サン・セバスティアン国際映画祭(スペイン)のオフィシャルコンペティション部門に出品され、最優秀撮影賞に輝いた『泣く子はいねぇが』の公開記念舞台挨拶が11月21日、東京・新宿ピカデリーで行われ、主演の仲野太賀、共演する吉岡里帆、寛一郎、柳葉敏郎、本作が長編デビュー作となる佐藤快磨監督が出席した。

秋田の男鹿半島を舞台に、覚悟がないまま、父親になった挙句、ある不祥事が原因で、家族と故郷を捨てざるを得なくなった主人公(仲野)の葛藤と成長を描く。2014年、『ガンバレとかうるせぇ』でぴあフィルムフェスティバル映画ファン賞(ぴあ映画生活賞)&観客賞をダブル受賞した佐藤監督が約5年の歳月をかけ、オリジナル脚本を執筆。その脚本にほれ込んだ是枝裕和氏が企画を担当した。

ついに主演作が封切られた仲野は「誇らしい気持ちでいっぱいです。皆さんにどんな風に受け取ってもらえるのか楽しみで、ワクワクしています」と期待感。佐藤監督から「昨日(公開初日)、秋田では『鬼滅』(劇場版『鬼滅の刃無限列車編)に勝ったみたいです」とうれしい報告が飛び出すと、「やっぱり鬼じゃなくて、ナマハゲですね」と声を弾ませた。

また、共演した柳葉とは幼少期から親交があるといい「今回、柳葉さんに父親代わりの役どころを演じていただき、強烈な縁を感じました」と感慨深げ。「毎年お正月には、“柳葉詣”するのが仲野家の伝統。ちっちゃい頃からわんさか泣かされて、僕にとってのナマハゲでした(笑)」と振り返ると、当の柳葉は「太賀のことは生まれたときから知っていまして。そんな彼の作品で、この場にいられるのは胸がいっぱいです。ご両親も喜んでいるはず。なっ、太賀、おめでとう!」と目を細め、祝福していた。

舞台挨拶では登壇者が自身の出身地の“ふるさと自慢”を披露する場面も。映画の舞台となった秋田県出身の柳葉は、照れくさそうに「柳葉敏郎」を秋田の自慢に挙げ、「この柳葉敏郎を育ててくれた。それだけ心が広い人たちがいる土地なので、ぜひ遊びに来てください」とアピール。本作について「秋田から生まれた作品ですし、ちょっぴり責任を背負いながら、非常に楽しく、本当にあったかい時間を過ごすことができました」と思いを語ると、佐藤監督は「柳葉さんは秋田の若者が頑張っているなら、いつでも力になるとおっしゃってくださった」と柳葉の秋田に対する“恩返し”に感謝を示していた。

取材・文・写真=内田 涼

『泣く子はいねぇが』
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