―[言論ストロンスタイル]―


ネトウヨ言論人どもの所業、目に余る

 自画自賛する。倉山塾、チャンネルくらら、救国シンクタンクで発信される情報を追っていた方々にとっては、何ら驚くに値しない結果である。アメリカ大統領選挙に関してだ。

 ちなみに倉山塾とは私が塾長を務めるオンラインサロンチャンネルくららとは私が主宰するインターネット番組、救国シンクタンクとは私が理事長兼所長を務める一般社団法人である。どのような団体かはそれぞれインターネットで検索してほしいが、問題はそこではない。また、私は自分が優れていると威張りたいのではない。私が自慢したいのは、誰が正しい言論をしているのかの見極めである。

 4年前の大統領選挙では、週刊SPA!本誌でもお馴染みの江崎道朗先生の論説に依拠させていただいた。今回は渡瀬裕哉先生の言説を信用した。両先生にはチャンネルくららでそれぞれレギュラー番組をお願いし、救国シンクタンクでも研究員をお願いして3人で運営している。

 普段なら、こんな自慢めいた話はしない。だが、今回は前回に輪をかけた、あまりにも惨い報道と評論が垂れ流された。目に余る。そして、そうした言論をなしている輩のほとんどが確信犯だ。読者にも警鐘を鳴らす意味で、まずは悲惨すぎる日本の言論状況を振り返りたい。

◆4年前。日本のメディアでは…

 まず4年前。日本のメディアでは、ドナルド・トランプは開票の日までイロモノ扱いだった。当選後も、某大手新聞などは1年以上も毎日、比喩ではなくトランプの悪口を書き続けた。リベラルはもちろん、保守を標榜するメディアにも嫌われた。

 なぜか。トランプは本気でアメリカの体制派、すなわちエスタブリッシュメントに立ち向かったからだ。確かにトランプ個人は、下品だ。だが、トランプを支える共和党保守派は、民主党及び共和党主流派により形成されるエスタブリッシュメントに対し、緻密に作戦を立て、地道な草の根活動を行い、政権を奪取した。

 そして、エスタブリッシュメントが行ってきた多くの惨状を是正した。

 内政においては、行き過ぎた反差別運動である。たとえば、オバマ政権下では「トイレや更衣室の男女差別をやめろ」との動きまで噴出した。トランプ民主党政権が推進し、共和党主流派が容認してきた、アメリカ社会の歪を、大きく修正した。

 外政においては、中国との対決である。トランプは景気を回復させるや、いわゆる貿易戦争を仕掛けた。アメリカから覇権を奪おうとする中国を牽制しようとした。

 トランプは同盟国の日本に対しても、正直に要求してきた。第二次大戦後の歴代アメリカ政府は日本を従属国として扱ってきた。しかし、今後は対等の同盟国として付き合いたい。その為の努力、核武装も含めた自主防衛をする気はないか、と。

 アメリカエスタブリッシュメントに従属することで権力を握ってきた日本の体制派がトランプを嫌うのは、理の当然だろう。

ネトウヨメディアに出演する言論人に、言論の正当性などという概念はない

 江崎先生から教わったのは、「トランプは単なるイロモノではないからこそ嫌われている」という事実である。4年前、マグレ当たりと願望で「トランプ当選を言い当てた」とする論者は多くいるが、根拠の確かさに関しては、江崎先生の4年前からの言説を確認してほしい。

 トランプ政権の4年間、安倍晋三前首相は良好な関係を築いた。実態は、トランプ個人のご機嫌を取りつつ、エスタブリッシュメントが政権を取り返した時にも備えていただけである。本気で自主防衛をできる力を付けてアメリカを支え、中国と対峙しようなどという気はサラサラ無かった。その証拠に、トランプが「せめて防衛費GDP2%くらいの努力はしてくれ」と求めてきたのを、テキトーにあしらった。安倍内閣を通じて、防衛費は1%未満を墨守している。

 民主党の政権奪還を渇望するマスメディアに対し、ネトウヨメディアは「安倍・トランプ同盟」に対し帰依の如き応援を繰り広げた。「マスコミは嘘ばかりだ!」「最後はトランプが絶対に勝つ!!」と言い続けた。理由は簡単で、客であるネトウヨを喜ばせるためである。

 そして開票の大勢が判明してからは、「史上空前の不正選挙だ! このようなことが起きるとは思わなかった! アメリカ民主主義は死んだ!」と絶叫し、今も「まだ選挙は終わっていない!」「トランプは逆転している!」と怪しげな出所のフェイクニュースを発信し続けている。あげく、「バイデンに祝電を送るとは、菅首相は何事か! 習近平プーチンを見習え」と主張する。異常な光景としか、言いようがない。

◆言論の正当性などという概念はない

 ネトウヨメディアに出演する言論人に、言論の正当性などという概念はない。サービス業の如く、客が望む言論を発するだけだ。そして、職業倫理の無いサービス業として、「客にとって気持ちが良いが、体に悪い」言論を提供し続ける。現在では「バイデンは投票用紙にGPSを仕込んだ」などと、訳の分からない言説を拡散している。それが本当なら、来年のノーベル賞は確実だろう。失笑するしかない。

 こうした風潮に対して一線を画していたのが、渡瀬裕哉先生である。渡瀬先生は、アメリカ各州の選挙情勢を郡レベルにまで精査した上で、分析結果を発信し続けた。刻一刻と情勢は変化したが、「トランプが優勢だった瞬間はない」「共和党は上下両院とも苦戦」「郵便投票で不正はあるが、それで結果は揺るがない」である。

 それでも、共和党(の保守派)は下院議員選挙で負けたとはいえ、予想外に健闘した。上院選挙は、1月のジョージア州の再選挙で、どちらが過半数を握るかが決まる。むしろ、トランプが足を引っ張ったほどだ。

◆菅内閣は選挙中から、どちらが勝っても良いように動いていた

 アメリカの選挙が大混乱になることを望んで静観している中国やプーチンをしり目に、カナダヨーロッパ諸国はバイデンとの関係構築を急いでいる。我が日本も、菅内閣は選挙中から、どちらが勝っても良いように動いていた。

 バイデン政権はオバマの副大統領だったので、日本の外務省は人脈があるだろう。菅内閣もバイデンと付き合うこととなる。

 だが忘れてはいけないことがある。巻き返しを図る共和党保守派との関係維持、強化だ。いつまでも過去の人となったトランプにすがりつくのではなく、2年後の中間選挙、4年後の大統領選挙を見据えた対米外交を行うのが、現実主義だ。

【倉山 満】
’73年、香川県生まれ。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務め、’15年まで日本国憲法を教える。現在、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰し、大日本帝国憲法や日本近現代史、政治外交について積極的に言論活動を行っている。ベストセラーになった『嘘だらけシリーズ』のほか、『保守とネトウヨの近現代史』が9月25日に発売された

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現地時間の11月7日、ジョー・バイデン氏が米大統領選での「勝利宣言」を行った後に、ゴルフからホワイトハウスへ戻ってきたドナルド・トランプ氏 写真/時事通信社