサイダー(天城サリー・西條和・涼花萌)
キャラソンメドレー
8-1. 夢の船/河野都(CV.倉岡水巴)
8-2. 人生はワルツ/戸田ジュン(CV.海乃るり)
8-3. 優等生じゃつまらない/佐藤麗華(CV.帆風千春)
8-4. 感情無用論/丸山あかね(CV.白沢かなえ)
8-5. 孤独は嫌いじゃない/斎藤ニコル(CV.河瀬詩)
8-6. One of them/滝川みう(CV.西條和)
8-7. 生きることに楽になりたい/藤間桜(CV.天城サリー)
8-8. Moonlight/立川絢香(CV.宮瀬玲奈)
8-9. 神様に指を差された僕たち/神木みかみ(CV.涼花萌)・東条悠希(CV.高辻麗)柊つぼみ(CV.武田愛奈)
9. 韋駄天娘
10. ロマンスの積み木
11. Rain of lies
12. 未来があるから
13. 何もしてあげられない
14. ムズイ
15. 僕らの環境
16. 足を洗え!
17. 空のエメラルド
18. 11人が集まった理由

22/7 タイトル『11(イレブン)』の意味を噛み締め、全員で歌った“希望”。新作のリリースも発表された無観客配信ライブをレポートするは、WHAT's IN? tokyoへ。
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掲載:M-ON! Press