アメリカのジョージア州アトランタにある小児病院「Children’s Healthcare of Atlanta」で、14年にわたり集中治療室の新生児に愛情を注ぎ、抱っこするボランティアを続けていた男性が、がん闘病の末、今月14日に86歳で旅立った。
長期入院を呼びなくされている子どもたちと長年触れ合ってきた男性は、子供らの親や病院関係者から“ICUグランパ(集中治療室のおじいさん)”と呼ばれて親しまれていたという。『11alive』などが伝えた。
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'NICU Grandpa' dies after cancer battle
小児病棟でボランティアを14年間続けたおじいさん
ICUグランパとして知られるデイヴィッド・ダッチマンさんは、2002年、41年務めたインターナショナルビジネス・マーケティング部門の仕事を引退すると、地元の複数の大学などで講義を行っていた。
その後、自由な時間を有意義に使いたいと、アトランタの小児病院「Children’s Healthcare of Atlanta」でボランティアを志願。週2日、それぞれ小児集中治療室(PICU)と新生児集中治療室(NICU)で赤ちゃんを抱っこする活動を始めた。
毎週2回、各部屋を訪ね、赤ちゃんや子供たちを優しく抱っこしたり、手を握りながら子守唄を歌ったりして、癒しを与えることに専念するデイヴィッドさん。子供たちの親や病院関係者らは、親しみを込めて彼を“ICUグランパ”と呼んだ。
そんなデイヴィッドさんの姿が2017年にメディアで取り上げられると、世界中で“ICUグランパ”の姿が広く知られることとなった。
当時、デイヴィッドさんはメディアの取材でこのように語っていた。
もう1000人以上の赤ちゃんを抱っこしたよ。12年はあっという間だった。私の友人のなかには、「病院でいったい何をやっているんだい?」と不思議がる人もいるけれど、彼らは、赤ちゃんを抱っこできることで得られる報酬があることを知らないんだ。
ここでのボランティアにはとても満足しているよ。泣いている赤ちゃんがいたら泣き止むように手伝うというだけではなく、赤ちゃんを抱っこし続けていると温かい繋がりが生まれるんだ。
赤ちゃんが私の胸に顔をくっつけて私の心音をじっと聞いている姿を見るだけでもだけでも、とても嬉しい気持ちになるからね。
私は、赤ちゃんを癒すことが大好きだけど、この病院の雰囲気もとてもいいからボランティアを続けているんだ。
David Deutchman, known as the 'ICU Grandpa,' comforts sick children
がん闘病の末、86歳で他界
デイヴィッドさんの活動は、子供たちの親にとってもかけがえのないものだった。病院のSNSには、多くの親から彼への感謝の気持ちがシェアされるなど、デイヴィッドさんは病院にとってはなくてはならない存在となっていた。
しかし、去年秋から体調を崩していたデイヴィッドさん。今年は最初からコロナによるパンデミックで活動を自粛していたが、そんな時、ステージ4の膵臓がんだと診断された。
11月10日、闘病生活に入るためやむなくボランティアを辞退したデイヴィッドさんのことを知った病院関係者たちは、デイヴィッドさんの長年の貢献に敬意を表明しようとグランドフィナーレを開催。
NICU専用輸送車が先導となって、30台におよぶ車が彼の家の周りを旋回。クラクションが鳴る車の中からは、過去にデイヴィッドさんに抱っこしてもらったり、子守唄を歌ってもらった子供たちが手を振り、病と闘うICUグランパにエールを送った。
In 2017, the story of our "ICU Grandpa" touched people all over the world. Last week, we learned he has stage IV pancreatic cancer. To honor this legend, our employees organized a drive-by parade outside his home—complete with a NICU transport truck and🚁. pic.twitter.com/NsS5fuFtK2
— Children's (@childrensatl) November 10, 2020
その数日後の14日、デイヴィッドさんは息を引き取った。
デイヴィッドさんの家族は、彼の死についての声明文を出し、娘のひとりであるスーザン・リリーさんは、次のように亡き父の死を悼んだ。
私たちの素晴らしい父がこのほど旅立ちました。小児病院でのボランティアは、父の人生を完全に豊かなものにしました。父にとって、子供たちやそのご家族と触れ合う時間は、何より大切なものでした。既に父を恋しく思う気持ちでいっぱいです。
14年という長きにわたり、デイヴィッドさんが触れたかけがえのない無数の命。デイヴィッドさんの魂は子どもたちの心の中に生き続けることだろう。
やさしさは必ず連鎖する。デイヴィッドさんに触れた子供たちが大人になった時、第二、第三のICUグランパが誕生していくことだろう。
written by Scarlet / edited by parumo
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